「私への帰還-横尾忠則美術館1966-1997」(1997)

先日、兵庫県立近代美術館で「私への帰還〜横尾忠則美術館1966-1997」と題した展覧会が催された。
昨年の夏から 自主制作雑誌「OFF!」発刊の準備に入り原稿を書き始めたんだけど、全くメンバーの気持ちもかみ合わず、やるのかやらないのかはっきりしないままずるずると時間だけが過ぎていった。
しかし僕自身は書くことを止めることが出来ず、誰に読ませるというあてもなくただ思っていることをひたすら書き続けていた。
一体自分は何故にこんなことをしているのか、自問自答しながら日々を暮らしていたそんな時なにげなく読んだ雑誌に横尾氏の展覧会の記事が載っていた。
そしてそのタイトル「私への帰還」という文字が目に入ったとたんひどく心が動くのを感じた。
忙しくてなかなか時間がとれず、一時は見に行くのを諦めかけたのだけど、最終日の前日になってなんだか絵に呼ばれているような気がして朝一で美術館に向かった。
なるべくストレートに絵と向かい合いたかったので誰も誘わずに一人で行った。
正直言うと今まで横尾氏自身にはとても興味をもっていたが絵画作品自体は強力すぎてあまり入り込むことができずにいた。でも今回はじめてその作品の中にすっと入ることが出来た。
今まではたぶん難しく考えすぎてたのだろう。
例えば初期の作品郡なんてまるでおもしろいコントを見てるようだ。
「電話」という作品なんて笑いをこらえるのに必死だった。
描かれた滝に意味を求めるなんて野暮なことだ。
ただ驚いたり、圧倒されたりするだけで十分。
そんな風にしばらくの間、僕は横尾作品を楽しんでたのだけど、「星の子」という作品の前でぴたっと足が止まった。
なんだかわからないのだけど絵の前で全く動けなくなってしまったのだ。
なんだこれは。
喜び、悲しみ、怒り、嘆き、楽しみ、希望、絶望、未来、過去、激しさ、静寂などなどその中にはあらゆる感情がうずまいていた。
これは宇宙そのものであると同時に僕そのものでもあると強く感じた。
宇宙と自分は間違いなく繋がっている僕はそう確信した。
その日の夜、僕はなんだかひどく興奮してOFF!のメンバーU君へ感想と共にぜひ見に行くようにと FAXを送った。
そして翌日、U君からの返事がFAXで届いた。
そこには「僕も昨日Kといっしょに横尾さんの展覧会に行っていたんですよ」と書かれていて僕はまたまた興奮してしまった。
彼もまた「私への帰還」というテーマに心を動かされたというではないか。
示し合わせたわけでもないのにOFF!のメンバー3人が「私への帰還」というテーマを持って全く同じ日に横尾氏の作品を見ていたなんて!この素晴らしい偶然に僕は本当に嬉しくなった。
僕が今やっていること目指してることは「私への帰還」に他ならない。
この文章を書いている時点でまだOFF!発刊のめどはたっていない。
でも僕はこうして書き続けてる。
目の前に好きな物を並べてこれが最高なんだよとかここがいいんだよなんてことを嬉々として語ってる。
それが好きで楽しいからやってるだけで意味なんかない。
でもここにいるのは紛れもない自分だと自信を持って言える。
たぶんOFF!が形になったとき「私への帰還」のその先が見えてくるのだと思う。
それがなんだかは判らないけれど僕は楽しみにしている。

*結局「OFF!」はホームページという形で生まれ変わった。
それがこのページである。



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引き続きお楽しみ下さい