1999年5月

BOOK

「ヤボテンとマシュマロ」杉作J太郎

「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」と言ったのは早川義夫だが、それじゃかっこ悪いことがかっこいいかと言えばそれもまたかっこ悪かったりする。しかしそのかっこ悪さこそが人間であり、生きるということなのだ。そんなかっこ悪い人間の姿をマンガとコラムで描いた本作はそのかっこ悪さ故に胸を打つ。

CD

「はなればなれ」クラムボン

原田郁子(V,Key)ミト(B)伊藤大助(Dr)の3人からなるバンドのファーストマキシシングル。ティンパンアレイの孫世代が作り出す音楽は新しくもどこか懐かしい。原田郁子のピアノとボーカルはデビュー当時の矢野顕子を彷彿させるものがあり聞く者の心をぐいぐい惹きつける。特に2曲目「みつばち」が素晴らしい。

STAGE

「夏への無意識」シティボーイズ

毎年5月恒例のライブ。今回は客演なしで久々の3人だけのステージ。リストラされ公園で会社ごっこを始める3人の男を軸にとめどなくナンセンスな世界が繰り広げられる。きたろう、斎木の唯一無二なボケに大竹のうますぎるつっこみ。50過ぎの親父達が見せるくだらなくも完璧なステージ。斎木氏は「天狗」を演じさせたら世界一。またきたろう氏は「手編みのトレンチコート」が世界一似合う男だ。

CD

「Piccadilly Circus」ピカデリーサーカス

杉真理、松尾清憲、伊豆田洋之、風祭東の4人のボーカリストを擁する大所帯バンド。ポップミュージックの魅力を知り尽くした彼らが繰り広げる音世界はまさにサーカス。音楽の魔法に満ち溢れた大傑作。永遠のポップ少年、ロック少女たちよ、聞かずに死ねるか。

CD

「tide」高野寛

コンシピオ・レコード移籍第一弾である今作は2度目のデビュー盤と呼ぶにふさわしい青くもグッと来るアルバム。歌う為に作られた歌の数々は清々しい響きで僕らの胸に届く。ネオアコへのオマージュ「新しいカメラ」新境地を開くブルースナンバー「黒焦げ」切実な歌声が心の奧を揺さぶる「オレンジジュースブルース」そして宇宙的な広がりを見せる本当の意味のラブソング「フルーツみたいな月の夜に」は永遠に残るであろう紛れもない名曲。