帝国歌劇団・花組 スーパー歌謡ショウ『新宝島』/短評

 さて、『愛ゆえに』と同じ内容になるが、出来るだけ客観にするつもりだが、先に書いておく、独り善がりの短評になろう事を。また、普通によい点などは敢えて書かないので、批評が多くなりそうだが、それに対する苦情のメールは一切受け付けないので念のため。
 尚、星マーク(最高五ツ星)は点数ではなく、単なる目安。☆は★の半個分。
 追記。星の数は全体を見て割り出しているつもりだが、どうやら歌に思った以上に重きを置いていることが判明。でも軌道修正はしない。

◆第一幕 子供はいつ大人になるの?

・1,オープニング  ★★★★

挿入歌‥‥七色の虹

 レビュー服は最多出場中の『紅蜥蜴』に初お披露目したマゼンタとブルーの衣装だ。この服は私もお気に入りだから、何回使用されても構わないのだが、たまには『つばさ』の時のシルバーのレビュー服も魅せて欲しいものだ。曲も第二幕も意識したファンタジックさも出した軽快な曲に、“七色の虹”=“光り輝く花組”を客席に届ける振り付けも相俟っていきなり最高潮に!
 幕間では無駄に良い声の団長率いるダンディー団が登場。ここで当に副題にある「子供はいつ大人になるのか」という疑問を投げかける。話の内容は小っ恥ずかしい限りなのだが、こちらが「恥ずかしっ」と思う暇なく話が展開していくので、三人の掛合の妙のなせる技だ。尚、この小さな疑問がやがて大きな波紋を投げかけることとなる。

・2,長屋1  ★★★★

挿入歌‥‥夏の街角

 初の組み合わせでアイリスと織姫が少しタイミングの難しい掛合の曲を歌い上げる。金縛りなどの舞台演出でも盛り上げるなど、ただ、歌の間に日が暮れて夜が明ける当のはあまりにも早すぎ。(くれぐれもツッコミを入れないように!)
 二人がうなぎ屋に入ると今度はそこでいよいよ「子供はいつ大人になるのか」の大論争が勃発する。最初に奉られるのは金田だが、答えると言うよりも言葉遊びに終始した後、退散。そのあとを江戸川が引き継ぐが‥‥。
 幕間はさくらとマリア。どうやらテーマが2つあるらしく、ここでも「大人」と「言葉遊び」が取り上げられている。蛇足だが、ここで横山智佐は早口で滑舌の良いところを披露している。4秒強で51音を発声している。発声するだけなら出来そうだが、滑舌よくとなるとなかなか難しいだろう。

・3,長屋2  ★★★☆

 幕間の薔薇組からつづく。江戸川からは“しものけ”だとの考察を得るが、「お下品」と言う理由で却下に。ここで千葉助が登場するも、言葉遊びに拍車を掛けただけ。武田が元に戻そうとするも西村が再び脱線させるなど、普段とは違う役所も見逃せないポイント。因みに千葉助の考えは「一丁前に稼ぐこと」だ。
 幕間は紅蘭とレニ他。物を食う役は普段はカンナだが、今回は紅蘭とレニが担当している。しかし、物は吉備団子と極めて難易度が低い。と思いきや千秋楽では大福が待っていた。さすがにあれをねじ伏せるのはカンナしかいまい。

・4,長屋3  ★★★★

挿入歌‥‥サンセットサマー

 結局のところマリアが「愛の意味を知った時」と言いきる。が、新春歌謡ショウ程でないにしろ、マリア様、少しイっちゃってます。
 幕間は雲国斎とさくら。ストーリー的にはあまり関係ないとはいえ、幕間の殺風景な中での歌は少し勿体ない。逆にそこに集中させるという効果と、初めてのパターンに期待させるはあるが。

・5,大帝国劇場稽古場  ★★★★☆

挿入歌‥‥予習復習メモ書き勉強
     ヨーデル妄想(カンナの妄想)
     海賊稼業(一部)
BGM‥‥ダンディー
     心は砂漠のように
     ゲキテイ(檄!帝国華撃団)

 今まで歌謡ショウの歌指導だった横山美奈(役名横山それ子)がカンナとの言い合いやオペラ披露で存在感を大きくアピール。それにしてもそれ子まで担ぎ出すとはカンナではないが本当に「よっぽど人手不足」なのか。まぁ、実際には第二幕の配役が多いというのが原因なのだが。
 「ごめんなさいと言える」が大人になった証拠だというかえでに感銘を受ける団耕助。しかし、子分によりマリアの言葉を採用することに。また、「何故子供は大人にならなくちゃいけないのか。」に関しては、かえでが見解を述べているが、第二幕でもこの言葉は生きている。
 今までのカンナの妄想は笑われる対象だったのだが、今回は「可愛い♪」路線だ。おちゃらけ部分も満載だが、ヨーデルも唄える歌唱力はやはり凄い。
 最後の最後で皆がバラバラに芸や踊りをしているのを見て何事かと最初は思ったが、その意味を知ってしまえばなんて事はない。しかし一回しか見ない人には永遠に解けない謎だろう。

