「依存体質2」
鈴木祥子
最初に彼女のライブに行ったのは「Long Long Way Home」の時。 このライブが良かった。 佐橋佳幸、小倉博和両氏を従えてのロック魂溢れるステージは過去見たライブの中でもベストのものだった。 いっしょに行ったMも今だに「あれは最高だった」と語っている。 そんな訳で久々のライブに期待は膨らむ。 ここ数年のアルバムはどれも素晴らしく、特に最新作「私小説」は鈴木祥子という人間にしか作れないコアな一枚といえるだろう。 で私にとっては12年ぶりのバナナホールでいっしょに行ったMとあまりにばかばかしいトークしつつ開演を待つ。 開演前のあの空気感、始まる直前すーっと客電が落ちる瞬間のなんとも言えない気持ちの高まり、何回味わっても気分いい。 美しくも静かなコーラスからライブはスタート。 名曲「愛はいつも」がオープニングナンバー。 彼女の曲のなかでも特に好きな曲、いきなりやられたってとこ。 で続いてのナンバーが強力だった。 マーヴィンゲイみたいなソウルアレンジが施された「ステイションワゴン」ギターカッティングがやたらかっこいい。 いきなりバンドのグルーヴがうなりはじめる。 で腰がとろけだしたところに静かなアコーステックギターのアルペジオが流れ出す。 「夏はどこへ行った」うーん聞かせる。 まさに鈴木祥子クラシックともいうべき3曲でつかみはOKというところ。 バンドも完璧。 で今日のバンドメンバー告井氏(パーカス、ギター、オルガンと大活躍)が在籍するセンチメンタルシティロマンスの「恋の季節Part1」(この曲が収められたアルバムを私もMも結局買う事になった)のカバーをはさみつつ「私小説」からのナンバーに突入。 彼女のタイトなドラミングが素晴らしい「だまって笑ってそばにいる女」、乱暴なスライドギターがかっこいい「依存と支配」などぐいぐい客を乗せていく。 ピアノと胡弓で聞かせる「ただの恋だから」、続く渋すぎるアレンジの「たしかめていてよ」には鳥肌がたった。 ライブハウスだけあってちょっとくだけたMCもいい。 「完全な愛」でピークを迎えたライブも「トゥルーロマンス」でひとまず終了。 「もう終わりかよ!」といういいライブには必ず持つ感想を抱えてアンコール。 ちょっとぐっとくる衣装に着替えた彼女がアコギを抱えアルペジオを奏でる。 印象的な前ふり(後で判かったのだがスザンヌヴェガのカバーらしい)から「スワロー」へ。 そういえばサエキけんぞうのラジオでこの曲を聴いたのが彼女との最初の出会いであった。 ちょっと落ちついたところで女性コーラス隊をフューチャーしての「すべてはOK」。 バラエティに跳んだ前作「Candy Apple Red」の中でも特にポップなこの曲、振り付けありで楽しませる。 で一気にリラックスしたとこで4ピース編成になってのシンプルかつ力強いロックナンバー「そしてなお永遠に」。 エレキギターをかきならしてのモノローグがかっこいい。 アルバムラストを飾ったこの曲でライブも終了。 観客はもうおさまりつかんですたい!状態。 客電がつき、「アンコールはありません」と係員が叫ぶもアンコール鳴りやまず。 思わずメンバー再登場。 で一気に会場は盛り上がる。 「・・なにやるか決めずに出てきてしまった・・」とステージでとまどいつつ楽器を手にするメンバー。 「完全な愛でしめてもらいましょうか」とギターの菅原氏。 そんな訳で本当のラスト、本日2回目の「完全な愛」。 いやーお腹いっぱいですよ。 久々のライブは実に「ライブ」というもんでした。 鈴木祥子という個人が作った音楽がライブを通じて観客の一人、一人の中に入り込み根を下ろす。 そしてその個人、個人がまた楽曲に対して個人的な思いを持つ。 2時間という時間を共有しまたもとの生活に戻っていくわけだが確実にその2時間がなにかを生み出す。 音楽のマジックを感じさせる素晴らしいライブでした。 そして僕は彼女の言葉の一つ一つを噛みしめながら自分にとっての「完全な愛」を考えるのであった。 |