長谷川町子の上品なユーモア
(2001年5月) |
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長谷川町子の「サザエさんうちあけ話」が朝日新聞社から文庫で出たので、早速購入した。 で即、読了。 これがなんとも普通に心地よい。 内容はというと、国民的マンガ「サザエさん」の作者が漫画で綴る自伝。 自伝といってもそんなにきっちりしたものではなくて、思い出エッセイ風にちょっとしたおもしろ話なんかが語られている。 この本を原作にしたNHK朝の連続テレビ小説「マー姉ちゃん」は最近もBSで再放送してたので見てた人も多いでしょう。 余談ですがBSで再放送されるぐらいだから「マー姉ちゃん」、連続テレビ小説の中でも人気作品なんだろうな。 実際、僕も小学生の頃好きで夏休みは毎朝見てた。 やたら明るい熊谷真美(それにしてもこの人、変わらないねぇ。今だ陽気でかわいい印象のままだもんなぁ)が主役のマー姉ちゃんで田中裕子が長谷川町子役、たしか藤田弓子が母親役だったかな。 で、まぁこの「サザエさんうちあけ話」なんだが、まずそのリズム感の良さに驚く。 トントントンと一ネタ一ネタが綴られていくリズムが軽い感じで読んでて爽快感があるんだよね。 決して重くならない、べたつかない、感じ。 視線が実にクールなんだな。 もっと盛り上げようと思えば盛り上げられる話でも深追いしない、大袈裟にならない。 これってのは品だなぁと思う。 なんというか、自伝とかだと割と多いでしょ、苦労をべたべたに美化しちゃったりするよーな、何つったらいいのかな、武田鉄矢的下品さっつーかそういうのが。特に戦争からんじゃたりすると。 でこれには、そういうのがまるっきりないんだよね。 長谷川町子って人の漫画のスタイルってのはクールさと品の良さが特徴なのかなとか思う。 国民的アニメ「サザエさん」のイメージだとその感覚は皆無なんだけど、実際の原作は結構ブラックだったりかなりクール。 ま、4コマ漫画というスタイルがそうさせるということは多分にあるんだろうけど。 でアニメ版「サザエさん」はさっきも書いたように「国民的」作品で、もう王道も王道って感じだけど、この「サザエさんうちあけ話」読んでて思ったのは、長谷川町子って「サブカル」の人なんじゃないかってこと。 でそれも無理のない、根っからのサブカル体質。 考えたら、昭和初期に女性漫画家って時点でもうサブカルチャーだもんね。 岡崎京子やさくらももこ(この二人かなり離れてるけど、長谷川町子読んでて思い浮かんだのがなぜかこの二人なんだよね)の源流。 元祖「サブカル」。 でここで「サブカル」ってことでちょっと寄り道。 僕もいつの頃からか「サブカル」と呼ばれるものに惹かれ出して、いまだ引きずってるんだけど、多分に近親憎悪的な感覚も含めて「サブカル」嫌い、好きなんだけど、嫌いって感じが最近ある。 「サブカル」って打ち出してるものってどっか無理があるんだよね。 なんか偽悪的というか、背伸びしすぎというか(これ、僕も含めてですけど)。 例えば雑誌「クイックジャパン」や「サイゾー」の読後感の悪さみたいなもの。 それってのもまた「品」ってとこにつながってくるように思う。 単純に下品ってことじゃなくて、「サブカル」と大きく掲げてるものの「品のない下品さ」「下品に対するいいわけの品のなさ」が嫌なんだな。 で急に本題に戻るけど、その点、長谷川町子には品がある。 無理なく普通にサブカルで、品がある。 その心地よさと爽快感が、またユーモアにつながる。 そして全体におだやかなピース感が流れる。 結構、ヤン冨田とか聴きながら読むとはまるかも。 ま、何が言いたいかというと「お勧め」であるということです。 |
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