◆三分間ショッピング&前説

 とうとうさくらの悪徳商法の顔が滲み出た。「ねっ!」って面と向かって言われると、財布の紐が緩んでしまうってもんだ。

◆第二幕 新宝島

・1,オープニング  ★★★★☆

挿入歌‥‥これから始まる物語
     トランプの裏表

 初っ端からマリア(ジョン・シルバー)が格好良い。もうどっからどう見てもはまり役だ。もしこれを見てマリアのファンになったのなら、絶対に花組カメラを見てはダメだ。あれは間違いなく諸刃の剣なのだから。
 一方のレニ(トランプの騎士)も可愛らしく歌い上げる。ちょっと力が入りすぎた感はあるが、マリアと入れ替わりの幕引きや、紅蘭にトランプ金貨を与えたり、ダンサーとの息のあったダンスを舞台いっぱいに飛び回って披露するなど、世界に吸い込まれてしまった。

・2,ロンドンの街  ★★★★☆

挿入歌‥‥ラッキーなロンドン
     勇気リンリン

 ロンドンの街ではえげつない程の登場人物がいる。ここまでミュージカルをされると感動すら覚える。かえで(市長トリローニ)以外はメイン役が他にある(かえで自身も二役)。この場面に登場しなかったのはレニとカンナぐらいだが、そのレニも先のトランプの騎士があるから出ることが困難だ。逆にシルバー役のマリア(ここでは乞食役)が出ている方が不思議だ。あんな格好をしてまで出ようとは‥‥。因みにカンナがここで登場しなかったのは他に二役あるからだと思われる。
 立て続けに手袋三銃士(アイリス・西村・ベロ)が土管の周りで王国を作る可愛い曲を披露する。武田は兎も角、西村も引きずり込まれるとは。しかもハリセンで叩かれっぱなしだし。まぁ、薔薇組のファンと暴露された時点で既に何らかの際物(?)をやらされることは時間の問題だったかも知れないが。

・3,港  ★★★★

挿入歌‥‥子供の夢は(ショートバージョン)

 なんと言えばいいのか‥‥やはりマリアは格好良い。シルバーはジムに説いたことは、ほとんどの大人は子供だった頃の夢などを思い出されるだろう。だがやはり現実的に今の生活を変えることは出来ない。そんなジレンマに襲われもするが、新宝島の世界からは抜けられない=夢の世界は続く。

・4,船  ★★★☆

挿入歌‥‥うそつきオオム
     海の女王(ショートバージョン)

 一見のオオムと思っていたが、ここでも伏線が張られている。この伏線はあとから「アレっ」と思うことはないと思うが、今回は特に多いと感じられる。良い役貰ったよ丘菊之丞。
 そうこうするうちに織姫(南海の魔女)が登場するが、結構怖いよ。おまけに徹底的に悪役に徹しているので怖さ倍増。そりゃ子供が泣き喚くわな。

・5,遭難  ★★★☆

挿入歌‥‥笑って死ね
     大ダコの唄
     流れる

 ここのメインはやはり金田(赤タコ)とカンナ(赤鮫)。自ら「話(ストーリー)に関係ない」とか「(赤鮫は)2年前のキャラクタ」等暴露をした挙げ句、マイクと照明を消されるという事態に見舞われる。
 琴音(流木)がさらっと言いのけた「テーマは一致団結よ」も伏線に。

・6,海賊の隠れ家  ★★★★

挿入歌‥‥海賊稼業

 折角第一幕で練習していた三連符は無視されたようだけど、結局このリズムの方がこの曲にあっているので、良しとしよう。ところで大帝国劇場稽古場で皆がバラバラに稽古している旨を書いたが、あれをちゃんと見ていないと、海賊の中に西村と武田が居ることには気が付かないだろう。 

・7,ジャングル  ★★★★☆

挿入歌‥‥野生の雄叫び
     赤ワニダンス
BGM‥‥嵐

 『カモナ浅草』に並ぶダンスフルナンバー。激しさは互角だが、難易度は間違いなくこちらの方が上。さくら(タイガーチェリー)のバク転も勿論見所だが、最初から最後まで目移りしてしまうダンスで、飽きがない。ジムがいつ登場したのかさえ見逃す程に。しかし会話は世間知らずな上、道案内もぞんざいだ。ところで、アイリス(しまうま)がホルスタインに見えたのは私だけだろうか。(失礼極まりない発言)
 赤ワニの場面は完全に箸休め(緩和)の状態だが、今後の展開も考えればここで一服するのも悪くない。蛇足だが、大神だけ唯一3役の出番がある。

