1999年6月

BOOK

「日本映画に愛の鞭とロウソクを」快楽亭ブラック

「快楽亭ブラックって誰?」って人でも「ほら、お笑いスター誕生で立川レーガンって名前で出てた、確か3週目で落ちた人」と言えばわかってもらえるだろう。外人の顔を持ちながら一切英語はわからん、外人の顔の区別がつかないから洋画は苦手というブラック師匠が日本映画を斬りまくる。しかしそこらの評論家とは違い「戦後の邦画は全部見たい」と年間500〜600本、自腹で見るだけあり単に斬るだけではなくそこには溢れるばかりの愛がある。

BOOK

「日本のみなさんさようなら」リリーフランキー

今、最も鋭いコラムニスト・リリーフランキー氏がこれまた邦画を斬りまくる。しかしこれは映画評ではない。映画に材を借り、人間の本質をズバっと突くとんでもないコラム集なのだ。男と女なんて所詮チンコとマンコなのさというような身も蓋もないがまさに核心ってことを軽く言い放つ氏の視線に恐れ入る。

CINEMA

「菊次郎の夏」監督:北野武

少年・正男の母親探しの旅に付き合うことになった、たけし演じる菊次郎が織りなすロードムービー。一歩間違うとべたべたになりそうなテーマが北野監督独自の視線とシャイネスさで描かれる。正男と菊次郎、二人の孤独な「少年」が不器用に距離を縮めていく姿が優しさを心に染み込ませていく。また二人に集まる大人になりきれない大人達が実に哀しくもおかしくてグッとくる。特に井手らっきょが素晴らしいので必見。

CD

「Mileage」Hicksville

きました、ヒックスビル。傑作です。勢いがあってもう「ごきげん」としか言いようないです。もともとちょっといなたい感じが魅力でもあるバンドですが今回は作詞に松本隆氏を迎えたからかいい意味で歌謡曲っぽくさらにいなたい魅力が炸裂。ボーカル真城まぐみはソウルフルなだけでなく、時にアイドルばりにキュートでなんともいえないフェロモンがある実にいい歌い手です。もちろんサウンドも日本のポップミュージックのいいとこをちゃんと継承しつつ変にこじんまりせず心躍らせる音の楽しさに満ちている。お薦め!

CD

「NAKA SHIGEO plays PAUL MAURIAT」
中シゲヲ

「サーフギターの貴公子」ことサーフコースターズの中シゲヲのソロ作。「サーフギターでポールモーリアのカバー」ってアイデア出た時点で成功。小西康陽プロデュースの下、「オリーブの首飾り」などお馴染み曲がいかしたサーフギターで奏でられる。単純に楽しめるハッピーな作品。

CD

「9 9/9」Tokyo No.1 Soul Set

「ちょっとかっこ良すぎんじゃないの」と嫌みの一つも言いたくなるがなんか「わかる」んだなぁ。年代的にほぼ同世代の彼らが今抱えてる様々な思い。何かが掴めそうで掴めない、でも掴めるっていう確信もあってみたいなそういう感じが。「隠せない明日を連れて」の切ないメロがどうしようもなく胸に迫る。