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ALBUM OF THE YEAR 2015
ALBUM OF THE YEAR 2015 ――CDが終わる時代に |
1位 『Carrie & Lowell』 / Sufjan Stevens
I forgive you, mother, I can hear you 暖かな音色のアコースティック・ギターに乗せて囁くような声で唄われるのは、亡き母との浮かんでは消える思い出のワンシーンと、幼い自分のもとを去った彼女への愛憎。ビデオ屋に置いていかれたり、シャツを引っ張って灰皿を床に落としたりといった、母親・キャリーと再婚相手・ローウェルと暮らした僅かなひとときを、ごく小さな音圧と音量で繊細に繊細に紡ぎ出している。複雑な感情を抱いていた母に対して、それでも《あなたを許します、母さん》と唄った彼の切実な想いは、私たち誰しもが抱える幼少期の記憶に緩やかに重なって、きっとあなたに涙を流させることだろう。しかし、母の死を契機に作られたこの作品で、彼はまた、これからも延々と続いていくこの生と死の営みに疑問を投げかけているようにも見える。"No Shade In The Shadow Of The Cross"――引き裂かれるような哀しみに襲われたとき、膝を付いて、頭を垂れて、手と手を握り締めて祈りを捧げる相手は、一体誰だっただろうか、と。 - - - - - - - - - -
Sufjan Stevens, "Should Have Known Better" (Official Audio)(YouTube) 2位 『Obscure Ride』 / cero
もう各方面で絶賛の嵐で、そんなに私が書くこともないのだが、構成としては、実はかなり歪なアルバムだ。乱暴に言ってしまえば、ファンク/ソウル/ヒップホップというブラック・ミュージックの「腰にクる」ビートの反復とそれに乗せる日本語の語感を突き詰めた前半6曲――そうして登り/張り詰めたテンションがアンセム・"Orphans"でクライマックスを迎え、後半6曲使ってゆっくりと(本当にゆっくりと)チルアウトしていく……といった具合である。アルバムの典型・定番をさらっと外したこの山なり放物線な展開でも「聴かせる」ことができるのは、間違いなくサポート・メンバー加入によるバンドのビルド・アップの故だろう。どっしりした重心のベースとドラムが、キーボードを、ホーンを、そして何より高城晶平の歌をより高く羽ばたかせた。それこそがこの作品を日本のポップ音楽史に今後数十年残っていくであろう傑作足らしめたことを、ここに改めて記しておきたい。 - - - - - - - - - -
cero / Summer Soul【OFFICIAL MUSIC VIDEO】(YouTube) 3位 『C2』 / Base Ball Bear
完全に抜けた。ギターロックの呪縛から完全に開放された。キーワードはファンク。抜群の安定感と粘りを生むリズム隊(関根嬢、本当に上手くなった!)に支えられ、小出お得意のカッティングはより軽やかなウワモノに徹する。自問自答を繰り返す自意識の牢獄を「それって、for 誰?」というラインに託して、その永遠の未解決を、客観的に、批評的に、そして何より個人的に表現してみせた。盟友(?)・サカナクションの"エンドレス"と全く同じテーマを扱い、常軌を逸した言葉選びで軽々とその上を越えていった"HUMAN"、彼らの(主に小出の)底意地の悪さ(という名のリスペクト)が滲み出てて、ずっと聴いてきた一ファンとして本当に痛快でした。 - - - - - - - - - -
Base Ball Bear - 文化祭の夜(YouTube) 4位 『Sometimes I Sit And Think, And Sometimes I Just Sit』 / Courtney Barnett
