第一子を佐野病院助産科で
上の子を2008年4月に佐野病院助産科で出産しました。佐野病院は自宅のすぐ近所であったことと、分娩台でいろいろ医療処置をされるのが嫌だというのが理由でした。助産所でもいいかと私は思いましたが、夫が医療面が不安ということで反対したこともあり、助産科(院内助産所)なら安心だと思ったからです。
2008年4月7日に助産師さんの手厚い介助を受けながら、助産科の畳の分娩室で夫の手を握り3680gの大きな女の子を産みました。夫が臍の緒を切り、夫も私も涙を流して娘の誕生を喜びました。しかし、佐野病院助産科は私が出産した直後に閉鎖され、それから産科自体がなくなり、娘の生まれ故郷がなくなってしまって寂しい気持ちになりました。
■第二子は野の花助産所で
第二子妊娠がわかって迷わず助産所での出産を決めました。以前は助産所出産を反対していた夫も賛成してくれました。石村さん高橋さんの隠れファンだったこともあり迷わず野の花助産所で出産することにしました。
私のバースプランはお産のスタイルにこだわりはなく、夫と3歳の娘と一緒に赤ちゃんを迎える『家族でお産』が第一の希望でした。夫の希望は臍の緒を切りたい、娘と赤ちゃんをずっと一緒にいさせてやりたいとのことでした。そうなると病院出産ではできないことなので、どうしても助産所で産みたいと日に日に強く思うようになりました。
■待ちに待ったお産
嘱託医から「赤ちゃんかなり大きいね」と言われていたので、きっと早めに生まれてくるだろうと思いきや予定日を過ぎても生まれてくる兆しがなく、毎日を悶々と過ごしていました。42週になれば病院出産になるので、それまでになんとか生まれてきてねとお腹の赤ちゃんに話しかけていました。
予定日を10日過ぎた9月23日(金)の午前6時頃、なんとなく陣痛らしき痛みを感じて起床。夫と娘を起こして身仕度を整えて、7時40分頃に野の花に到着しました。着いた時には10分間隔になり、初産の時と違って物凄いスピードでお産が進んでいくのに驚きました。住宅街だしギャーギャー叫ばないぞと思ってはいましたが、まったく駄目でした(笑)。痛い!!ぐうぇ〜!とかよくわからない叫び声をあげながらのお産になりました。あまりの痛みにへこたれそうになっている時に、石村さんが「今が一番痛い時だね」と励ましてくれながら暖かくて柔らかい手で腰をさすってくれました。時折、ラベンダーオイルの匂いが漂ってきたり、高橋さんが頻繁にオイルを塗って会陰保護してくれているのもわかりました。ベテラン伴走者に付き添われながらフルマラソンを走っているような感じでした。
赤ちゃんの頭が見え隠れし始めた時に、私がいきんでいるのをみて自分もいきんだのか、娘が小さい声で「うんち出ちゃった」と申告してきた時は、思わず笑ってしまいました。夫は私の手を握り水を飲まし、カメラを回し、娘のオムツ替えをし、立ち会い出産というよりは参加出産という感じで、バースプランの『家族でお産』がかないました。
午後12時20分に待ちに待った赤ちゃんが生まれました。私は事前に性別を聞いていなかったので、赤ちゃんが生まれてきた時に「どっちですか?」と聞いたら、石村さんが「自分で見てみ。お父さんはもう見えたみたいだよ」と言われました。自分の眼で小さなおチンチンを確認してみるとなんとも言えない不思議な感動がありました。てっきりテレビドラマとかでよく見る、助産師さんが赤ちゃんを高々と掲げて「ほら、元気な男の子ですよ!」という場面を想像していましたが、石村さんと高橋さんは最後まで裏方に徹しているのだなと思いました。上の子と同じように夫が臍の緒を切り、なんと体重は4120g、身長は56.5cmのビックベビーちゃんでした。
赤ちゃんの名前は颯士(そうし)と名付けました。
■家族揃っての入院生活
家族揃って、3泊4日を過ごしました。娘と私と颯士はベッドで川の字で、夫はベッドの横に布団を敷いて眠りました。夫は娘と颯士が並んで眠っているのを見てとても嬉しそうにしていました。自宅のように家族で食卓を囲めることも私たちにとってはとても幸せなことでした。
毎朝、洗濯機の回る音や料理をしている音が聞こえてきて、自分が今入院していることを忘れてしまうような居心地の良さでした。めったに行くことのできない田舎の親戚宅に泊まっているようで、退院の日は家族みんな一抹の寂しさを感じました。
■家族が主役であること
野の花のいいなと思うところは、お産の主役はお母さんと家族であることを徹底していること、それからいい意味で大雑把なところ(笑)。私はどちらかというと不真面目妊婦でしたが、お産のために一度もああしなさいこうしなさいと言われなかったことが、私にとって快適な妊婦生活を送る糧になり、それが産後の育児も楽にしてくれているのだと思います。
家族が主役のお産は、やっぱり近代的な病院施設より家の方がしっくりきます。そして助産所は、病院では拾い上げれない医療の外にあるもの(対話、家族、アットホーム、自然、育児支援…)をとても大事にしています。私にとってはそれが安心して産むための大事な要素でした。助産所出産は出産総数の約1%ですが、助産所出産をする人が少しずつでも増えてきてほしいと思います。お母さんたちが安心して子どもを産み育てていくために。石村さん高橋さんには野の花をずっと守っていってもらいたいと心から願っています。
(ママは院内助産所の発祥や運営実態、助産所の出産環境などを建築学の立場から研究されている方です。)
|