クリティック版を作る

序文の組み版

 序文を美しく仕上げるためには、LaTeXの組み版規則に通じている必要があります。いくつかの規則を知っているだけでも、簡単な序文なら書けます。
 まず、LaTeXで出力したい原稿の前には、
\documentstyle{book}
\begin{document}
という二行を置きます。
また、原稿の末尾には、
\end{document}
を付けます。

 \chapter{}, \section{}({と}の間に章節の題名を入れます)などを使って、章や節のスタイルや番号を自動設定できます。
 {\bf }{\it }で太字やイタリックに字体を変更できます(it, bfの後に一つスペースを置いて、字体を変えたい単語や文章などを入れます。
 改行は無意味で、空行が改行の意味になります(改行二つで改行の意味になると考えても良いでしょう)。段落冒頭の字下げは自動的に行われます。
 以上の知識と、Text_TeX.plを利用するだけでも、簡単な序文をフランス語で書くことができます。しかし、ある程度手の込んだことをやろうと思 えば、何かLaTeXの入門書を買ってきて、前半1/3頁くらいには目を通す必要があるでしょうし、参照用にLaTeX, TeX関係の書籍を何冊かは入手する必要があるでしょう。
  1. 『LaTeX入門――美文書作成のポイント――』、奥村晴彦監修、技術評論社
  2. 『文書処理システムLaTeX』、Leslie Lamport著、Edgar Cooke・倉沢良一監訳、アスキー出版局
  3. 『The LaTeXコンパニオン』、Michel Goossens, Frank Mittelbach著、アスキー書籍編集部監訳、アスキー出版局
  4. 『明快 TeX――すぐに使える全機能解説――』、ポール・W・エイブラハム著、渡辺了介訳、アジソン・ウェスレイ
 1は非常にわかりやすい入門書です。筆者がもっているのは初版ですが、現在では、改訂版になっているはずです。2はLaTeXの作者が書いた解説本で す。3は非常に大部なリフェランスです。最後は、LaTeXの基本となるTeXの解説本です。実は、LaTeXはTeXのテンプレート集に過ぎず、 LaTeXを利用しても、組み版はTeXが行っています。そのため、TeXの命令は全てLaTeX上でも利用できます。TeXの命令を使えば、LaTeX の命令だけを利用する場合よりも柔軟な組み版が可能になります。

いくつかのサポートプログラム

 序文の内容は多様ですから、序文全体を自動組み版するようなプログラムは書けません。表を使ったり、箇条書きを使ったり、時には図版が必要になることも あるでしょう。そうした個別の要請に応えられるようなプログラムを書けば、ユーザーはそのプログラムを使いこなすために多くの時間を割かねばならなくなり ます。それなら、その時間をLaTeXやTeXの勉強に費やした方がよほどメリットがあります。
 とはいえ、多くの場合、必要になるような組み版というのは存在します。参考文献一覧表や略語の一覧表を作るには、それなりのテクニックが必要ですし、手 間もかかります。
 実は、参考文献一覧表を作るためのBibTeXというフリーウェアもあり、かなり強力な機能をもっています。ただ、参考文献の入力法などが煩雑ですし、 参考文献のデータベースを別の用途に転用するにも手間がかかります。『LaTeX入門』の奥村氏は「データーベースソフトを使うのは大げさです」と言って いますが、多くの人はデータベースソフトや表計算ソフトで文献データベースを作っているだろうなあ、というのが筆者の考えです。 Bibliographie.plは表計算ソフトやデータベースソフトから出力されたタブ区切りテキストを文献一覧表に仕立てあげるプログラムです。
 略語の一覧表を組み版するソフトは今のところ、筆者は見たことはおろか聞いたこともありません。ディプロマティック版の章で利用した MacrosTabler.plは略語の一覧表を組みますが、これはあくまで、マクロが正常に動作するかどうかを確かめるためのプログラムです。マクロに 不具合があった場合に、自動生成されるMacrosTable.texをユーザーがテキストエディタで開いて、簡単に中身を確かめることができるよう、で きる限り簡単な組み版をとっています。AbbTabler.plはMacrosファイルとは別にいくつかのファイルを準備することで、マクロの一覧表の個 々のマクロにコメントを加えたり、マクロ一覧表を含む文章を生成し、それを一つの章や節にまとめたりすることができます。
 いずれのプログラムも、単体でdvi書類を生成できる書類と他の書類からロード(引用)される書類の二形式での出力が可能です。後者の形式の書類をどの ように利用するかについては、後から説明します。