乾いたフェンダー・ジャガーの太く歪んだ音にのせて矢継ぎ早にまくしたてる彼女の掠れ気味の歌は、ひょっとするとヤケクソとか自暴自棄とかいうふうに受け取られるかもしれない。何せ、《誰も君がパーティに行かなくたって気にしない》し、《一度聞いた話をもう一回聞かされるくらいならベッドに転がっていたい》のだ。でも、彼女の音楽は、歪んではいるが、湿ってはいない。どれだけ欝屈としていても、ボサボサの癖っ毛の下にあのお茶目で悪戯っぽい笑みを浮かべることを忘れない。だからきっと、彼女は自身の強い光が焼き付ける濃い影に飲まれることはない。ショット・ガンを口に入れたりしないかと僕たちが心配する必要はまるでない。《全財産ちょうだい! そしたら、オリガミ折ってあげるよ》――ははは。望むところだ。 - - - - - - - - - -
Courtney Barnett - Nobody Really Cares If You Don't Go To The Party(YouTube) 5位 『柴田聡子』 / 柴田聡子
この、言語感覚。あっちにこっちにコロコロ変わる思考経路をそのままなぞるような脈絡のない歌詞。を、そのまま再現するような、しきりな半音階、転調、テンションコード。自由奔放、というより柵を壊しながら無秩序に転げまわるような彼女を、手練れのバンド・メンバーがなんとか川に落ちないように押しとどめて、ギリギリでアルバムという形になんとかまとめている。危うくて、危うくて、目が、耳が、離せない。andymoriの小山田圭吾以来の天才。ほんと、オリンピックなんてなくなったらいいのにね。 - - - - - - - - - -
柴田聡子 - ぼくめつ(YouTube) 6位 『To Pimp a Butterfly』 / Kendrick Lamar
国内盤のライナー・ノーツで「文学的」と称されているのもさもありなん、このアルバムはある一編の詩の朗読を軸に展開していく。ファーガソンをはじめ相次いだ白人警官による黒人射殺事件に対する憤り、「ニガ」でありながら成功者に地位についたことによる罪悪感、そしてその成功による自分の「影響力」の使い道――それらの狭間でもがき苦しむケンドリックの葛藤がFlying Lotusの『You Are Dead!』に触発されたであろうジャズ/ファンク色の濃いトラックに乗せて綴られている。だからこれは、勿論、ジャケットにあるような白人裁判官を打ち倒しシャンパンで祝杯をあげる黒人たちの物語ではない。自分自身の内に眠る「蝶」から搾取する青虫の、その果てに待っているものが何かという物語なのである。誰がなんと言おうと、今年のグラミーはこの作品が獲るべきだ。 - - - - - - - - - -
Kendrick Lamar - Alright(YouTube) 7位 『See you, Blue』 / (((さらうんど)))
サウンドデザイン自体はさして前作、前々作から変わっていない。ノイズが加えられたぐらいのものだ。にもかかわらず、作品のトーンは明確に異なる。ジャケットの「青」に象徴されるような、深く深く沈んだ、澄み切った、怒り――。凍るような音色のシンセ・フレーズに、崩れ落ちそうに不安定なピアノ・ソロに共鳴するように、鴨田潤の言葉も歌声も、より冷たく鋭く耳に刺さってくる。2010年代の「新しいポップス」を標榜した彼らがささくれだった世相に呼応し、その「ポップス」をかなぐり捨ててまで辿り着いた紛れもない最高傑作。それだけに、"乙zz姫 (Sleeping Beauty Part3)"だけは本当に今作からは外して欲しかった。やっぱどうしても、浮いてる。 - - - - - - - - - -
(((さらうんど))) / Siren Syrup (Audio Video) 8位 『In Colour』 / Jamie xx
溢れるロマンチシズム。踊り疲れたパーティーの後の美しい朝焼けが眼前に映し出されるような"Gosh"のアウトロ。部屋で独り足元を睨みつけてステップを踏み続けた感触が伝わってくるような"Stranger In A Room"のシーケンス。フロアにあのアンセムが流れたときの歓喜の渦を胸に巻き起こしてくれる"Loud Places"のコーラス。初めて夜の街に繰り出した高揚も、生ぬるいアルコールと口紅の付いた酒瓶の口当たりも、名前も知らない君と確かに通じ合う瞬間も、全てがここにはある。勿論、毎回そんなドラマチックにはいかないし、それどころか後悔さえするような夜があることも知っている。だけど、この11曲に収められているようなことが、確かに起こることもまた、僕たちは知っている。 - - - - - - - - - -
Jamie xx - Loud Places (ft Romy)(YouTube) 9位 『Art Angels』 / Grimes
