黐木舎


平成13年(2001年)
4月






24日(火)曇り
私が携帯電話を持ったのは平成6年だったと思う。
仕事上必要であったからで、通話料も高かったこともあるがこちらから余り掛けたことがなかった。
こちらから掛けるときは、携帯電話を持っているにもかかわらず公衆電話を探して電話をした。
阪神大震災の救援に出かけたときなど何故か携帯電話の方がつながりやすく、身も知らない人に貸してあげて大変喜ばれたことがある。
そうする内に、携帯電話は日に日に普及しして今日では街から公衆電話が消えだした。
そうして、今ではiモードなる携帯電話システムが出来上がっている。
何処まで携帯電話は進化するのだろう。

私などはそうなるに連れて、何となく煩わしくなって携帯電話を持たなくなった。
故意に持たなくなったと云ってよいかも知れない。
出かける前には、皆が居る目立つ場所に忘れていくようにしている。(是非とも必要なときには持つが)
先月の1ヶ月の電話料など4,800円位である。
iモードではなく未だに普通の携帯電話である。
携帯電話の良きところもあるのは確かだが、このところ携帯電話の普及によるトラブルがよく聞くようになった。
今日もメール友達だった主婦と18歳の青年による殺人事件が起こった朝のTVのニュースで伝えていた。

バーチャルの世界。
仮想が現実化していくことの怖さ。
止めどもなく進化していくシステム。
これらのものに大きく人間の本質が、飲み込まれていっているように思える。
総てのエネルギーは最終的に熱エネルギーとなると言うが、今の日本では多くの金が波と消えている。
本当にこの様になった日本の経済は、社会の秩序は、立ち直るのであろうか。
新しく選ばれようとしている首相に期待しないでもないが、一人一人の意識の変革の方が早急に必要なのではないだろうか。
今携帯電話を持たなければ大変不自由のように思っているが、1週間我慢して携帯を持たなければ別に何でもなくなる。
有名どころの若者タレントが「携帯電話を持つなんて、今頃ダサイィ〜〜〜〜。」「携帯電話料金をもう少し有意義なものに使いましょう」XXX百貨店。というようなコマーシャル作らないかな。
5年前までほとんどの皆様は、携帯電話なんて持っていなかったんだから、それでも不自由なかったのだから。
それとも、普通の有線の電話料金をもっと安く(市内電話は無料)して、携帯電話は高くするとか。


3日(火)曇り一時雨
今日の朝境内の掃除を済ませ犬の散歩に出かけたところ、娘が御祈祷が入ったと呼びに来た。
御祈祷の連絡聞いていて忘れていたのではと云われたが、その様な覚えもなく一体どう云うことだろうと、急いで帰り身支度をして応対に出ると、以前に会った方であるようだが何時だったか思い出せない。
「以前に御祈祷に来られましたよね」
「はい、お正月の元旦に娘のことで御祈祷をしていただきました」と云うのを聞いて、はたと思い出した。
このご両親の22歳の娘様は乳ガンに掛かり、病巣がだいぶ進行していると医者に診察され、何とか直したいと正月の始めに病気平癒の御祈祷に来られたことを思い出した。
病気が進行して骨に癌が転移し、骨が弱くなり手術が出来ず、直ぐに手術が出来なかったがこの治療を今日までほどこしやっと手術できるようになったということを今日聞かされた。
「その後骨の治療が行われ、何とか手術の出来るまで神様のご加護の介会って骨も快復し、今日の10時から手術なんです。手術がうまく行くようにもう一度御祈祷をお願いします」とのことである。
御祈祷を始める前に、ご両親と私は色々と話した。
娘様は本当に辛い思いをしていることであろう、それと共にこの二人の親はどの様な思いで居られるのであろうと思うと、私の言う言葉はどれ程の意味を持つのか不安になりながら、「手術で病巣と共に乳房の摘出をするのだから元の体のようには今更成らないだろうが、神の加護を信じ一筋の光を信じ、今後娘様の側にて励まし見守った上げて欲しい」と、敢えて話した。
ご祈祷後「私は、お二人と共に娘様が一緒に元気な姿でこの神前に来る日を待ち続けています」と付け加えると「私達もその様に願い、娘を見守りますと」病院に急がれた。
午前10時の時報を聞いた時、今頃彼女は手術室に向かっていることだろう、どうかうまく手術が執り行われることを神の祈り続けた。
やがて午後となり、夕刻神饌を下げお宮の終う準備の時も、もう手術も終わっただろうかと思っているやさき、知人のT女史から電話があった。
「***さん知っているよね、彼女乳ガンで手術したんだって、それも手遅れでリンパ腺に転移していたらしいの」
今日は一体何という日なのかと思った。
***さんはニューヨーク始め世界で公演をしている舞踏家で一昨年大阪で公演したとき、少し世話をしたことがあった。
年は40歳過ぎだったと思う、大変若々しい素晴らしい人であった。彼女が乳ガンになったとは信じられないことだが現実なんだろう。
「そこで寺内さん東北の方の温泉治療のこと云っていたよね。その事で教えてくれる」
東北の玉川温泉のことだ。
詳しくは私のお宮の総代である小林さんが知っているので、聞いて連絡すると伝えた。
そうして、T女史に22歳の彼女のことを云うと「本人も辛いけど、この様なことを聞くのも辛いよね。私も何とか彼女が良くなって、8月予定をしている東京公演を成功させてあげたいの、彼女も8月公演を何とか頑張って成し遂げたいと云って頑張っている」という。
友人とは良いものだ。
この様に苦しんでいる人達が何万、何千万と居ることであろう。
そうして沢山の宗教家はこれらの人々に手を差し伸べていることだろうが、日本の宗教家の中ではどれだけ手を差し伸べているだろうか。
自分自身にも問いかけている今日である。