Bibliographie.plの使い方

 以下では表計算ソフトを使った場合の、文献データの作り方です。

img/035.gif  

 一行目に上のようにそれぞれの列に対応する項目名を入力してください。後は、対応する情報を二行目以降に書くだけです。著者名は、Rychner, Jeanのように苗字、名前の順で書きます。複数の著者がある場合には、Gossens, Michel & MittelBack, Frank &  Samarin, Alexanderとアンパサンドで繋ぎます。中世の作品などで著者名が書けない場合には、空白のままにしてください。著者名が多数にわたる場合には、 auteurs variésなどとし、空白にはしないでください。
 書籍名には書籍の題名のみを入れ、巻名は巻の列に数字のみを入れます。プログラムでは、vol. 1, vol. 2などと自動的に、volがつきます。複数巻をまとめる場合には、巻ではなく予備枠を利用します。この場合には、vol.は自動的にはつきませんので、自 分で入力してください。
 論文名には論文の題名を入れます。雑紙論文には、書籍名に雑紙名を、号に号数を記入します。号にも数字のみを書き込んでください。n° が自動的につきます。論文集に収録された論文に関しては、書籍名に論文集の題名を記入します。複数からなる論集には巻を記入します(号と間違わないでくだ さい)。
 校訂者名や翻訳者名も著者名と同じ記入方法をとります。
 出版社名、叢書名、出版都市の記入法に特別な規則はありません。叢書番号には番号のみを記入します。発行年は2003などという数字のみで入力します。 「2001-2004」、あるいは「2001, 2003」などといった記入をしても構いません。
 m列以降は基本的に自由に記述できます。プログラムで特に指定しなければ、m, nが予備、o, pが分類となります。「予備」は、mより前の各項目の前後に自由に移動できます。「分類」は文献をテーマ別に分類して一覧表を作る場合に利用します。入力 がそのまま、文献目録の節名となります。プログラムに指示をすれば、m以降のどの列でも、「分類」もしくは「予備」として利用できます。しかし、プログラ ムは行ごとに個別の対応を行うことはできませんから、ある行ではmが「分類」、別の行では「予備」などといった使い方はできません。また、ある行ではmの 「予備」を「書籍名」の前に、別の行では「著者名」の前にといった指定もできません。列の利用法は全データで一貫していないといけません。

 出力の規則は以下のようになります(太字の項目は必須)
  1. 研究書の場合:著者名が記入されており、論文名が空白、校訂者名が空白の場合:著 者名書籍名巻、翻訳者名、出版社名、叢書名、叢書番号、出版都市、発行年月日の 順に出力されます。翻訳者の名前はカンマを使用しない通常の語順に戻ります。
  2. 雑紙掲載論文および論集掲載論文:著者名が記入されており、論文名、書籍名に記入があり、校訂 者名が空白の場合:著者名論文名書籍名、巻(号)、翻訳者名、出版社名、 叢書名、叢書番号、出版都市、発行年月日の順に出力されます。雑紙の場合、号に必ず記入すること。
  3. 校訂本の場合:校訂者が記入されており、論文名が空白の場合:校 訂者名書籍名、巻、著者名、出版社名、叢書名、叢書番号、出版都市、発行年月日の順に出力されま す。
  4. 雑紙、論集に掲載された校訂テキストの場合:校訂者が記入されており、論文名に記入がある場 合:校訂者名論文名、書籍名、巻(号)、著者名、出版社名、叢書名、叢書番号、出版 都市、発行年月日の順に出力されます。雑紙の場合、号に必ず記入すること。
  5. 作品の翻訳の場合:翻訳者と校訂者が記入されている場合:翻訳者 名書籍名、巻、著者名、校訂者名出版社名、叢書名、叢書番号、出版都市、発行年月日の 順に出力されます。ただし、翻訳者名と校訂者名が同一の場合、校訂者名が省略されます。
  6. 雑紙、論集に掲載された作品の翻訳の場合:論文名、書籍名、翻訳者名、校訂者名に記入のある場 合:翻訳者名論文名書籍名、巻(号)、著者名、校訂者名出 版社名、叢書名、叢書番号、出版都市、発行年月日の順に出力されます。ただし、翻訳者名と校訂者名が同一の場合、校訂者名が省略さ れます。
 つまり、校訂者と翻訳者に記入がある場合には作品の翻訳、校訂者に記入がなければ研究論文か研究書、校訂者に記入がある場合には、校訂本か校訂テキスト という扱いになります。また、論文名に記入がある場合には、雑紙論文か論集、記入がなければ単行本という扱いになります。

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