折り込みどどいつ

「出席をとります。石黒敬七さん、春風亭柳橋さん。三味線豊吉さん。長崎抜天さん。…」の青木先生の声で始まるNHKラジオの番組「とんち教室」を覚えていますか。

昭和25年からこの番組のプランナーをつとめられた中道氏は、その番組でレギュラー生徒に折り込みどどいつの即吟をしてもらう他に、一般聴取者への”来週までの宿題”として応募を求め,それが最高の人気を博しました。

現在、中道氏は風迅洞の号で「現代どどいつ教室」を指導主宰されるかたわら、昭和53年から始まったNHKの文芸選評番組「折り込みどどいつ」を当初から担当しつづけておられます。

私は、高等学校の同窓会で風迅洞師の門下生の一人とたまたま同席したことから、「折り込みどどいつ」なるものを知りました。しかも早速、我流でものした「折り込みどどいつ」を迷惑を承知でその門下生に送り批評を求めました。その上、勝手に「中道風迅洞先生の孫弟子」と自称しています。あくまで自称ですから、ここに臆面もなくご紹介する作品の拙さは、大先生やその門下生のなんらあずかり知らぬところであります。またそれらすべては創作であり、モデルは一切無いことを申し添えます。

(ご参考まで)

小生が大阪の書店で見つけた中道氏の著作「[二十六字詩]どどいつ入門古典都々逸から現代どどいつまで」は上梓された昭和61年末、出版界の話題となり数多くの新聞・雑誌が紹介の記事を載せた。ここには雑誌「諸君」(文芸春秋社)1987年1月号の記事を転記させて戴きご参考にしたい。

「どどいつ入門・中道風迅洞」
"家の女房と 枕の堅さ 俺にだけしか 合わぬもの"

<どどいつ>なる単語を耳にした時、読者はいかなるイメージで受けとめられるだろうか。爺むさい趣味、時代劇のワンシーン、戯歌、或いは若い人ならむしろエキゾチックな”江戸趣味の世界”といったところか。 本書は「この語音につきまとうイメージは四畳半、三味線、寄席色ものといった卑俗な俗謡」におとしめられていると慨嘆する著者が<どどいつ>の復興と市民権獲得を目論んだ一冊。「私の目にすること、知ることが出来たものの著冊の名はすべてこの小冊の中に記した」というだけあってマニュアルとしても他に類をみない。
また「面白いどどいつの文句だけを知りたいという向きにも、古今の詞章の出ているところを拾って読んでいただければ、《本音の歌》《未練の詩》としての二十六字詩が、文字どおり今日に生きていることがわかっていただけるように編ん」であり古典どどいつから現代どどいつまでをこの一冊で楽しみつつ渉猟できること請合いである。<どどいつ>は七七七五調であるがたいていの歌謡曲や民謡がこの語調であること、明治時代にはすでに英仏で翻訳紹介され、高く評価されていたことなど、知っていてじゃまにはなるまい。
<女房あるのも 子のあることも 承知しながら 腹が立つ
<赤いネグリジェ サタンにみえて 悔いが身にしむ 寒い朝(*)
 開いた頁でひろってみたが、これでニヤリとも出来ない御仁は、いないのでは?
著者は、NHK文芸選評「折り込みどどいつ」選者で斯界の第一人者。<伊>

(*)七七七五の頭が「あさくさ」の折り込みになっている。(中島註)