だから、と唐突に少年は切り出した。




 ++ 殺すか殺されるか ++




 俺のお願い聞いてくれない?なに、大したことじゃないよ。アンタならそれこそ一瞬で成し遂げてしまうよーな些細な可愛いお願い事ってやつ。要するにさぁ、俺のこと、アンタ殺してくれない?や、まぁ聞きなよ。だってね、俺とアルの望みが叶ったら、俺もう生きてく気ねぇから。つか、あの時死んでんのが俺だったら何の問題もなかった訳だしぃ。したらさぁ、こーして出来そこないで生き損ないな逝き損ないの見苦しい姿晒して地べた這いずり回ったりしてねぇよ。何もかも全部が全部、あの時俺じゃなくてアル連れてったあの野郎のせいで、そしてその現実に耐え切れなかった俺のせい。はは。俺何で生きてんだろね。生きてんのが楽しいけど生きてんのが拷問だろーね。俺1人の感慨じゃない?んな事判ってるってのAll right,All right.判っちゃいるけどさーぁ?でも、アルがいるから?俺自殺する気はねぇの。アルを言い訳にまだまだしぶとく生き恥撒き散らすよ、俺。でも、事故とか他の第三者とか?ってのも嫌。だって俺のこーゆー訳判らねぇ衝動一切無視しやがんだぜ?むかつく。だからー、アンタしかいないじゃん。アルの身体を取り戻すことだけが俺の生きてる理由ですー。だからそれが叶ったその瞬間には、俺、アンタに殺されてぇの。長年の望みが現実になった幸福に酔いながら、俺はお別れ言いたいの。前に俺言ったよね。テメェより先にゃ死にませんって。それはそーよ。俺、アンタ以外を死因にする気ねぇから。だからアンタは俺を殺して。その青い焔で、この身体の一片たりとも残さず蒸発させて。ねぇいーだろ、そーしてよ。アンタにゃその力もあんだし、何より被害者が依頼人よ?何もかも骨すら残さずに、俺の存在した証拠全てを掻き消すように、アンタなら。


 金に祝福された少年はほわほわと幸せそうに殺伐と笑む。


 何、馬鹿な事言ってるんだ?はは、そーだよ今ごろ気づいたの。俺馬鹿だよ。馬鹿も馬鹿、大馬鹿だね。世界ランキングつけても上位入賞間違いなしな俺みてぇな馬鹿だから、今こんなことになってんの。知ってるくせに。知ってたくせに。何もかも承知の上で俺の首に輪っか嵌めたの誰だった?でもって俺も知ってるよ。アンタ、俺をそんな風に殺せねぇだろ?何よりも自分の焔で、俺を殺したくないでしょ?だからアンタは詰めが甘いってんだよ。俺だって死ぬんだよ?何か夢でも見てるの?俺だってね、いつかは。いつかは、さ。あは、馬鹿だね。アンタその指先でどれだけの人を消したの。覚えてる。覚えてない。数え切れないでしょ。だってアンタが殺したのは個々人じゃなくて集団だものね! 塊潰すにゃ、アンタのそれは最適だ。アンタがかつて灰にした人間は、きっと俺だよ?そうやって縋るみたいに見ないでくれる?本当に、アンタは馬鹿みたいな理想主義者だ。泥まみれだけど。血まみれだけど。俺よりよっぽど、綺麗な世界を見たがってるアンタだからこそ。判ってってけどでもやっぱ抗い難い魅力があるよ。だってさぁ、俺を焼き尽くしたら、アンタ絶対もう恋はしねぇだろ。つか、できねぇだろ。アンタはそーゆー人間だよね。馬鹿みたいに律儀だよ、アンタって奴は。だから皆アンタについてくんだろうね。俺もこうして結局アンタの背中を見てた。だからつい想像しちゃうわけ。その焔に限りなく近い温度の強い強い感情、ぶつけられた最後の人間になった俺。何にも囚われず何にも縛られず上だけを目的だけを目指して突き進むアンタに絡みつくのはあの人だけって決まりはないだろう?あぁそうですよこれは嫉妬。もう死者には俺が何したって敵わない。んなこと俺だって知ってるよ。ねぇだからだからだから、並んでみたらどうなるだろうって思うくらいは思春期として許されるんじゃね?


「……とりあえず」
「何」
「ピロートークに相応しい発言内容にするよう心がけてくれないか」
「コレ以上なく熱烈な愛の囁きだと思うんだけど」


 私は今だけは何も生まない右手で彼の戯言を塞いでやった。





>>>ロイエドロイ。
大豆大はこういうSSSの形が一番書きやすい。
段々と豆の電波度が上がっている気がするのは錯覚ではないような。

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