1999年8月

CD

「PINUP GIRL」市川美和子

大瀧詠一プロデュースによるモデル・市川美和子のデビュー盤。ある女の子の14才から34才までの様々な想いを綴るというコンセプトの下、鈴木慶一、細野晴臣、筒美京平、杉真理などなどが腕をふるって作った曲に市川美和子が果敢に挑む。で結果、ちゃんと彼女のアルバムになってるとこが偉い。彼女の時に不安定なボーカルがかってのアイドルポップスの魅力を感じさせる。

BOOK

「グミ・チョコレート・パイン」大槻ケンヂ

<「オレはダメだな〜」と思ってる総ての若きボンクラ野郎どもへ、心からの心を込めて、本作を贈る>この序文だけでもちょっと泣けてくる。ボンクラな青春時代を過ごしたであろう大槻のボンクラ野郎への愛がひしひしと伝わってくる。小説としては決してうまくないが、この大槻の想いの前ではそんなことはどうでもいい。オナニーとマニアックな映画や音楽に浸り冴えない毎日を送る主人公達のこと、わかりすぎるぐらいにわかる。僕もそんなボンクラな青春を過ごしたから。一人で多くのボンクラ野郎に読んでもらいたい名著。

CD

「REAL MAN」CARNATION

カーネーション待望のニューマキシシングル。直枝政太郎が本名・政広に改名しての一発目。彼らの本気ぶりがうかがえる。それにしてもソングライター直枝氏はこんなとこまできたのか。あぁ、もう何も言わなくていい。聴いて感じろ。これ聴いてなんにも感じない奴は一生ロック聴かなくていい。

CINEMA

「大阪物語」市川準

大阪を舞台にした、漫才師の両親を持つ女の子の成長物語。自ら墜ちていく男の悲哀を時にユーモラスに演じた沢田研二がめちゃめちゃいい。で主役の池脇千鶴ちゃんがまたかわいいのなんの。市川監督が「おい、ストーリー忘れてんのとちゃうか」というほど彼女の魅力に引きずり込まれていく感じがわかる。それでこそ映画だよ。

STAGE

「いつわりとクロワッサン」

G2プロデュース公演。脚本は京都の劇団・MONOの土田英生氏。出演は演出も兼ねる山西惇氏はじめ東西小演劇界の強者ばかり。大谷亮介氏の小技の効いた快演が印象的。舞台はとあるオフィスビル。それぞれいつわりの職業を持った泥棒たちが集まって作ったバーチャル会社でおこる様々な出来事。もっと練れたんじゃないかなって気もするが土田氏らしい軽妙な会話とちょっと切なくも爽快感の残るストーリーで後味良好。

CD

「Stones and Eggs」佐野元春

前作「THE BARN」で自らの音楽的原点をバンドサウンドで力強く表現してみせた氏が20周年を前に放つ問題作。99年の「Visitors」という印象。決してベテランに成り下がらない氏のロック魂に拍手。アグレッシブにはみ出していくワイルドで知的な音は心の奧を刺激する。全く、困ったおっさんだよ。でもかっこいい!

CD

「GOOD TIMES」真心ブラザーズ

今月の一枚はこれ。とりあえず買っとけ。初めてロックに魂を揺さぶられた日を思い出した。この衝撃を求めて音楽を聴き続けてる。素晴らしい音楽は直接肉体に響いてくるものだ。もし君が「ここではないどこか」に行きたいのなら迷わずこれを聴け。聴けばわかる傑作。