美山ロード

 この大会は今年で14回目を迎える。美山町は京都の園部から北東へ車で1時間足らずの所にあり、四方を山に囲まれたのどかな町である。この日だけは町内の旅館や民宿、ユースまでが一律5000円で泊まれ、町をあげてこの大会に協力しているのがわかる。
 私がエントリーしたのは、最もレベルの低いビギナーだが、昨年のけいはんなサイクルレースで入賞した人や、エキスパートが定員オーバーのためにビギナーにまわった人が多数いたようだ。
 レースは11kmの公道を1周するが、8km付近に九鬼ケ坂という標高差100m、8%勾配の峠がある。レースのポイントは峠にあるので、峠までの平坦路を出来るだけ体力を温存して先頭集団に残り、あとは根性で峠越えしようと思っていた。
 スタートは8時50分だが、8時ごろにはすでに50台以上の自転車が並んでいた。この大会のスタート位置は先着順で決まる。私は10列目からのスタートとなった
 号砲と共にレースがスタートする。まずは、集団のスピードに遅れないように全力で加速。ここで遅れをとる(前走する自転車との車間を開ける)と、次々に割り込まれる。スタートはうまく切れたようで、前の方で集団走行ができるようになった。速度は40km位出ていたと思うが、速度計や心拍形を見る余裕がなく、どの辺りを走っているのかもわからない。前後左右に自転車があるので接触しないように気を使うからだ。ふらついて集団走行を乱すような自転車があると、罵声と共にその周辺にいた選手は遅れをとって行く。少しずつ先頭集団が小さくなっていく様子はサバイバルレースのようで、面白いと感じる余裕があった。私はいつ脱落するんだろう。
 峠の手前まで先頭集団の前の方をキープできたので、理想的な展開だ。ここでトリプルフロントのギアをミドルにチェンジしようとした。ところがチェンジしない。仕方ないので、もう一度シフトレバーを押さえると、インナーに入ってしまった。この状態で上り坂に入ったのでいっきに減速した。ここで慎重に変速しないとチェーンが切れたり外れたりする可能性がある。ペダルに力を入れないで、ギアを見ながら慎重にミドルに入ることを確認した。このわずかな間に、つづら折れになったコースから先頭集団は見えなくなり、また後ろからはゴボウ抜きされた。それについていこうとするが、加速出来ず、差は広がって行く。予想以上に平坦路で体力を消耗していたようだ。この時点で気持ちが切れてしまい、先行する自転車を追う意欲がなくなってしまった。
 峠を越えてヘアピンの急な下り坂をおりると、ラスト1kmは平坦だ。ラスト500mで家族や知り合いに気づき、手を振れるくらいに体力は回復していた。その後、2人抜いてゴール。峠でいきおいよく抜いていった人達もゴールでは目の前に迫っていたので、峠では精いっぱいの走りだったんだと思う。
 結局、タイムは17分34秒でトップから42秒差の41位。
 レースのポイントである峠で気持ちが切れてしまったことと、手を振った後に最後の力を振り絞って走っている人を追い抜いてしまったことに後味の悪さが残った。
 しかし、昨年のシマノ鈴鹿、けいはんなに続いて3回目のレースで、公道を走るロードレース本来の楽しさに初めて触れた気がする。
 来年もビギナーで美山を走りたい。

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