ピチカート・ファイヴ「メッセージソング」(1996)
ピチカート・ファイヴ九十六年冬のシングル「メッセージソング」はもうお聞きになりましたでしょうか? もしまだ聴いてないのなら今すぐレコード屋に走っていただきたい。 これは十年に一ついや百年に一つの大名曲です。 仕事の途中カーラジオからふいに流れてきたこの曲を聴いて僕は涙がこみあげてくるのを抑えることができませんでした。 「メッセージソング」なんてピチカートにはまるで似つかわしくないけど、僕は今までこれ以上誠実で切ないメッセージソングを聴いたことがない。 確か久保田真琴氏だったとおもうが「優れたポップミュージックはそれ自体がメッセージに成りうる」という内容のことを言ってたけど、本当その通りだと思う。 音楽そのものに対する愛によって作られた音楽は音楽そのものに愛が宿っている。 そしてその愛こそが普遍的なメッセージを備えているのだ。 優れた音楽が、音楽そのものが与えてくれるメッセージ。 たとえばそれは夜空に浮かぶ満天の星や懐かしい海の匂い、柔らかな風の感触が僕達に深い感動とともに届けてくれる言葉ではないメッセージとまるで同じだ。 こういう曲を書いてくれるから僕は小西康陽氏のことを決して嫌いになれない。 そして僕はこの曲を聴いてふとジョンレノンのことを思い浮かべた。 それはなぜだかわからないけれど、多分間違いじゃない。 「忘れないで/僕は君を/本当に愛してる」たったこれだけのなんでもない言葉がメロディーにのった時音楽のマジックが起こるのだ。 あと、とてもうれしいことにこの曲はNHKの「みんなのうた」で素晴らしいアニメーションとともに放映されている。 この曲を聴いて子供達はなにを感じとってくれるだろう。 21世紀がきっとその答えを教えてくれるだろうけどそれは僕が想像する以上に素敵なものだと確信している。 理想主義で楽天的な話かもしれないが僕は音楽の魔法を信じている。 音楽こそが唯一残された希望なんだと素晴らしい音楽の数々が僕に教えてくれたのだ。 本当に一人でも多くの子供達にこの曲を聴いて欲しい。 そしてもう一人、もうすぐ生まれてくる僕の子供にも。 |