サクラ大戦歌謡ショウ・五周年記念公演『海神別荘』/短評
さて、『愛ゆえに』と同じ内容になるが、出来るだけ客観にするつもりだが、先に書いておく、独り善がりの短評になろう事を。また、普通によい点などは敢えて書かないので、批評が多くなりそうだが、それに対する苦情のメールは一切受け付けないので念のため。
尚、星マーク(最高五ツ星)は点数ではなく、単なる目安。☆は★の半個分。
追記。星の数は全体を見て割り出しているつもりだが、どうやら歌に思った以上に重きを置いていることが判明。でも軌道修正はしない。
・オープニング 花組レビュウ ★★★★☆
挿入歌‥‥花組レビュウ
いやぁ、まいった。五周年記念公演だけあって初っ端から力が入っている。オーケストラピットが舞台の中になったことにより、早速その効果を発揮している。だがそれにより、より一層出演者と客席に距離が出来てしまう、というデメリットも抱えてしまうことになる。やはり高い切符を買った最前列から10メートルも離れているのは‥‥オケピがある以上宿命なのだが。
尚、今回のレビュー服は『紅蜥蜴』の時に使用した服にアレンジを施したようだ。
・序幕 「程度街角にて」 ★★★☆
挿入歌‥‥バスは行く行く夢乗せて(ショートバージョン)
景色の幕がいったん開くが、恐らくその裏では暗転作業をしているのだろう。繋ぎの話としてはまずまずの出来。しかし、かえではデュエットなどを含めてだが毎回持ち歌を貰っているし、花組メンバーとたいして待遇が変わらないような気がする。というより名目だけで、副支配人としての自覚も役回りもないようだ。それにしても、相変わらず園岡新太郎は良い声だ。
・第一幕 「寺島町隅田提下、見返り稲荷前」1 ★★★★
挿入歌‥‥物語のはじまり
主要人物‥‥織姫・レニ・武田・松吉
舞台導入部分をそのまま歌にした『物語のはじまり』アカペラでの歌い出しと掛合が良かったのだが、如何せん曲自体が短く、完全に舞台のための曲と言うこともあり、『新・歌謡全集III』には収録されていない。
なにげに、迎え火(お盆)の勉強にもなる。
・第一幕 「寺島町隅田提下、見返り稲荷前」2 ★★★☆
挿入歌‥‥考える足
主要人物‥‥さくら・マリア・アイリス・紅蘭・カンナ
唄うまでは常識をみせていたカンナだが、ひとりになった途端、ひとり芝居をした挙げ句に悪魔に魂を売ってしまう。←大げさな!と思うが、これが大騒動の発端になる。当にこれがレニの言う「物語の始まりはいつもいい加減」だ。
・第一幕 「寺島町隅田提下、見返り稲荷前」3 ★★★
挿入歌‥‥美しきものたちよ
主要人物‥‥すみれ・白きつね・大神・西村・薔薇組
またもや奇妙な組み合わせのユニット。しかし、見方を変えれば西村のファンは薔薇組なので、西村の願いが叶ったということで。
・第一幕 「寺島町隅田提下、見返り稲荷前」〜「湯河原温泉一室」 ★★
主要人物‥‥親方・かえで・金田・ボス・武田・松吉
温泉組は忘れられないよう、ちょっとだけ登場。
・第一幕 「寺島町隅田提下、見返り稲荷前」4 ★★☆
挿入歌‥‥ラムネの歌(ショートバージョン)
主要人物‥‥西村・アイリス
・第一幕 「寺島町隅田提下、見返り稲荷前」5 ★★★☆
挿入歌‥‥怪人デベソ
主要人物‥‥さくら・一馬・カンナ・マリア・薔薇組
一馬、ここでまさかの登場。
しかし、もっと驚いたのはカンナの妄想の毒牙にマリアがかかってしまったことだ。カンナ自体が「いくら五周年だからって良いのかなぁ」と言わせるくらいの出来だ。しかしマリアよ、あなたが暴走しだしたら誰がカンナを止めるのだ。
・第一幕 「寺島町隅田提下、見返り稲荷前」6 ★★★
挿入歌‥‥幸せな夢
主要人物‥‥大神・花組・白きつね・薔薇組
白狐の怒りとお守り騒動が解決。軽々と巨体のカンナを胴上げする手下の腕力に注目。
・第一幕 「寺島町隅田提下、見返り稲荷前」7 ★★☆
BGM‥‥ゲキテイ
主要人物‥‥花組・大神・武田・松吉
盛り上がりに欠けたのを補うために、歌謡ショウ初の「勝利のポーズ」を発動。今回は一幕通じて(温泉を除き)同じ場所を舞台にしたが、ストーリーの幅は狭まっていなかった。
・第一幕 エピローグ ★★★★
挿入歌‥‥口ずさむ歌(歌謡ショウバージョン)
2番がない代わりにサビが3回繰り返され、花組+かえでが合唱する。
最後に久々の伝言ゲームが。「アンジェラスでお茶しましょう」が徐々に変化し、アンカーのさくらが「便所アブラ虫」よりもストレートに羞じらいもなく(?)変換する。
