中世フランス語関連書

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 私も一応執筆者の一人なので手前味噌に なりますが、現在日本語で読める最高の入門・解説書です。フランス語が読めない学部生でも読み進めることができるほど平易に書かれています。が、内容は相当に高度な情報まで網羅されています。その意味では、原文で中世フランス語を読もうという大学院生にも必ずや役に立つはずです。

 詳しい内容をお知りになりたい場合には、出版社の現代思想社の該当頁をご覧下さい。

  1. フランス語史入門書:ほとんどが、大学の教科書用に訳されたと思われます。わからない部分や補足説明をしてくれる先生がいないと、読むのにか なりつらい部分があります。大まかにフランス語の歴史をたどってみるのには、役に立ちますが、以下の本を通して、独学でフランス語史を体系的に知ろうとす るのは無謀です。わからない部分があるのは、当然と思って読んでください。そして、一冊か二冊に目を通したら、後は、フランス語で書かれた書物を読み始めた方が良いでしょう。
    1. ピーター・リカード著、伊藤忠夫・高橋秀雄訳、『フランス語史を学ぶ人のために』、世界思想社、1995
      俗ラテン語から現代のフランス語までの歴史をたどっています。時代ごとのフランス語の文法や発音にも言及がありますが、むしろ、 古仏語とひとくくりの名前で呼ばれている言語が、方言の集まりであったことなど、時代時代にラテン語ないしフランス語が置かれた状況を知るのに役立つでしょう。
      フ ランス語史を学ぶ人のために
    2. 山田秀男著、『フランス語史』、駿河台出版社、1994
      各時代のフランス語の分布や語彙、発音などにあわせて、当時の社会的状況などにも言及があります。また、各時代のフランス語の文例があげられているのも特徴です。ただし、本書で言及された文法事項だけで、文例を読み解くのはとうてい無理です。
      フ ランス語史
    3. U.T.ホームズ、A.H.シュッツ、松原秀一訳、『フランス語の歴史』、大修館書店、1974
      前二著よりも、ずっと体系性に乏しいです。どちらかといえば、フランス語の歴史にまつわるこぼれ話を集めたものと考えるべきでしょう。読み物として楽しいです。* 3085-250100-4305
    4. ジャック・ショーラン、川本茂雄・高橋秀雄訳、『フランス語史』、白水社、1973
      薄い本なので、もはやパンフレットと考えた方が良いでしょう。各時代のフランス語ごとに章が分けられていますが、各章ごとに視点がことなっており、フラン ス語の文法や発音が時代を経るにしたがって、どう変化したのか、などを知ることはできません。
      フ ランス語史文庫クセジュ
    5. ジョゼフ・ヘルマン、新村猛・国原吉之助訳、『俗ラテン語』、白水社、1989
      フランス語の歴史を見る場合、俗ラテン語がどういうものかを知っておくのは、非常に良いことです。
      俗ラテン語文庫クセジュ
    6. ベルナール・セルキリーニ著、瀬戸直彦・三宅徳嘉訳、『フランス語の誕生』、白水社、1994
      最古のフランス語文献とされる、『ストラスブールの誓い』に関する書物です。
      フ ランス語の誕生コレクション・クセジュ
  2. 中世フランス語の手ほどき:いずれも一応独学者向けに書かれています。ただ、入門書ですから、以下の書物だけで、古仏語が読めるようになるわ けではありません。概要が頭に入ったら、後は、フランス語で書かれた文法書を読まなくてはなりません。
    1. 島岡茂著、『古フランス語文法』、大学書林1982
      11世紀から13世紀末までのフランス語の文法書です。名詞や動詞などの語形変化に関する記述が主で、発音や統辞法はあまり詳しくありません。けれども、 古フランス語でどんな言語なの?という疑問にはある程度答えてくれるでしょう。
    2. 島岡茂著、『古プロヴァンス語文法』、大学書林1984
      中世南仏方言の文法書です。こちらも、名詞や動詞などの語形変化に関する記述が主で、発音や統辞法はあまり詳しくありません。
    3. ギ=レノ・ド・ラージュ著、大高順雄訳、『古フランス語入門』、朝日出版社、1981
      発音に関する記述は少ないですが、語形変化、統辞法には、ある程度の記述があります。巻末には訳者が動詞活用表を付録に付けています。
      4-255-81046-x c1080
  3. 初心者にはちょっと難しい本:上記にご紹介した本を読んだ後でも、ちょっと苦しい部分もあると思います。ある程度、フランス語で書かれた本も読んだ後でなら、非常に役立つ本です。
    1. ジャック・アリエール著、大高順雄、『フランス語の形成』、白水社、1992
      ラテン語から中世のフランス語までの歴史だけに的をしぼってあります。第一部では、発音、文法、語形の変化の歴史がたどられ、第二部では中世フランス語の 方言が解説されています。非常におもしろい本なのですが、読むには、フランス語史や古仏語の文法の知識が必須です。身近に質問できる先生がいない初心者に はお勧めしません。
      フ ランス語の形成コレクション・クセジュ
    2. ガストン・ザンク、岡田真知夫訳、『古仏語[11-13世紀]』、白水社、1994
      古仏語の基本事項が網羅的に記述されています。身近に質問できる先生がある場合以外には、ある程度、古仏語に慣れた時点で読むと良いでしょう。原書で読む より、注が充実した翻訳書で読むことをお勧めします(両方に目を通すのがもちろん一番良いわけですが)。
      古 仏語「11‐13世紀」コレクション・クセジュ
  4. その他
    1. ベルティル・マルンベリ、大橋保夫訳、『音声学』、白水社、1976
      フランス語史の本を読んでいると、かならず、ある程度は発音が問題になります。初心者泣かせなのは、音が発音記号ではなく、流音とか中舌母音とかという名称で示される場合も少なくないことです。最初のうちはこの本を手元において、フランス語史の本を読んだ方が良いかもしれません。
      音 声学 改訂新版文庫クセジュ 266