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輪廻転生

仏教には、あらゆる生命は死んでも、それで終わりではなく、生まれ変わって、また生を繰り返すという思想がある。
これを「輪廻転生」という。

昔、中国のある村に父親と母親と幼い娘の三人家族が暮らしていた。
娘は両親によって大切に育てられた。
しかし、娘は疫病で亡くなってしまう。
娘の魂は冥界をさまよい、お釈迦様に出会った。
娘はお釈迦様に「どうかもう一度、両親に会わせて下さい」と懇願した。
お釈迦様は「よかろう。ただし、人に生まれ変わることはできんぞ」とおっしゃられた。
気が付くと、娘は犬に生まれ変わっていた。
その後、犬は偶然やってきた父親に引き取られた。
娘であった頃の記憶はほとんどなかったが、犬は父親に会えたことが、なぜか嬉しかった。
父親は犬を連れて家に帰ると、母親に言った。
「今日の晩飯はこの犬にしよう」

現在でも、中国の一部の地域では犬を食べる習慣が残っている。

終