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ゲーム機とお兄ちゃん


シーン1

一人の少年がある家の玄関の前に立ち、インターホンを鳴らす。家の中から青年が出てくる。
「こんにちは」
「さあ、早く中に入れよ。真悟、今日はお前に見せたい物があるんだ」
「おじゃまします.」

シーン2

青年の部屋には最近発売されたばかりの携帯型ゲーム機が置いてある。
「うわぁ、すごい!」
「いいだろう。高校に受かったお祝いに買ってもらったんだよ」
ゲームに夢中になる真悟。
「僕もこんなゲーム機欲しいなぁ」

シーン3

真悟は学校の帰り道で一人の少年に声を掛けられる。
「よお」
「なんだ、森本か」
「お前、昨日山田の家にいただろ。何してたんだ?」
「ゲームしてたんだよ」
「あいつゲーム持ってるのか?」
「うん」
「なあ、そのゲーム盗んで来て俺によこせよ」
「何言ってるんだよ。いやだよ」
森本は真悟の肩にパンチした。
「痛い!」
「いいか、明日までにゲーム機を盗んで俺のところに持って来い。持って来なかったらまた殴るからな」
森本は去って行った。

シーン4

山田家。隙を見てゲーム機をこっそりとランドセルに入れる真悟。
「ごめん、兄ちゃん。僕これから家の用事があるんだ」
「そうか、残念だな。気を付けて帰れよ」

シーン5

真悟の家に電話が掛かってくる。
「はい、もしもし」
「山田だけど。真悟、俺のゲーム機知らないか?どこ探しても見当たらないんだよ」
「……知らないよ」
「おかしいなぁ」

シーン6

公園で森本に殴られる真悟。
「盗んだけど、失くしただと!ふざけるな!」
そこに自転車に乗った山田が通りかかる。
「おい、お前何してるんだ!」
「クソッ」
森本はその場から逃げ去る。
「真悟、大丈夫か?」
倒れている真悟を抱き起す山田。
「……ごめんなさい」
泣き出す真悟。
「どうした?急に泣いたりして」
真悟はランドセルからゲーム機を取り出す。
「僕、あいつに脅されて、このゲーム機盗んだんだ。ごめんなさい」
真悟は山田にゲーム機を返そうとする。すると、山田はそれを遮る。
「そのゲーム機はお前にやるよ。だから泣くな」

終