何があったクレアちゃん?ってくらい、悲劇的で悲観的でヒロイック。息を吐く間もないほど僅かな曲間で14曲を走り抜ける様は、もはや躁状態。前作から三年、ネット世代の寵児として祀り上げられた彼女を取り巻く状況は、相当にヘヴィなものだったようだ。楽曲自体は彼女のポップネスが爆発した非常にキャッチーなものだが、「キャッチー」も度が過ぎるほど研ぎ澄まされれば、こんなにも鋭く、痛々しくなるものなのか。芸術の天使たちは、聴く方にそれ相応のタフネスを要求するらしい。 - - - - - - - - - -
Grimes - Flesh without Blood/Life in the Vivid Dream(YouTube) 10位 『青春の象徴 恋のすべて』 / The SALOVERS
まず、タイトルがいい。サラバーズがどんなバンドだったかといえば、つまりそういうことだったのだろう。最後のアルバムで自らそれを言い当てて、相変わらずの単音リフとよれたコーラスで焦燥感たっぷりに駆け抜けていく。余りに、笑っちゃうくらいにクリシェ通りだが、終わっていく美しさを刻みつけた37分間の輝きを、"喉が嗄れるまで"歌い続けた彼らの姿を、決して忘れはしないだろう。 - - - - - - - - - -
The SALOVERS - Disaster of Youth(YouTube) 11位 『Surf』 / Donnie Trumpet & The Social Experiment
なんという多幸感。だが、底抜けに明るい曲が並んでいるというわけじゃない。どころかむしろ、ドニー・トランペットの乾いた音色のトランペットが、ハスキーなジャミラ・ウッズのヴォーカルが、どうしようもない孤独を浮き彫りにしてくる。でも、だからこそ、クライマックスの"Sunday Candy"が眩しくて鮮やかな色を放つのだ。死ぬほど憂鬱な月曜日から一週間を何とかやり過ごして、やっと辿り着いたおばあちゃんの家でもらえるペパーミント味のキャンディ――また次の、死ぬほど憂鬱な月曜日を迎えるためのサンデイ・キャンディ。あなたにもきっと、あるでしょう? - - - - - - - - - -
Donnie Trumpet & the Social Experiment - Sunday Candy "Short Film"(YouTube) 12位 『Songs』 / 踊ってばかりの国
まさかの全曲ラヴ・ソング。オープニングの"ocean (intro)"から"君を思う"への流れなんて、「え、ちょっと待って、今俺は大瀧詠一を聴いているのか?」と錯覚するほどだ。うん、ちょっと言い過ぎた(どっちかと言えばクリストファー・オウエンスか)。いや、まぁ、相変わらずトチ狂ってはいるんだけど、随分とメロウなサイドに寄せてきたなという感じ。元々このバンドが備えてはいたが、キチガイ性の後塵を拝していた甘いグッド・メロディとポップネスが全面に押し出されている。しかし、ミイラズを嘲り笑っていた下津が、よもや『言いたいことはなくなった』みたいな路線のアルバムを作るなんて因果なもんやな……とか感傷に浸ってるところにすかさずメンバー脱退をぶっこんでくるその破天荒さ、相変わらず過ぎて流石です。 - - - - - - - - - -
踊ってばかりの国『ほんとごめんね』PV(フルサイズ)(YouTube) 13位 『Sound & Color』 / Alabama Shakes
いやはや、音、良過ぎでしょ。楽器の一つひとつ、一音の粒が凄まじくクリアに録音されている。まるで自分がスタジオにいるかのように、キレの良いカッティングが、ミュート気味のアルペジオが、音割れ寸前レベルのベースの音圧が、防音壁に反響するバスドラムのエコーが、ブリトニー・ハワードの唾が弾け飛ぶ唇の破裂音が、右耳に、左耳に、渾然一体となって(だがしっかりと分離して)鳴り響いてくる。バンドの成り立ちからいって、『Sound & Color』の「Color」は勿論「人種」のことも意味してるんだろうけれど、素直にこの音の「色」――手で触れそうなほどリアルな音の「質感」と捉えたほうがしっくりくる。音は立体であるということを身体でわからせる凄まじいレベルのレコーディング。ここまで読んでくれたあなたは、誰彼構わず一人残らず以下の動画を見て、阿呆みたいな音の存在感(とブリトニーの巨体のインパクト)にブッ飛ばされてください。必修です。 - - - - - - - - - -
