5.1 本を作る

red 『フランス語初級文法』をアップロードしました(2022年9月)

Minibook

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とあるコピー機には、「ミニ本」という コピー方法があります。四枚分の原稿を、製本しやすいにように、紙の両面に配置して印刷してくれる機能です。具体 的には原稿の1, 2, 3, 4頁を、表[4-1]-裏[2-3]というふうに印刷してくれるのです。

このように頁が配置されていると、2-3という頁番号の連続した面を内側に折れば、本のように頁が並ぶのがおわかりいただけるでしょうか。

もちろん、四枚以上の原稿でも問題ありません。八頁の原稿なら、表[4-1]-裏[2-3]、表[8-5]-裏[6-7]と二枚のコピーができます。そ れぞれの裏面を内側に折り曲げた後、折り目のついた側で、綴じれば、八頁の本ができます。これがミニ本です。

このようにミニ本として、印刷することを前提に調整されたpdf書類を、本サイトでは「MINIBOOK版」もしくは「ミニ本」としています。これらの pdf書類は頁が4-1-2-3-8-5-6-7-...といった具合に並んでいます。したがって、一枚の紙の一面に、二頁を配置でき、なおかつ、両面印 刷できるようなプリンタならば、ミニ本の形式で印刷することができるのです。

 

 

仕事柄、プリントアウトもしくはコピーした書類の束を扱うことが多いので、製本術は欠かすことができません。経験に基づいて、製本に必要な最小限の情報をまとめてみたのが本ページです。

 

仮綴じ

 

書類を綴じるには、大型ホッチキスを使う場合と、糸綴じを行う場合があります。ただし、どちらの場合も、いきりなり綴 じ作業に入ると失敗します。紙が動いて、斜めに綴じられてしまいきれいに仕上がりません(薄い書類は別ですが)。

下記のいずれかの方法で、書類の綴じ側の辺(本の背になります)を固定します。

  1. 木工用ボンドを塗って乾かす(一番安上がりですが時間がかかります。また、強度も若干劣ります)。

  2. グルーガンを使う(ポリエチレンを熱で融かして接着を行う器具で、ホームセンターで1500円程度で購入できます)。

  3. 無線綴じ製本機を使う(やはりポリエチレンを熱で融かして接着を行う方式のものですが、強度が格段に向上します。数百頁を綴じられるものは相当に高価ですが、オフィスなど身近に備えているところがないか、確かめてみましょう。)

1)、2)の場合は、直角定規などを使って、書類がまっすぐなるように調節した後、大きな辞書などで重しをして書類が動かない状態に固定し、作業を行います(紙を折っている場合には、重しをして数日置くと、折り目がしっかり閉じて、仕上がりがきれいになります)。

私は木切れと、クランプを使って下記のような専用の器具を作りました。奥の器具のL字型の隅に書類を寄せると、書類がきれいに揃うようになっています。

 

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奥の器具の上に書類を載せた後、手前の板をのせて、クランプで固定します。

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固定後の状態です。書類と器具の板の間に、捨て紙をかましています。のりやグルーで、書類と器具が接着しないようにするためです。書類が板の間に見えますが、この見えている面が本の背で、ここに接着剤もしくはグルーを塗ります。

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左はグルーガンの実物と、グルーで固定した書類です(わかりにくいかもしれませんが、若干、小口[実際には背]が光っています)。赤いのは色画用紙で、遊び紙です。この外側に少し厚めの表紙紙を貼ります。表紙は本来、綴じ作業が終わってから、遊び紙に貼付けますが、素人の製本の場合、綴じの前に貼付けて、書類と表紙を一体にして綴じた方が、簡単で丈夫になります(綴じ糸やホッチキス凹凸が外部に露出する欠点はあります)。この場合、表紙には厚手のケント紙か、100円ショップで見つかる板目紙程度の厚さが限界で、あまり分厚いものを使うと、綴じにくいだけでなく、出来上がった本が開きにくくなります。なお、表と遊び紙は全面的に貼付ける必要はなく、背から2cmくらいまでをのり付けすれば十分な強度を得られます。

綴じ作業

 

以上の作業が済んだら、ようやく本格的に綴じます。

ホッチキス綴じ

50-250枚のコピー用紙は、ホッチキスで綴じることができます。250枚綴じのホッチキスは定価で一万円を超えますので、個人で買うのは厳しいです。 Yahooのオークションなどで、5000円ほどのものもありますが、少なくとも、私の買った物は粗悪品で、100-150枚が限界で、それ以上になる と、針が曲がる極端に失敗が増えます。対して、Maxなどのメーカー物はさすがに失敗がありません。大型ホッチキスも、オフィスなどに備えられていること が多いので、身近に使えるものがないか、確かめると良いでしょう。

ホッチキス綴じの長所は手軽だということに加えて、金具で固定しているので、本の形が崩れにくいということがあります。それと裏腹に、本の開きが悪くなります。この欠点をさけるには、なるべく背に近い部分で綴じを行います。

糸綴じ

穿孔器具

糸綴じはホッチキスで綴じる場合よりも、開きやすくて丈夫な本を作ることができます。また、相当に分厚い書類も綴じることができます(コピー用紙350 -400枚程度:ドリルの刃の長さに依存します:下記写真は350枚)。辞書の再製本にも利用できます。しかし、糸綴じ本は柔軟性には富んでいても、それ が災いして、型くずれのしやすい本になります。本の背がへこんでいき、その分だけ、小口が前に飛び出してきます。やがて、表紙よりも中身が前に飛び出して きます(とはいえ、辞書などは、その方が頁を開きやすくて便利ですが...)。

