フランス中世文学に関する和書、翻訳書

書籍紹介の目次に戻る

 網羅的なものではありません。次のような方に向けて、気軽によめる日本語の本を何冊かあげてみました。

 残念ながら、品切れのものも少なくないのですが、大学の図書館などには必ず入っていると思います(青字下線部をクリックするとアマゾンの該当個所 にジャンプします(クリックしただけで注文できるわけではありません)。ここで、ISBN番号を調べておけば、図書館や書店での検索が簡単にできます)。

 私も一応執筆者の一人なので手前味噌に なりますが、現在日本語で読める最高の入門・解説書です。フランス語が読めない学部生でも読み進めることができるほど平易に書かれています。が、内容は相 当に高度な情報まで網羅されています。その意味では、原文で中世フランス語を読もうという大学院生にも必ずや役に立つはずです。

 詳しい内容をお知りになりたい場合には、出 版社の現代思想社の該当頁をご覧下さい。

新倉俊一著、『ヨーロッパ中世人の世界』、筑摩書房、1983
 中世文学を自分の専門分野にしようと思い立った私が、最初に読んだフランス中世文学に関する書物。その意味で非常に思い入れがある。様々なジャンルの作品に言及しながら、中世フランス文学の魅力を分かりやすく伝えてくれる。後年、筆者の新倉先生とお話しする機会を得た時には、足がふるえた。
ヨー ロッパ中世人の世界ちくま学芸文庫

アルベール・ポーフィレ著、新倉俊一著、『中世の遺贈』、筑摩書房、1994
 本書で扱われる作品のほとんどを、現在では日本語で読むことができる。そのため、専門的に中世フランス文学を研究しようと思わない人でも、手軽に手にと ることができるだろう。原著は1950年に書かれたものなので、細部にはけちをつけたくなる部分もないではないが、全体としては作品の魅力や特徴が平易に述べられており、訳者、新倉先生の「《フランス中世文学への招待》』として、これが最適であると確信している」というお言葉は、正しくその通りだと思う。
中 世の遺贈—フランス中世文...

新倉 俊一 (著)、『中世を旅する—奇蹟と愛と死と』、白水社、2000
 新倉先生の「フランス中世文学への招待」として、現在、もっとも入手しやすい。雑誌連載の原稿を加筆の上、一冊の本にまとめたものなので、興味のある部分だけを広い読みすることもできる。とはいっても、おもしろくて結局は全部読んでしまうだろう。
中 世を旅する—奇蹟と愛と死と

ピエール=イヴ・バデル著、原野昇訳、『フランス中世の文学生活』、白水社、1993
 中世フランス文学の様々な作品を通して、当時のものの考え方や時代背景などを論じた書物。『テーブ物語』、『ラウール・ド・カンブレー』など、まだ日本語で読むことのできない作品も多数扱われているので、ちょっとストレスを感じる部分もあるかも知れない。
フ ランス中世の文学生活

ジャン・フラピエ著、天沢退二郎訳、『聖杯の神話』、筑摩草書340、1990
 文学研究ってどういうものなの?と思っている人は、同じ訳者による『聖杯の探索』や、白水社の『中世フランス文学集』の『聖杯の物語』(クレティアン・ ド・トロワ)を読んだ後で、この本を読むと、きっと一つの答を得ることができます。
聖 杯の神話筑摩叢書〈340〉

ジャン・フラピエ著、松村剛訳、『アーサー王物語とクレチヤン・ド・トロワ』、朝日出版社、1988
 中世フランス文学の「ロマン」に興味のある方にお勧めです。私が大学院生の頃、この訳書が出版されたのですが、当時クレティアン・ド・トロワの作品は一つも翻訳されていませんでした。現在では、『聖杯の物語』、『荷車の騎士』、『獅子の騎士』と、クレティアンの主要作品五つのうち三つまでが、日本語で読めます。
アー サー王物語とクレチヤン...

ジャンヌ・ブーラン著、イザベル・フェッサール著、小佐井伸二訳、『愛と歌の中世』、白水社、1989
 中世フランスの叙事詩に興味のある方にお勧めです。トゥルバードールが叙情詩を歌い始めた頃の時代背景や叙情詩と宮廷風恋愛の関係に関する簡単な解説の後、かなりの数にのぼる叙情詩が収録されている。中世南仏で活躍したトゥバドール、中世北仏で活躍したトゥルベールの作品は、白水社の『中世フランス文学 集』や沓掛良彦の編訳著でも、読むことができる。
愛 と歌の中世—トゥルバドゥ...

トマス・ブルフィンチ著、市場泰男訳、『シャルルマーニュ伝説』、教養文庫、1994
 中世フランスの叙事詩(武勲詩)に興味のある方にお勧めです。実は、かなりの部分では、武勲詩作品そのものではなく、ルネッサンス期のイタリア 詩人が武勲詩に基づいて作った作品が扱われています。それでも、武勲詩の世界をかいま見みることはできますし、18章から25章まではフランスの武勲詩作 品が扱われています。
シャ ルルマーニュ伝説—中世...現代教養文庫