FZシリーズ情報集積所 FZ5でISO400で撮影した時に彩度が落ちる問題

 この度、FZ5でISO感度を上げて撮影した時に、暗い部分の彩度が極端に落ち色が正常に再現できないという問題が韓国のユーザーから提起され、その現象が個体不良ではないことが確認できたので、このページで詳しく検証してみたいと思います。
現象
 まず、下の写真をご覧下さい。FZ5でそれぞれISO80、ISO100、ISO200、ISO400で撮影したものです。ISO400の写真の右側の赤色が明らかに茶色に変色してしまっています(画像をクリックすると大きいサイズのファイルが見られます)。
ISO80 ISO100
ISO200 ISO400
 しかし、上の写真をよく見ると、同じ赤色でも左側の赤色には変色は見られず右側の赤色だけが変色していることがわかります。では次の写真をご覧下さい。
ISO100 ISO400
 陰になっている部分では変色が赤色に限らず全ての色で起こっていることがわかります。さらに下の写真をご覧下さい。影になっている部分をスポットで測光して撮影したものです。上の写真で色が変色してしまっている部分が下の写真では変色していません。
ISO100 ISO400
 ここからわかることは、明るい部分にある色は変色せず、暗い部分の色だけが変色するということです。ここまでをまとめると、ISO400で撮影した時に暗部の彩度が極端に落ち正常に色を再現できないということがおわかりいただけると思います。
原因
 まずは韓国のユーザーに届いた日本のパナソニックのユーザーサポートの回答をご紹介します。
ISO400時にはISO感度アップに伴って発生する色ノイズを押さえるための処理をおこなっております。お問い合わせのDMC-FZ20よりも、DMC-FZ5ではISO400の色のノイズを押さえるために意図的に画作りをしておりますので、ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 つまり、ISO400時の暗部の色ノイズを押さえるために、ノイズ成分も本来の色も一緒くたにして彩度を落とすことでノイズを目立たなくしているのが原因だと考えられます。また、FZ20とFZ5では違う絵作りをしているとあるように、後述しますがFZ20ではこのような現象は起こらず、FZ5のみの現象です。確かにFZ5の公式サイトには以下のような記述がありますが、同様の記述はFZ20のページにもあり、考え方としては同じ処理をしているはずです。しかし、結果が違うことから考えて、ノイズ処理を強めた結果出てしまった副作用だと推察できます。実際にFZ5とFZ20のノイズを比較すると、わずかですがFZ5の方が少ないようです。
画像の明るさに応じてノイズリダクションの量をコントロールする新NRシステムを新採用。明るい部分の解像度を損なうことなく、暗い部分(シャドウ)に出やすいノイズを、最大約1/3に減らしました。シャドウ部が引き締まって、深みのある画像を生み出します。(このページから引用)
個体不良ではない
 上記のパナソニックからの回答を見てもわかるとおり、この現象は問題を提起してくれたユーザーの個体の不良ではありません。海外の有名なレビューサイトに掲載されている写真にも同様の現象が見受けられます。FZ20よりもFZ5の方がノイズが若干少ないことと暗部の彩度が落ちていることが確認できます。
steve's digicamFZ5のサンプル写真ISO400の写真FZ20のサンプル写真ISO400の写真(ポスターに写っている灯台の下の建物の屋根)
dpreviewISO400のFZ5とFZ20との画質比較のページ・・・FZ5の写真FZ20の写真(右下の方の地球儀の脚の辺り)
ISO感度を上げずに露出補正するとどうなるか
 明るさが十分ではない時にシャッタースピードを確保するためにISO感度を上げるわけですが、マイナスの露出補正をすることでもシャッタースピードを上げることができます。ここではISO感度を上げる代わりに露出補正をしたらどうなるのかを検証してみます。まずは以下の写真をご覧下さい。
ISO100、-1EV ISO100、-2EV
それぞれISO100を-1EV、-2EV補正して撮ったものです。露出補正しているので全体的に暗くなっています。レベル補正を行って適切な明るさにレタッチした写真をご覧下さい。比較としてISO400-1EVで彩度が落ちてしまった写真もご覧下さい。
ISO100、-2EV、レタッチ後 ISO400、-1EV、レタッチ後
ISO100で撮影した写真は露出補正を-2EVしても暗部の彩度はほとんど落ちていません。一方のISO400の方は-1EVでも暗部の彩度が落ちてしまっています。靴などが茶色くなっています。
この現象を少しでも回避するために
 上述したように、この現象を回避するためには、ISO感度を上げるのではなく露出補正を行ってみてください。そうすれば暗部の彩度を落とさずにシャッタースピードを確保することが出来ます。ただし、露出補正を行うと、写真全体が暗くなってしまいますので、後でレタッチで明るく補正してやる必要があります。同じ絞り値の場合、ISO100、-2EVとISO400、±0EVとではシャッタースピードが同じになります。
 もう一つの方法は、ISO400で撮影せざるを得ない場合、暗部をスポット測光して暗部を暗部でなくしてしまう方法です(上記3段目の写真参照)。ただし、この場合写真全体が露出オーバーになってしまう可能性があります。白飛びしてしまうとレタッチで色を取り戻すことは出来ません。
 暗部の面積が大きく変色が目だってしまうような場合は上記のような対策を考える必要がありそうです。暗部の面積が小さく変色が目立たないような場合は、気にすることはないかもしれません。
FZ20についての検証
FZ20でも同様のテストをしてみました。以下がISO80からISO400までの写真です。
ISO80 ISO100
ISO200 ISO400
以下は、明るいところと暗いところを含む部分のピクセル当倍切り出し写真です。
ISO80 ISO100
ISO200 ISO400
最後に、ISO400の写真をNeatImageでノイズ除去した写真です。
ISO400、NeatImageでノイズ除去 そのピクセル当倍切り出し写真
 これらを見ると、FZ5のような現象は発生しておらず、FZ5に比べてわずかにノイズが多いかもしれませんが、レタッチによって適切なノイズ除去処理を行えば、むしろ好ましい結果を得ることが出来ています。
私の考え
 FZ5とFZ20のノイズ処理の違いが明らかになりましたが、どちらが好ましいかというと私はFZ20の処理の方が好ましいと思います。なぜなら一度失われてしまった彩度を取り戻すことは優秀なレタッチソフトを使ってもほとんど不可能だからです。逆に少しくらいノイズが多くても、優秀なノイズ処理ソフト(しかも無料)によって簡単に処理ができてしまいます。FZ5の処理は、わずかな効果と引き換えに大きな副作用をもたらしているとしか思えません。とはいえ、発売されてから4ヶ月経って初めてこの問題が指摘されたことから考えて、多くのユーザーにとってはISO400で撮影するという機会自体が少なく影響の及ばない問題かもしれません。
 今回のメーカーからの回答では「仕様」ということだそうですが、今後発表される機種が同様の考え方でノイズ処理がなされ同様の結果になるのだとしたら、私としてはごめんです。室内スポーツなどではISO400は多用しますから。次期FZ30などのことを考えると不安です。
 おそらくこの問題は、ソフト的な問題だと思われるので、ファームウェアによる改善は不可能ではないと思います。過去にパナソニックはファームウェアによる機能改善を行ったことがありませんが、ここは是非対処して欲しいと思います。来年に控えているデジタル一眼レフの発売に備えて、ファームアップの実績を作っておくことも決して無駄にはならないと思います。
謝辞
 この問題を提起して下さり、このページ作成に当たってテスト撮影などに多大なご協力いただいたirukaさんにこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
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2005/6/23作成