帝国歌劇団・花組 2003年新春歌謡ショウ『初笑い七福神』/短評

 さて、早速短評を書くが、出来るだけ客観にするつもりだが、先に書いておく、独り善がりの短評になろう事を。また、普通によい点などは敢えて書かないので、批評が多くなりそうだが、それに対する苦情のメールは一切受け付けないので念のため。
 尚、星マーク(最高五ツ星)は点数ではなく、単なる目安。☆は★の半個分。
 追記。星の数は全体を見て割り出しているつもりだが、どうやら歌に思った以上に重きを置いていることが判明。でも軌道修正はしない。

・第一部 オープニング  ★★

挿入歌‥‥イッツ・ショウタイム

 『アラビアのバラ』の時からアレンジをするのは結構だが、バランスが頗る悪い。一番の原因はハーモニーの低音部の声量不足だと認識しているが、これはいくらでも調整可能だったのではと思う。たとて練習不足だったとしても、だ。どちらにしろ大きな減点。
 幕間はダンディー団一味。

・土手下長屋  ★★★★

挿入歌‥‥メトロで行こう(ショートバージョン)
     オンリー・マン(一部)
     夜のサンバ

 2年前のレニの酔いっぷりにもビックリしたが、今回のマリアの壊れっぷりは、別の意味で歌謡ショウ史上衝撃の出来事だろう。今回も田中真弓はひとりメンバーと違う役割を突き進んでいる。登場時間は一番短いが、目一杯注目されているので、印象としてはあまりそう思わせないのは秀逸。
 今回は台詞こそなかったが、明らかにポジションアップしてきた山沢のりが幽霊役として登場。良く言えば目立つ存在、悪く言えば上手く取り入ったという感じだ。歌謡ショウ皆勤と言うこともあるが、やはり他のダンサーとは何か違う物があったのだろう。
 幕間は親方と千葉助。内容は劇ではなくコント(?)

・新春祝い太鼓  ★★★☆

 今回は薔薇組やダンディー団の初参加組を含み、総勢14人の大所帯になった。その分迫力がある。
 ところで、前から気になっていたことだが、レニやカンナ・マリアは何故ハチマキを上に載っけてるだけなんだろうか?髪型が崩れるから?

・3分間ショッピング  ★★★☆

 悪名高い3分間ショッピングが正式にコーナー化した。その第一号が「蒸気式チップカイロパッチン君」だが、今のところ(2004年末現在)唯一適正価格の商品ではないだろうか。よくは知らないが、もし電子レンジにも対応していれば、再利用時の光熱費も節約できそうだ。
 どうでもいい話だが、“3分間”と銘打ちながら実際は2分足らずだ。
 

◆第二部 花組ヒットパレード

・島風  ★★★☆

 この曲は第四期ドラマCDの「怪人ねずみ男爵」の挿入歌だ。沖縄らしい情緒溢れる曲に仕上がっている。ただ、ドラマCDの内容からこの曲にたどり着く理由がわからないのだが。

・夜空の花  ★★★☆

 この曲は第四期ドラマCDの「すみれラプソディ」の挿入歌だ。しっとりとし、しかしどことなく物悲しい。それはメロディーからくるものでもあり、歌詞からくるものでもあるが、すみれ引退のエピソードに挿入されていることにも遠因がある。

・恋は摩訶不思議  ★★★☆

 この曲は第四期ドラマCDの「怪人ねずみ男爵」の挿入歌だ。先の『島風』と違い、ストーリーに絡んでくる曲で、アイリスの疑問をマリアが受ける形で唄われている。でも結局これだけでは解決していないのだが。

・輝き  ★★★☆

 この曲はOVA轟華絢爛第2話「水のある都市」の挿入歌だ。ドラマCD『青い鳥』を違った角度でOVAにしているので歌の趣も違う。『希望』はレニの“暗→明”を、『輝き』はアイリスの“子供→未来”を唄っている。子供の純粋な心のまま大人になれたら、どんなに素晴らしいことだろ。ただでさえ子供でも純粋ではなくなってきているのだから。

・センチメンタルな…  ★★★☆

 この曲はゲーム『サクラ大戦3』の挿入歌だ。ただ、『君偲ぶ歌』と同様唄われている箇所は不明(曲は使用されている)。異国の地に降り立った愛しい人を想うセンチな感情を抑えている感じを、見事に曲に反映させている。