糸綴じをするためには、書類の束に穴をあけなければなりません。50枚程度ならキリでもなんとかなるでしょう。まず、書類の上に板をおきます。穴をあ ける為に最小限の部分だけを露出させます(露出部分が多いほど、紙が動いて、穴をあけにくくなります)。次に、板を踏んで体重をかけ、慎重にキリを回転さ せます。

書類が厚くなるとドリルが必要になります。手回しドリルならホームセンターで1500円ほどで、刃付きで手に入ります。が、やってみるとわかりますが、 ハンドドリルやキリでの作業は、相当な重労働です。いっそう電動ドリルを買った方が楽です。電動ドライバーと兼用のものが、刃付きで3000- 5000円ほどで購入できます(手で刃先を交換できるチャック不要のものが便利です)。どちらの場合も、キリを使った場合と同じく、書類を板で押さえて作業しないと、書類をいためてしまう可能性があります(電動ドリルの場合、それほど厳重に押さえなくてもうまく行くことも多いです)。

なお、ホッチキス穴のようなものを上下センターに三カ所にあけ(つまり穴は六つ)、針金をホッチキスの針のようにして、綴じてしまうことも可能です(ホッチキス綴じと同様、あまり分厚い本には向きません)。

綴じ穴の開け方

糸綴じを行う場合には、本の背から1cm前後のところに3-6mmほどの穴を五カ所あけます。A) 本の上部から1cmのところ、C) センター、E) 下部から1cmのところ、そして、A)とC)の間(B)、C)とE)の間(D)、といった順番でやれば、おおよその目分量で作業できます。

ドリルやキリで穴をあけるとき、慎重にやらないと、穴が思わぬ方向に曲がっていってしまうことがあります。ハンドドリルやキリでは、次の点に注意します。

  • 穴あけの位置が自分の体の正面に来ること

  • 真上から穴の位置を見ることができること

電動ドリルの場合には、

  • 脇をしめ腰に肘をつけた状態でドリルを握る

  • やはり、真上から穴あけの位置を見るようにする

これで、比較的まっすぐな穴をあけることができます。とはいえ、私もしょっちゅう失敗します。書類が分厚くなるほど、作業が難しくなるのです(下の写真 も失敗しています)。とはいえ、失敗すれば、横に1cmほどずらして、やり直せば良いだけのことです。背表紙をつければ、失敗は見えなくなります。

書類が100枚前後に及ぶ場合、穴あけは、一気に向こう側に突き抜けるのでなく、途中で刃を引き抜いて、切り屑を外に出すようにした方が、きれいに仕上がります(さもないと、切り屑の逃げ場がなくなって、穴の周囲が盛り上がってしまいます)。

ちなみに穴あけの下敷きには使い古いしたまな板が重宝です。

 

糸綴じ

 

綴じ糸には細くて丈夫なものを使います。細い凧糸(0.7mm程度)や、坪糸(墨壷に使う糸、0.65mm程度)が良いでしょう。テグスも良いかも知れませんが、これは使ったことがありません。

綴じ糸をそのまま綴じ穴に通すのは難しいので、布団針、髪留めクリップ、書類クリップをのばして折り曲げたもの(下記写真はこの方式:一番左の写真を拡大するとわかります)などを、糸の先に付けます。

Aに糸を通し、背で縛って、固定します(たるまないようにします)。

表側からBに糸を通し、背に回って、再度Bに通します(結果糸の先端は、裏側に行きます)。

  1. Cに糸を通し、背に回って、再度Cに通します(結果糸の先端は、表側に来ます)。

  2. Dに糸を通し、背に回って、再度Dに通します(結果糸の先端は、裏側に行きます)。

  3. Eに糸を通し、背に回って、再度Eに通します(結果糸の先端は、表側に来ます)。 再度、背に回って、再々度Eの穴に通します(結果糸の先端は、表側に来ます)。

  4. Dに糸を通します(結果糸の先端は、裏側に行きます)。

  5. Cに糸を通します(結果糸の先端は、表側に来ます)。

  6. Bに糸を通します(結果糸の先端は、裏側に行きます)。

  7. Aに糸を通します(結果糸の先端は、表側に来ます)。

  8. Aに糸を通します(結果糸の先端は、裏側に行きます)。

  9. 糸を縛って固定します(綴じ穴に結び目が入るときれいに仕上がります)。

 

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5が終わった段階(表)

互い違いにしか糸が見えないことに注意

5が終わった段階(裏)

12が終わった段階(表)

糸が一直線になる

12が終わった段階(裏)

注意点

 

  1. 薄い本なら、細い銅線を糸の代わりに使うこともできます(針が不要なので、綴じ作業は楽ですが、分厚い本は開きにくくなります)。

  2. 書類にあける穴が大きいほど、綴じ作業は楽になりますが、強度は落ちます(5-6mmくらいが限界でしょう)。とはいえ、強度が欲しい分厚い本ほど穴を大きくしないと綴じ作業が困難になります。

  3. 書類にあける穴は背に近いほど、綴じが柔軟になり、本が開きやすくなりますが、強度は落ちます。

  4. 特に分厚い本の場合には、胴つきノコギリなどで、本の上下に切り込みを入れ、そちらにも糸を回すと、本の開き過ぎを防ぐことができます。その場合、綴じは下記のようになります。

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仕上げ

 

綴じがそのまま露出した状態では、見苦しいですから、背表紙をつけると良いでしょう。

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ピンクの部分が表紙で、黄色が背表紙です。

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手前は背表紙をはがした状態、奥が背表紙のついた状態

これは辞書を製本した物ですので、比較的手の込んだ製本になっています。

厚紙の表紙の上にクロスを張っています。また、綴じ穴を増やして、丈夫にしています。仮綴じは大型製本機を使用し、小口は裁断機で切りそろえました。

5-6年間相当酷使しましたが、いまだに製本が崩れることはありません。