Alabama Shakes - Don't Wanna Fight (Official Video - Live from Capitol Studio A)(YouTube) 14位 『Tomorrow's Modern Boxes』 / Thom Yorke
トム・ヨークはもう、ほとんど歌を手離しかけている。Radioheadの『The King of Limbs』ではサポート・メンバーを増やして、Atoms For Peaceの『Amok』ではバンドを変えて(レッチリのフリーまで招聘して!)更に入念なスタジオ・ワークを重ねて、執拗なまでに繰り返されてきた「リズム」への探究は、今回の宅録感漂うソロという形で一応の決着をみたといっていい。あれだけの試行錯誤を経て、メンバーもヴォーカルとしての自分も要らない(一応唄ってはいるが)というスタイルに落ち着いたというのは、なんだか皮肉ではある。が、ミニマル・ビートの反復とテープ・コラージュの応酬と把握しきれないほどの変拍子にもかかわらず、何故かキャッチーさが失われないのはもう何なのか。魔法ですか。それより皆さん、ここまで丹念に実験作を消化しきったってことは、次のRadioheadの新作は……わかりますよね? 座して待ちましょう。 - - - - - - - - - -
A Brain In A Bottle VIDEO(YouTube) 15位 『SHINE LIKE A BILLION SUNS』 / BOOM BOOM SATELLITES
バンドの現状を鑑みれば、"SHINE"の果てに"STAIN"となる、という筋書きは、言ってしまえばありがちではある。だが、これが最後かもしれないってわけだからじゃないだろうが、デジタルの轟音の中で広がってゆく祈りにも似たファルセットに、「厳か」としか表現できないような迫力を感じる。『TO THE LOVELESS』の完成度への異様な執着とはまた違う、真摯で透明な詠唱。些かメランコリーが過ぎる? 言わせておけばいい。今はただ、遠く微かに鳴っているシンバルの残響に、そっと目を閉じる。 - - - - - - - - - -
BOOM BOOM SATELLITES 『A HUNDRED SUNS』(YouTube) 16位 『Small Town Talk』 / Turntable Films
正直に言うと、日本語詞はまだ早かったのではないかとも思う。それほどまでに、Wilcoをルーツとする彼らの音楽には、井上陽介の年齢以上に嗄れた声には、やはり英語詞がマッチしていたし、今作のサウンドにおいても同じことが言えるだろう。しかし、だからといって、これは失敗などではない。あったかい春の木漏れ日ような彼らのムードとキャラクターがよりダイレクトに、たおやかに耳を包んでくれるようになった。冬の日に小さな手のひらを暖めてくれる小さな灯りは、これからもっともっと沢山の言葉をその身に宿して、大きな大きな光となっていくだろう。 - - - - - - - - - -
Turntable Films / Cello(YouTube) 17位 『Honeymoon』 / Lana Del Rey
前作の荒涼としたサウンド・プロデュースとは一転、巧みな多重コーラスとストリングス・アレンジで「めくるめく非日常」と、それだからこそより一層濃くなる翳を聴かせる。曲単位でみればソング・オリエンテッドな代表作・"Videogames"路線だが、全体の統一感は前作・『Ultaraviolence』並と抜かりない。ニーズを的確に捉え、順当に足場を固め、着実にステップ・アップしていくこの半端ないセルフ・プロデュース力――本当に強かな女。それにしても、のっけのタイトル・トラックの重々しいイントロから満を持して繰り出される《We both know...》という歌い出し、怖すぎ。痴情の縺れの修羅場の果てに濡れ場で刺される感、ある。 - - - - - - - - - -
LANA DEL REY - HONEYMOON(YouTube) 18位 『THE MEMORY HOTEL』 / 一十三十一