・心の置き場所  ★★★★

 この曲もゲーム『サクラ大戦3』の挿入歌だ。不明な点も同じ。前奏でのピアノソロも良いが、やはり二人のハーモニーも素晴らしい。『輝き』の時と違ってレニの声はかすれていなかったし。

・美しきものたちよ  ★★★☆

 この曲は歌謡ショウ『海神別荘』の挿入歌だ。アレンジが随所に施されてまた違った趣がある。薔薇組のタキシードもある意味見物。

・カモナ浅草(ショートバージョン)  ★★★★

 この曲は歌謡ショウ『紅蜥蜴』の挿入歌で、相変わらずダンスフルなナンバーだ。さてどこが短くなったかというと‥‥ちゃんと聴いていないと判らないと思うが、コーラス部分とそれに続くさくらパートがそれぞれ半分になっている。実はこの部分からラストまでがお気に入りなので、7分もある中のたかが20秒程を何故削るのか?と疑問に思う。

・私の夏  ★★★☆

 この曲も歌謡ショウ『紅蜥蜴』の挿入歌だ。新春歌謡ショウなのに、薔薇組を含め完全に夏バージョン。季節を先取りしていると言うべきか、季節遅れと言うべきか。

・夏が来た  ★★★

 この曲は発売予定の第五期ドラマCDの「 あぁ、無情。〜レ・ミゼラブル〜(前編)」の挿入歌だ。かえでは「季節を先取りしすぎた」とこぼしているが、実際このドラマCDが発売したのは春休みのことで、その時点でも先取りしすぎている。因みに歌の出来は兎も角、この曲の必要性については物議を醸し出している。

・春が来る  ★★★★☆

 この曲も歌謡ショウ『つばさ』の挿入歌だ。あのときの『南風GOGO』との競演も良かったが、七人が奏でるハーモニーも絶賛!しかし、それ以上の出来のものを次回魅せられてしまうとは、このときは夢にも思わなかった。

・君よ花よ(ショートバージョン)  ★★★★☆

 この曲はゲーム『サクラ大戦3』の挿入歌だ。さすがサクラ大戦の集大成を締めくくる曲だけあって素晴らしい出来だ。しかもオープニング(『檄!帝〜最終章〜』)と共に、今まで全くと言っていい程、歌にスポットライトを浴びていなかった大神が、メインをはるという大挙を成し遂げた。まさに陶山章央、一世一代の晴れ舞台と言ったところか。まぁ当然、もっともっと頑張っていただかなければいけないが。
 しかし、苦言もある。すみれの代わりにかえでが唄っているのは仕方がないとして、やはり、ここは巴里組を担ぎ出して欲しかった。もしそれが叶うなら、さぞかし圧巻であったろう事は想像に難くない。
 

・グランドフィナーレ  ★★★

挿入歌‥‥ゲキテイ(檄!帝国華撃団)
BGM‥‥花のように夢のように

 ここは良くも悪くもいつも通りだ。
 千秋楽ではかえでは戦闘服姿で登場する。さらにBGMに『夢見ていよう』が追加。

・総評

 お笑い劇団と化した、と言い放っているが、既に田中真弓を抱えて舞台をやろうとした時点で、その宿命からは逃れられないのではないだろうか。第二部はヒットパレードのみの構成ということもあり、全体的にも少々短めの舞台となった。だが、見応えは十分ある。大ボリュームになった花組カメラの40分を含む特典映像も合計90分になった。
 最後に、この歌謡ショウは今のところ唯一大阪公演が興行できたショウである。いくらキャストや部材を流用しても、運搬費や交通費や労力を考えるとメリットは少ないと思ったのだろう。それにサクラ大戦は帝都(東京)の物語だし。それに心斎橋の太正浪漫堂が閉店に追い込まれるなど今ひとつだったのだろう。それになんと言ってもキャストの負担が大きくなることで、またメインキャストが脱落する可能性も危惧したのだろう。しかし、それでも地方公演は意義があると私は思う。裾野を広げるためにも。確かに夏公演は大道具も多く大変だろうが、新春公演ならどうにかなると思う、この回のショウのように。

曲数‥‥17曲