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復讐の西部


シーン1

アメリカ。西部開拓時代。墓地。墓に花を供える中年女性と少年。
「お父さんはいい夫でいい保安官だったわ。それがこんなことになるなんて……」
「お母さん、お父さんはどうして死んじゃったの?」
「ごろつきのハロルドに殺されたのよ。ハロルドは今でもまだどこかにいるはずだわ。さあ、こんな話はやめにして、行きましょう」

シーン2

舞踏会。大勢の男女が踊っている。バルコニーで一組の若い男女が月を見ている。
「俺たちが付き合ってからもう半年も経つのか」
「そうね、早いものね」
「なあ、メアリー。俺と結婚してくれないか」
「いいわよ。でも、あなたのお母さんが許してくれるかしら?」
「俺の母親は父親が暴漢に襲われて死んでから寂しい思いをしてきたからな。家族が増えるならきっと喜んでくれるよ」
青年はメアリーにキスをする。

シーン3

夜の街を友人と歩く青年。
「次はどの店で飲む?」
「あの店にはいい酒がそろってるらしいぜ」
青年は路地裏に入って行くメアリーの姿を見つける。
「すまん。ちょっと、用事を思い出した」
「おい、どこ行くんだよ」
青年はメアリーの後を追う。

シーン4

建物に入って行くメアリー。建物の周りには着飾った女たちが立っている。
「ここは売春宿じゃないか」
建物の中に入る青年。

シーン5

突然、部屋のドアが開き、驚くメアリー。
「ジョニー、どうしてここにいるの?」
「君こそどうしてこんなところで働いているんだ!」
「……実は私には生き別れたお父さんがいるの。娼婦をしていたらいろんな男の人から情報が入ってくるでしょう。だからもしかしたら、お父さんに会えるかも知れないって」
「そうだったのか……すまない」
「いいのよ、気にしないで」
「もし、俺でよければ君のお父さんを捜す手伝いをするよ」
「本当!ありがとう」
「ところで、君のお父さんの名前は?」
「ハロルドよ」

シーン6

酒場。ジョニーが店のオーナーに話しかける。
「ハロルドっていう男を捜してるんだが、知らないか?」
「ああ、知ってるよ。ついこの間もここに来たよ」
「住んでる所は分かるか?」
「この近くの宿に泊まってるらしい」
「ありがとう」

シーン7

宿。ジョニーが男と話している。
「俺に何の用だい?」
「あんた、メアリーっていう娘がいるだろ」
「……」
「俺がお前さんを娘に会わせてやる」
「本当か?」
「ああ、本当さ。ただし、条件がある」

シーン8

売春宿。ハロルドが建物に入って行く。部屋に入るハロルド。メアリーを見て言う。
「……メアリー」
「もしかして、お父さん?」
「そうだうよ。父さんだ」
ハロルドに抱きつくメアリー。
「もう、どこに行ってたのよ!」
「今まで心配かけさせて悪かった」

シーン9

「メアリー、これから俺はやらなければならないことがあるんだ」
「何?」
「心配するようなことじゃない。すぐ戻ってくる」
部屋を出るハロルド。
「待って、どこに行くの?」

シーン10

売春宿の外で待っていたジョニーが言う。
「終わったか?」
「ああ、待たせたな」
一瞬の沈黙の後、同時に拳銃を抜く二人。

シーン11

銃声。メアリーが外に出てくる。外にはハロルドの死体が転がっている。ジョニーは路地裏の闇に消えてゆく。

終