・幕間 ★★★
BGM‥‥五周年記念御礼「花組祝太鼓」
むさ苦しい野郎共が浴衣で勢揃い。何気にミニライブショウ(つまるところ、サクラ大戦3)に触れている。
太鼓祭りは思ったよりも丁寧に作られていた。
ところで、白きつねはトリプルキャストで行われていたのだが、劇中のアイリスとのやり取りや段ボールなどは、他の役者の時はどのような台本だったのだろうか。
・第二幕 劇中劇『海神別荘』−泉鏡花原作より−
・青玉殿1 ★★★★
挿入歌‥‥海の宴 花の宴
主要人物‥‥かえで・アイリス・織り姫・親方・マリア
見た目にもすぐに竜宮城を思わせる衣装に舞。特に腰元の3人の振り袖は他の踊り子とは違い、それぞれキャラクターのカラーを多めに使うという気配りもしている。
マリア扮する公子は、陸の常識には疎いが、海の常識は持ち合わせているようで、海底人からの信頼も厚く、これにより客席からのイメージも変わる。(この設定を語っていないと、人からの目線になり、悪者だとイメージされるだろう)
沖の僧都は現代語りではないため、ライブで聴く分には完全に理解できないだろう。もっとも、明治・大正の原文書物を愛読している方なら造作もないことだろうが。
・海中 ★★★☆
挿入歌‥‥夜の海月
主要人物‥‥さくら・すみれ・レニ
ストーリー自体少し難しいのに言葉遣いも難しいので、当方にとってとてもハードルが高い。くらげなども前フリが利いている等、レベルを下げる努力も見受けられるのだけれども。歌は海中を漂うようにそして海底に沈むように唄われている。聴き方にもよるだろうが、個人的には悲壮感が漂うが、人によっては希望に向かっていると捉える方もいるだろう。
・青玉殿2 ★★★★
挿入歌‥‥この書物は
主要人物‥‥かえで・アイリス・織り姫・親方・マリア・紅蘭
舞台のイメージとは少し気色の異なる歌だが、けっこうはまってしまった。歌詞そのものは原作から当てはめていることから、少し何回ではありますが、意外にもすらすらと唄えてしまう妙がある。
博士に市中引き回しの刑について言及を求めるが、やはりここでも陸任海との常識の違いを理解できずにいる。
・青玉殿3 ★★★★
挿入歌‥‥赤鮫クンいらっしゃい
主要人物‥‥カンナ・薔薇組・マリア・親方・レニ 他
開口一番「この上品な空気をぶち壊す」と宣誓した赤鮫の親分。股間部にある薔薇組の赤鮫といい、コマネチといい、ひとり別世界を作っている。それは青玉殿での殺陣もその勢いで突っ走る。いったい何処まで暴走する気だ、田中真弓!
・青玉殿4 ★★★☆
主要人物‥‥マリア・さくら・すみれ 他
人間の業が晒される場面。美女(さくら)を諭す公子だが、美女は里に戻ってしまう。
浪曲はあらすじにまとめるために効果的に使用されている。
・青玉殿5 ★★★☆
挿入歌‥‥すべては海へ
主要人物‥‥マリア・さくら・すみれ・レニ
歌は心に響く素晴らしいものであった。だが、結末はどういうふうに解釈して良いのだろうか?物語が消化不良なのか、私の理解力が足りないだけなのだろうか‥‥。
それにしてもさくらが一番上に纏っていた白い着物にはいったいどのような意味があるのだろうか。ただでさえ着込んでいる分だけでも重たいのに、あれは結構大変だったはずだ。
・グランドレビュー ★★★★☆
挿入歌‥‥花組レビュウ(歌謡ショウバージョン)
ゲキテイ(檄!帝国華撃団)
BGM‥‥花組レビュウ
過去最高の22人のダンサーは圧巻。2分半と少し短かったが、繋ぎとしては十分すぎる。
『花組レビュウ』はアンコールでもないのに2度目。まぁ、歌の完成度からしても、もう一度聴く価値は十二分にあるし、グランドレビューとしても申し分ない。尚、このシーンの衣装はレビュー服ではなく、キャラの衣装だ。
・総評
今回のショウは場面展開が少ないが、だからといって手を抜いているわけではない。劇中劇の衣装も赤鮫を除けば豪華だし、大道具・小道具もいつも以上に丁寧に作られている。浪曲を取り入れるなど新たな世界観を開拓することも大事だが、帝国華劇団は近代的でモダンな舞台を作るものだと思っているので、明冶やそれ以前の世界観は控えていただきたいというのが個人的な気持ちだ。但し、西洋を題材にしたものは別だということを付け加えておく。
さすがに5回+αの公演を行っただけあって、使い続けている衣装にもダメージが見受けられる。武田ではないけど、ここまで続くとは思っていなかった。浅いながらも歴史を感じる。
曲数‥‥15曲