S銀行横領事件


私の、通った大学の最寄りの駅に、大手都市銀行のS銀行があった。
私は初めて自分の銀行口座を持ったのが、そのS銀行だった。
寮に入った私は、親からの仕送りをしてもらうために銀行口座を持つ必要があったからだった。
他にも銀行があったが、その銀行が1番大きく、何処の駅に行こうがキャッシュカードが使えた
からだ。窓口に行き、所定の用紙に、必要事項を書込、窓口に提出した。
女性行員は、てきぱきと仕事をこなしていた。
通帳に200円の印紙を貼ったので、私はあわてて口座開設のための金額に200円足そうと思
いあわてて100円玉を2枚差し出した。
すると、女性行員はにっこり微笑んで「当銀行負担ですから」と言ってその200円を私に帰して
くれた。顔は「おっさん」だった私だが、初めて口座を持ったものだから手際が悪く、新入学の大
学生だと思っただろう。なぜなら、私の大学の学生は殆どがその、S銀行に口座を持っていたか
らだ。実際私が、口座を開いているときも、ひきりなしに私の大学の新入学生が口座を開きに
来店していた。しばらくすると、新聞に大きな見出しで、「S銀行XX支店、女性行員5億円横領」
と報道されたのだ。私が、口座を開設した支店だった。
私が、開設したときに担当してくれた、女性行員がその人かどうか、記憶の糸をたぐりよせる
のだが、にっこり微笑んでくれたのは思い出すのだが、顔が浮かんでこないのだった。
私の記憶では、妻子ある男性にそそのかされ、端末で架空送金を行い男に貢いだのだった。   
連日、ワイドショーや、週刊誌の紙面を賑わかした。 大学でも、その話題で持ちきりになってい
た。窓口係のその女性行員はフィリピンまで逃亡したが逮捕され、刑に服した。何年か前、その
後の女性の、近況が新聞に掲載されていた。事件を承知で、ある男性と結婚し幸せに暮らして
いると・・・・・本当につまらない男に
 引っかかり人生を棒に振りかけたが、幸せになってほしいものである。