講習会のご案内
森 忠三先生セミナーのテーマについて
   ☆森先生が、セミナーのテーマを簡単に解説してくださいました。

第1回 4月24日(木) 「神経性食思不振症」

思春期の女性に発病する。文化的な背景としてスマートな体型が魅力的であると考えられていて、しかも食べ物が豊富な先進諸国で見られる。発病の頻度は1%と言われている。痩せることへの願望が強く、どんどん体重が不足して無月経の症状を引き起こしているにもかかわらず、なおも食事を摂取せず、体重が増えることに強い恐怖を抱いて食事を拒否している。最近では中学・高校の不登校の原因のひとつにもあげられ、病状が進行すると電解質の異常で死亡することもあるため、入院させて適切な治療を行う必要がある。

第2回 5月22日(木) 「ADHD、学習障害」

学業不振を示す子供たちの中では、精神遅滞もなく、視覚・聴覚の障害もなく、学業を妨げる情緒的な問題を抱えているわけでもない子供が、今注目を集めている。これらの子供は、ADHDと診断される子供で、しばしば学級崩壊の引き金になる。
ADHDは、Attention Deficit Hyperactivity Disorderの略で、注意欠陥多動障害と呼ばれている。また学習障害とは、読み・書き・計算等の能力の中で特定の分野での習得に障害のある子供である。学習障害の原因として、最近ワーキング・メモリーの異常であるという考え方が提唱されつつある。

第3回 6月26日(木) 「小児の心身症」

心身症は、心理的・精神的な原因があってそのために身体に症状の現れる病気である。年齢が進むにつれて、小児の心身症の内容も変化していく。乳児期では、憤怒けいれん・抱きぐせによる睡眠障害等がある。幼児期には、指しゃぶり・どもり・周期性嘔吐症等がある。学童期には、チック・過敏性大腸症候群・消化性潰瘍等がある。これらの小児の心身症についての解説を行う。

第4回 7月24日(木) 「睡眠、夢、無意識」

睡眠は、大きくレム睡眠と徐波睡眠(ノンレム睡眠)のふたつに分けられる。レム睡眠はどのような睡眠か?徐波睡眠はその眠りの深さにより第1度から第4度までの4段階に分けられ、これらの各段階の脳波の違いについて解説する。眠る命令が脳のどこから出るか?覚醒時と睡眠時の脳の働きについて述べる。夢の体験として、金縛り現象・明晰夢などについて述べる。また、無意識と夢との関連性について解説を行う。

第5回 9月25日(木) 「インフォームド・コンセント、尊厳死、ホスピス」 

インフォームド・コンセント(Informed Consent:略IC)とは病名と治療に関する医師の丁寧な説明と患者の納得・了解であり、ICは患者の知る権利に基づいて進められることである。そのためには、患者にとっては好ましくない情報も隠さずに知らされなければならない。そこで、「治癒しないガンの告知」の問題が生じてくる。死を告知された場合の人間の心理的な反応として、キュプラ・ロスの反応を述べる。不治の病を抱え死が近づいている患者を入院患者として受け入れる病院の施設が、ホスピスである。ホスピスでは、患者は尊厳死の立場にたって死を迎えることになる。尊厳死とはどのような考え方であるか?尊厳死と安楽死は、どのように違うのか?について解説を行う。

第6回 10月23日(木) 「脳死と心臓移植」

ICU(Intensive Care Unit:手術後の集中治療室)とCCU(Coronary Care Unit:急性心筋梗塞のための集中治療室)の進歩により、従来の死の判定の変更が求められるようになってきた。ここでは植物状態と脳死の違いについて述べ、脳死の判定基準について解説を行う。心臓移植はどのような患者に必要であるのか?心臓移植が行われたあとに、患者は自分自身(自己)の心臓をはずされ、移植された他人(非自己)の心臓で生き延びることになる。その時に、その患者の免疫系が自己と非自己をどのように判定するかという問題に遭遇することになり、新しく移植された心臓を自己でないと判断して拒絶する拒絶反応を起こすことになる。これに対する治療について述べる。

第7回 1月29日(木) 「自閉症」

自閉症は1943年にカナーによってはじめて報告された。自閉症の特徴は@言語の発達の遅れ、A他人の気持ちや感情が理解できない、B物事にこだわりを持っている、の3項目があげられる。知能指数が正常よりも低い精神遅滞を伴う場合が約75%に認められる。 知能指数が85以上の場合には高機能自閉症と呼ばれ、自閉症の約25%を占めている。高機能自閉症の場合には高校を卒業して大学に進学する場合もある。自閉症の場合は言語性の知能指数に比べて、動作性の知能指数の方が高いのが特徴的である。また右脳の機能が優れている場合が多い自閉症に対しては個別の音楽療法の効果が認められる。

第8回 2月26日(木) 「痴呆」

痴呆とは今まで保持していた認知能力が低下していく状態といえる。高齢者になると生理的な老化現象により様々な機能が低下するが、痴呆と生理的な老化とは別の現象である。痴呆は@脳血管性の痴呆、Aアルツハイマー病による痴呆、の2つに分類されている。@脳血管性痴呆は、脳梗塞とも呼ばれている。脳梗塞には2つの型がある。a)コレステロールが高くなりそれが原因で脳の動脈硬化が進行し、脳の動脈がだんだんに狭くなる脳血栓のタイプと、b)心電図の異常である心房細動が原因で、左房内にたまった血液の塊が組織化し、これがあるときに剥離して突然、脳の動脈に詰まるという脳塞栓のタイプである。Aアルツハイマー病による痴呆は原因が不明であり、脳の神経細胞が萎縮してその機能を失っていく病気である。痴呆の初期には音楽療法の効果が認められる。

第9回 3月11日(木) 「不登校」 

不登校とは1年間に30日以上の欠席の場合である、と文部科学省が定義をしている。特別な理由がなくある日突然学校に行きたくないと言い出す場合が多い。このような不登校は従来は中学生の現象として報告されていたが、最近では小学生にも現れ、社会的にも注目を集めている。不登校には様々な原因がある。小児科医はこれらの原因について丁寧に診察を行いその原因を明らかにすることにしている。私が経験した不登校の原因としては@自我同一性の悩み、Aいじめ、B家庭内のトラブル、C神経性食欲不振症、D高機能自閉症、E愛情遮断症候群、7その他と様々である。原因に応じて対処の方法も異なる。上記の原因に対応した事例について解説を行う。不登校の中には音楽療法の効果が認められる場合がある。

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