・8,南海の洞窟  ★★★★

挿入歌‥‥海の女王(一部)

 会場の観客の声を合わせて南海の魔女を倒すというアイデアは、当に6年間ファンと共に歩んだ実績が実を結んだ結果だ。レニは歌の間以外一切しゃべっていないし、二役もやっていないし、登場時間も短くと、そこだけを見れば今ひとつだが、最初にインパクトを与え、途中で2度登場するなど、インパクトは十分ある。
 ここら辺から紅蘭が少し芝居くさくなってくるが、これは“男の子”を強調するためと思われる。
 あまり目立たないところだが、フライング装置をジムから南海の魔女に上手いこと引き継いでいる。
 ビリーは南海の魔女とは違い悪人に徹しれなかった。最後には“伸び伸びアーム”を繰り出すし。田中真弓・田中公平・海賊王ということでこの技を使ったんだろうが‥‥。

・9,本当の宝  ★★★★★

挿入歌‥‥宝島 〜勇気の旗を〜

 宝を見つけた結果を知るシルバーは、ジムに本当の宝とは何かを説く。フィナーレの『宝島』はどう書けばいいのだろう。胸が熱くなり、こみ上げてくるものがあり、嗚咽を漏らしそうになる。しかし、その理由が解らないのだ。何故感動しているのかが解らないのだ。

・グランドフィナーレ  ★★★★

挿入歌‥‥七色の虹(一部)
     ゲキテイ(檄!帝国華撃団)
BGM‥‥花咲く乙女

 いつも通りといえばいつも通りだが、『愛ゆえに』の実に3倍にも膨れ上がって、51人となるとさすがに圧巻だ。グランドフィナーレの割には少々あっさりと終わった感じだが、第二幕で腹一杯になったので、敢えて喰わす必要もないということだろう。

・総評

 今回は兎に角登場人物が多くて場面展開も多い。これだけ目まぐるしくてもちゃんと追っかけられたのは脚本の妙だろう。もし、昔読んだ『宝島』がこれだけ解りやすい物語だったら、もっと楽しく読めただろうし、内容も覚えているはず。(読書感想文のために読んだことがあるが、内容を全く覚えていない)
 紅蘭は初の主役にして、サクラの歌謡ショウ史上飛び抜けて出番が多く、二幕で出ずっぱりで大変であったろう事は想像に難くない。
 歌謡ショウを初めて見る人にも、サクラを知らない人にもそれなりに楽しめるので、私は強くお薦めしたい。
 尚、今回の特典映像は花組カメラの大幅増量70分に加え、サクラ祭り72分など計3時間40分と、本編3時間10分を凌ぐボリュームだ。

曲数‥‥20曲

 

・おまけ 主な登場人物

役者名 役名 劇中劇 ロンドン
横山智佐 真宮寺さくら タイガーチェリー 貧乏人の娘
高乃 麗 マリア・タチバナ ジョン・シルバー 乞食
田中真弓 桐島カンナ 海賊王ビリー 赤鮫くん
西原久美子 イリス・シャトーブリアン しまうま 手袋三銃士
(エリス・チェンバレン)
渕崎ゆり子 李紅蘭 ジム・ホーキンス  
岡本麻弥 ソレッタ・織姫 南海の魔女 金持ちの娘
伊倉一恵 レニ・ミルヒシュトラーセ トランプの騎士  
折笠 愛 藤枝かえで 海賊主任 市長トリローニ
陶山章央 大神一郎 赤ワニくん2号/海賊新入り 貧乏人
中嶋聡彦 中嶋親方 船員1(ジークフリード) 金持ち
矢尾一樹 清流院琴音 流木 貧乏人
松野太紀 丘 菊之丞 うそつきオオム
(ヤコペッティ・ホーヘンバードJr.)
貧乏人
園岡新太郎 団 耕助 赤ワニくん1号 金持ち
西村陽一 西村ヤン太郎 海賊団員 手袋三銃士
(ディビット・ハードコート)
武田滋裕 ベロムーチョ武田 海賊団員 手袋三銃士
(JDフロックハート)
千葉 繁 千葉助 ラッキーマン  
国本武春 東中軒雲国斎   黒紳士(船主)
螢 雪次朗 金田金四郎 赤ダコ 警官
三ツ矢雄二 江戸川夢声 陽気なドクロ男 成金
横山美奈 横道それ子 陽気なドクロ女 金持ち
山沢のり 女学生 赤ワニくん3号  
渋谷玲子   赤ワニくん4号/海賊  
塚田知紀   船員2(コンスタンチノーブル) 召使い