これはもはや、「90年代シティ・ポップ・リヴァイヴァル」とか、「もし10年代までバブルが続いていたらというIfの物語」とかではないんじゃないだろうか。「そのまま」なのではないだろうか。本作がミスチルとドリカムの間に並べられても恐らく、何の違和感もないだろう。だからこそアルバムの舞台は「ホテル」だし、一十三十一はどこぞのトレンディ・ドラマよろしくウェディング・ドレスを纏っているのである。『CITY DIVE』から積み上げられてきたアーバンでラグジュアリーなサウンド・メイキングの果てに、時が止まったかのような砂漠のラビリンスに迷い込むなんて――何とも詩的じゃないか。 - - - - - - - - - -
一十三十一「Labyrinth ~風の街で~」MV(YouTube) 19位 『KABLAMMO!』 / Ash
いやー、曲良過ぎ。ティム・ウィーラーのメロディ・メーカーとしての才能は枯渇しないのか。もうアルバムは作らないだの『A-Z』シリーズだのなんの色々ありましたが、こうやって良い曲がある程度の数書けさえすれば、それらをなんとなく適当に並べるだけで普通に良いアルバムになってしまうのである。"Cocoon"の爆笑PVよろしくメシが食っていけるのである。ずるい。ティム・ウィーラー、全世界の才能ないミュージシャンの妬み嫉みを一身に引き受けるべき。 - - - - - - - - - -
ASH - Cocoon(YouTube) 20位 『Fading Frontier』 / Deerhunter
「そうそうこれだよこの路線が聴きたかったんだよ!」と思わず膝を打った"All The Same"による幕開けから一転、2曲目でいきなり《I'm living my life》とか唄い出してくれちゃったからさあ大変。おいおいどうしたブラッドフォード・コックス? 迷走した前作・『Monomania』からの揺り戻しともいえるリード・トラックの"Snakeskin"が申し訳程度の新機軸になっている他は、気が抜けたように穏やかで色彩に溢れる楽曲が収められている。それらは、本音を言うと、結構、つまんないんだけど、ブラッドフォードに《So carry on/Carry on/I will stay strong/I set you free》なんて言われたら、そりゃ、グッときちゃうでしょ。 - - - - - - - - - -
Deerhunter - Living My Life(YouTube) 言うまでもなく、2015年はブラック・ミュージックとApple Musicの年でした。 2014年末のディアンジェロに口火を切られ、Alabama Shakes、Donnie Trumpet & The Social Experiment、そして何よりケンドリック・ラマー。ブルーズ、ソウル、ファンク、ヒップホップと多種多様の花が咲き乱れました。 日本でもその動きに共振するかのようにceroが黒いリズムを下地に見事な「折衷」を果たした傑作をリリース。Base Ball Bearが苦心の末手にした決定打にも、間違いなくこの黒人音楽の血が流れていました。そして、そのムーヴメントは、星野源というアイコンを通じてとうとうお茶の間にまで辿り着いたといえるでしょう。タテノリが浸透しきった日本のメインストリームに、この何度目かの再輸入がどのような化学反応を起こしていくのか。とても楽しみです。 一方で、Apple Musicをはじめとするストリーミング・サーヴィスの隆盛に伴って、「いよいよ本格的にCD終わるんじゃね?」というムードを肌で感じられるようになりました。そりゃ、スワイプ一つで新譜が発売日(ものによっては発売日前)にフリー・ダウンロード、オマケにご丁寧に私好みのサジェストまでしてくれる。こんな便利なもんあんのに誰が3,000円払ってCD買うんだって話ですよ。じゃあ、アルバムは? なくなってしまうのでしょうか。 そんなもの、火を見るより明らかです。涙が出そうになるくらい美しいスフィアン・スティーヴンスを聴いてください。吐きそうなほどの徒労にそれでも足を踏み出したBase Ball Bearを雄姿を見てください。激しく、激しく、切実なケンドリック・ラマーの祈りに触れてください。この象徴的な年に、私がこのウェブ・サイトを作った2010年以来、一番の豊作と言えるほどの傑作の数々が生まれたこと自体が、何よりその証明ではないですか。 2016/2/13 |