短編集へ戻る

けがれのない友情

〜とある中学校で〜

道徳の時間、授業内容は被差別部落についてだった。
サトル少年はその授業を複雑な心境で聞いていた。
なぜなら彼は部落出身者だったからだ。
他の生徒たちは部落出身であることを理由にサトルをいじめていた。
ある日、タダシという少年が転校してきた。
サトルが教科書を忘れた時、隣の席に座るタダシはサトルに教科書を見せてくれた。
以来、サトルとタダシは友達なった。
しかし、サトルはタダシに自分が部落出身であることを告げることが出来なかった。
部落出身のサトルと遊んでいるタダシは次第に他の生徒に目を付けられるようになっていった。
ある時、タダシが数人の生徒にいじめられていた。それを見たサトルはいじめをやめるよう止めに入った。
すると、生徒の一人がサトルを見て「部落は引っ込んでろ!」と言った。
怒ったサトルはその生徒を突き飛ばした。
地面に顔を打った生徒は、前歯を折ってしまった。
そのことが親や教師に知られ、サトルは停学処分となった。
その後、サトルのことが心配になったタダシは、サトルの家を訪ねた。
サトルは「今まで黙ってたけど、僕は部落出身なんだ。だから、学校に戻ったらまたいじめられる」とタダシに言った。
すると、タダシは落ち込むサトルに「実は……僕も部落出身なんだ。だから大丈夫、一緒に頑張ろう」と言った。
そして、二人は握手をした。

終

ブランコ