lesson 6

(形の遠近と重なり)

最後に形の遠近法と、ものの重なりついて見ていきましょう。

形の遠近法は、いわゆる投影図法に基づきます。もちろん製図的な手法からではなく、

あくまで心の動きを補助するものとして利用するもので、心の投影図法と呼んでもいいと思います。

もう一つものの遠近を示すものに重なりがあります。遠くのものは前のものの後ろに隠れます。

そこに重なりが現れるのですが、デッサンではこの重なりに特殊な技法を使います。

では順にみていきましょう。


一点透視図法の作例です。

これはあまりに知られすぎていて、説明を要しないでしょう。

形による遠近の最も一般的なものです。

ただしデッサンの場合、あまり厳密に適用するのではなく、心のままにこの感じを利用します。


これは2点透視図法の作例です。

ここでは、先に見てきた空気遠近法を使っていませんが、はっきりと遠近を見て取る事が出来ます。

形が、いかに遠近のイメージを強く与えるかがよくわかります。

デッサンにとっても、形が重要な働きをするということをみておきましょう。


上下の重なりを一点透視図で表現したもの。

この図は正方形の紙が、目の高さによって変化する形を描いたものです。

中央の黒い点が、目の高さを表します。

つまり、黒点より上の形は、正方形を上に見上げた形であり、黒点より下の形は見下ろした形です。

この形の変化は大切ですのでよく覚えておいてください。

例えばコップを見下ろしている場合、コップの口や底は円を横から見ますから楕円に見えますね。

そのとき、口の楕円と底の楕円では見え方が違っています。その違いが左図でわかるのです。

つまりコップの底が1番下の正方形の上に描いた円とすれば、

コップの口はそれより何枚か上の正方形の上に描いた円になります。

見えている楕円のつぶれ具合には大変な差があることがお分かりでしょう。

つい上も下も同じ楕円を描いてしまいがちですが、思い込みと現実の違いを知ることはとても大切です。

デッサンは心と言いますが、心の誤った思い込みは正すことも必要です。

もちろんそうでない場合もありますが。


白抜きの境界線

塗りつぶしの境界線

以下は筆触法では例外の技法です

遠近を現すもう一つの方法として、重なりの表現があります。

重なって、後ろに隠れたものは遠くにあるというのは常識ですよね。

この遠近法はその常識を使ったものです。

ところでその描写には、ある技術が必要になります。

一つは左図のように、重なった部分を白く抜く方法です。

こうしないと、どうしても後ろと前の立方体がうまく離れてくれないのです。

これは心のアリが動いていく描写とは違った、デッサン上の技術であって、
嘘の表現といえなくもありません。

ここは描くというより、消しゴムの角を押し付けるようにして消しこみます。
そうする事で、前と後ろの立方体の間に空間が生まれるのです。

嘘というより、それは創造だと理解してください。

現実には無いものを、作り出す。それが芸術だと考えていただきたいのです。

逆に下の絵では、境界線を塗りつぶしています。

同じ考え方ですが、白く抜くか、塗りつぶすかは、その絵によって決まります。

普通、前のものの境界とのコントラストが強く現れる方を選びます。

不自然を作り出して、それを自然になじませる。それには大胆な心が必要です。


最後に、今までの技法を全て使った作例です。

空気遠近法、形の遠近法、重なり、

それぞれの技法が、どのように使われているか

確かめてみてください。

心は人やものと、自分との関係から生まれます。

この世の中に自分だけがいたとしても心は生まれ

ません。

デッサンも、画面の上にものの関係を描くことで

心を表現できるのです。

遠近法はその意味でも、より深い心を描き出す

技法といえるのです。

この絵をさらに描きこんで
完成させて下さい。
何が足りないか分りますか。

答え

デッサン教室2はこれで終了です。
お疲れ様でした。

当教室が、
皆様の心を豊にするために
すこしでもお役に立てれば
幸いです。






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