写本の画像を得る―写本画像の下準備


 本章は、スキャナや外付けハードディスクなどがコンピューターに接続されていることを前提とします。ドライバのインストール方法など、ハードウェアの接 続には一切触れませんし、質問も受け付けません。コンピュータは個人により環境が全く異なるので、筆者にはそれらに関する疑問には何も答えられないからで す。

透過原稿ユニット

 透過原稿ユニットは使いません。フィルムを読み込むのだから、使った方が良いのじゃないのかと思う人もあるでしょう。筆者自身、最初は、透過原稿ユニッ トを利用するつもりで、スキャナを購入しました。しかし、透過原稿ユニットというのは、写真をきれいに取り込むためのものです。マイクロフィルムも写真に は違いありませんが、通常の写真とは異なって、文字を写した写真です。通常の写真は文字ではなく、人物や風景を写したものです。人物や風景の写真は通常、 輪郭はぼやけています。直線や鋭角的なものはあまりなく、また、それらの輪郭が明瞭かどうかもあまり問題になりません。一方、マイクロフィルでは輪郭が最 重要ポイントなのです。
 透過原稿ユニットは、フィルムの裏側から光を当てて、画像を取り込みます。発光体と感光センサーの間にはフィルムが挟まるわけですが、三者は密接してい るわけではなく、わずかながらも距離があります。光は距離にしたがって拡散します。ですから、文字の映ったフィルムを透過原稿にかけると、ポジフィルムの 場合、羊皮紙の白い部分を通過した光は拡散し、その結果、センサーに達するときには、黒い文字部分に相当する影の部分にまで食い込むのです。その結果、得 られた画像の文字は幾分細ります。一方、ネガフィルムの場合には、文字の部分のみ光が通り、こんどは羊皮紙の白紙部分に相当する影の部分を幾分浸食します から、今度は文字が太ります。いずれの場合も文字は読みとりにくくなります。
 透過原稿ユニットを使用しない場合には、光センサーは発光体からの直射光ではなく、フィルムと原稿押さえの白いカバーからの反射光を感知します。フィル ムはすでにある程度拡散した光を反射します。光は拡散するほど、その後の拡散の度合いは緩やかになりますから、それに従って、文字の輪郭のぼやけもましに なります。
 筆者が高校生の時に習った物理の知識で、透過原稿ユニットが役に立たない理由を考えてみました。本当に正しい説明になっているのかどうかはわかりません が、ともかく、輪郭のぼやけが少ないのは透過原稿ユニットを使用しない場合です。これ自体は実験に基づいた結論です。

フィルムガイド

 透過原稿ユニットには、フィルムを固定するためのプラスチックのキットがついています。これはフィルムが斜めになるのを防いでくれるので便利なのです が、切断されたフィルムを扱うことを前提にしていて、あまり使い勝手はよくありません。最初のうちは使用していましたが、現在では、スキャナのガラス面に ガムテープで定規を貼り付け、それをガイドにしてフィルムを固定しています。

img/001.jpg

 エプソンのスキャナは原稿カバーが簡単に取り外せます。写真の通り、いったん原稿カバーを完全に取り外し、フィルムの一部をガラス面に当てた後、再度原 稿カバーを取り付けます。いったんスキャナ本体と原稿カバーの隙間にフィルムが通ってしまえば、フィルムは両者の間を簡単にすり抜けます。

img/002.jpg img/003.jpg

 原稿カバーの付け根の方と、スキャナの前面の側に、フィルムを巻き取るリールを置けば、取り込み従って、フィルムを巻き取るのは、さほど手間ではありま せん。

img/004.jpg
img/005.jpg

巻き取りリール

 写真のフィルムの巻き取りリールは、筆者が日曜大工で作ったものです。厚めのアルミ板金とアルミ棒材、それにプラスチックパイプを利用しました。たぶ ん、もっと便利で立派なリールを写真屋などで手に入れることができるだろうと思います。自分で作るにせよ、買うにせよ、巻き取りリールは絶対必要です。 フィルムにほこりや傷を付ける危険が減りますし、何しろ、長いフィルムというのは巻き取っておかないと扱いに困ります。
img/006.jpg img/007.jpg img/008.jpg

目次に戻る
次ページ