lesson 3

(グラデーションの感覚を身に付ける)

鉛筆デッサンは、無彩色の世界です。色がない代りに、画面の明暗が大変重要な要素になります。

明暗の差をどこまで描くことが出来るかがデッサン上達のポイントです。

当、デッサン教室は筆触法に基づくものですので、この明暗のグラデーションも線をひくということから始めます。(描くのであって、塗るのではない)

つまり、全てハッチングによって描いていくのです。

使用する鉛筆は一種類にすること。ますは3センチ角がいいでしょう。


まず、最暗と最明を描きます。

最暗は、最大の筆圧で縦横斜めときめ細かくハッチングします。手は筆記形が適当でしょう。

最明は画面上は真っ白に見えますが実は描いています。最微弱な筆圧でハッチングを試みるのです。

鉛筆はもちろん受け手でもちます。鉛筆の重み分を持ち上げるような気持ちでハッチングします。

筆触法では基本的に何も描かない空間は存在しません。真っ白もまた描いて白くするのです。

真っ白といっても当然鉛筆の線を引くのですから白紙の白さではありません。真っ白に限りなく近付くように最微弱の線を引く訓練です。思うように行かなくてもかまいませんよ。

この練習は、何より描く(線をひく)ということが、心を表現する唯一の手段だと考えるからです。


次に、その間に、中間のトーンを描きます。

心の中に、中間をイメージして描いてください。すると体が自然に力を加減している事に気付くと思います。

その気付きを大切にして下さい。心と体が対話し始めた証拠です。

作例では中間トーンより明らかに明の方に偏ってしまいました。しかしそんなことは気にせずに、

心と体の対話を楽しんでください。しっかり自分を見つめるのが秘訣


もう、やり方はお分かりですね。それぞれの間に中間トーンを描きます。

これで5段階のグラデーションが描けたわけです。

大事な事は、両側の明度を意識して、常にその中間を描こうとすることです。

両端を意識する事で、心と体は自然にその中間を目指します。

手の力が微妙に変化するのを体感してください。

そして心は、明暗の真中で様々な体験や物語を思い浮かべるかもしれません。

そんなときは、心の動きにまかせて遊んで見ましょう。


五枚のトーンからさらにその中間を描くと、9段階のグラデーションが得られます。

ここまでくると、要領は飲み込めてきたと思います。

ハッチングの際には線をひくという事を忘れないようにして下さい。

鉛筆の芯でごしごしこすってパステルを塗るような描き方をしないで、必ず一方通行の線で描きます。

ところで、上の作例では、まだ暗の方向に何枚も中間トーンを描いていけそうです。

さらに描き進んで、17段階のグラデーション、33段階のグラデーションに挑戦してみて下さい。

33段階のグラデーションが描けると、もうプロ級です。


グラデーションの練習はこれで終わりです。

単調な作業のようですが、やってみるとなかなか

面白いと思われた方はおられませんか。

そんな方はきっと、描くということの意味を体を通して

理解されたのかも知れません。

つまらないと思った方も、めげずに次に進んでください。

未知の自分との出会いが、きっとどこかに有るはずです。



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