小規模多機能ケアとまちづくり
H20.02.21撮影
福山市で「鞆の浦さくらホーム」という小規模多機能ケア施設の施設長をされている羽田冨美江さんに講演していただきました。羽田さんは上町のご出身です。
37名の方が、あいあいひろばおおの2階で熱心に耳を傾けました。
 
講演の内容

● 冒頭に、ベビーブーム世代が高齢者となる2015年は本格的な超高齢社会の「入り口」で、その10年後に高齢者人口がピークに達すること、それに伴い認知症高齢者、一人暮らし高齢者が増加する見通しである。

● 高齢者介護サービスの動向として、介護保険・医療保険財政の危機を受けて、今年から後期高齢者(75歳以上)の費用負担が増す一方で、3年後には病院の介護療養病床が廃止、医療療養病床は3分の1が削減される。今後、大規模な介護施設が作られることはない。また、低賃金のため介護の担い手が足りない、従来ヘルパーさんにお願いできていたことがお願いできなくなるなど制度が変わってきているという問題もある。

● 国の施策は「介護予防」・「在宅支援」・「自立支援」へと向かっている。地域の中に小さな施設を作ってそれを地域で支えてゆくという考えである。

● これは考えようによっては暗い話ではなく、明るい話である。大きな施設ではできない地域に密着した介護(地域密着型介護)が可能になるからである。このためには、「まちづくり」が必要。

● 地域密着型介護にはいろいろなものがあるが、今後主流となるであろう「小規模多機能型居宅介護」について説明する。この介護では、利用者は基本的に在宅で、その生活を施設が支える。サービスとして、「通い(施設滞在時間は自由)」、「ヘルパーの訪問(回数は必要に応じて)」、「泊まり(予約不要)」があり、これらを自在に組み合わせることが可能。施設の登録定員は25名(相生市は20名)。

● このようなサービスを施設単独で提供すれば経済的に成り立たない。地域住民と交流し、その力を借りることで満足のいくサービスと経済的自立が両立する。

● 小規模多機能型居宅介護の目指すものは、「地域のなかで」、「地域の人による」、「地域のための」、「安心して暮らすことを支える拠点」であり、その成否は「まちづくり」にかかっている。老後の安心は「まちづくり」に左右される。

● いきいきサロンに来る認知症の人が、顔なじみとはいきいきと話をしている姿を見て、鞆の浦の人は鞆の浦で老後を過ごすことの大切さを実感した。鞆の浦さくらホームでは、地域の人々と力を合わせたまちづくりを実践している。ホームの利用者が地域を散歩していると顔見知りの地域の人が声をかけてくれる。認知症といっても結構昔の事を覚えているし、地域の中で暮らすことに安心感を覚える。

● 住み慣れた地域で暮らし続けるには、高齢者本人やその家族が地域の中で継続して生活することを支えられる環境が必要であり、住民と専門機関(施設のプロ)のネットワークが重要なポイントになる。

● これから必要なことは、一人ひとりの生活を地域のネットワークで支える、年を取っても安心して心豊かに暮らせる地域をつくる、助け合い活動の充実(人づくり・町づくり)である。「おお」のまちはそのような基盤ができつつあり、人情の残るおおは「今なら間に合う(行動しよう)」と熱く締めくくられた。