lesson5

マフラーを観る


古びた、マフラーですが、まずはゆっくり眺めてください


1 マフラーの房 


あ→

光は右上からやってきています。マフラーの両端にある房が複雑で面白い

「あ」は房が影に沈もうとしている部分。ロープのように毛糸をよじっているのがよくわかります。

←い

「い」最も強い光を受けている部分。複雑に見えますが、実際は毛糸をよじった細いロープが何本も束ねているだけ。




2 網目とふさの境目を観る

マフラーの編目と、ふさのめの違いを確かめて見ましょう。

編目は規則的に繰りかえされ、横につながりって布としての広がりをもつが、

ふさの方は一本一本独立して数本ずつ束ねられている。

その境界線の面白さを味わって下さい。

また全体を通じてですが、毛糸のほつれ毛が毛糸の温かさをより深めていますね

3 マフラーの重なりと闇に向う編目

今回は筆触法を用いて物語を作ってみましょう

手前のからアリは丸木橋のような毛糸の橋を渡っていきます。
ふわふわした草むらを踏みしめて、丸い橋を上になったり下になったりしながら、いくつもいくつも橋を渡ります。
やがてアリは向こう岸から闇に向って下へ下へと下りていくのです。
すると闇の方から別のアリが登って来て挨拶を交わしました

2匹のアリは、互いに自分の見てきた世界を語り合いました

い→


深い割れ目があって、そこから恐ろしい闇の世界に落ちそうになったとき、思わずほつれ毛の木の枝にしがみついて助かったんだ。くねくね曲がった枝がいくつも伸びていて本当によかった。
光から来たアリがいいました。

「い・ろ・は」のほつれ毛は、そこに光が来ていることを教えてくれます。

闇を背景にしたこれらのほつれ毛は闇に奥行きを与えています。

は→

4 闇と光の均衡を観る

私はそこから闇の世界に入っていったんだよワクワクしながらね。
闇から来たアリが言いました。
闇の中ではみなが優しく包まれて安心していられるんだよ。

でも光の中でしかものは見えないし、ごらんよワクワクするような風景だって光の中にあるのさ。
光から来たアリが言いました。

中間トーンの部分、ここに基本的なマフラーの質感が見て取れます

5 影の中を観る

ごらん、闇の中で世界はこんなにも大きく豊に見えるんだよ。闇のアリが言いました

でも、闇の底で小さいけれど光のトンネルが見えるじゃないか。あの向こうにはきっと素晴らしい光の世界が待っているに違いないよ。光のアリが目を細めて言いました。

わかったよ光君、でもしばらくこの洞窟の中でゆっくり休もうじゃないか。それから外に出て行けばいいさ。

二匹はうなずき合ってしっとり心地よい地面に腰を下ろしました。

影の中にもふくらみを与えてくれるものの表情が見えます。


6 全体を観る

2匹のアリはいつの間にか眠ってしまいました。闇と光につつまれて、母親の胸の中にいる同じ夢を見るのでした。


今回のlessonはこれで終了です。

ものを観るということは、
必ずそこに心とつながっている何かがあるのだと理解してください

決してカメラでは出来ない、人としての力
それが「観る」に他なりません

デッサンはまさにこの観ることから始まるのです

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