▽ happy wedding (side:E)
あぁ、もう。
心臓がいくつあっても足りやしない。
俺はまさにあつらわれたように身体にぴったりした純白のドレスをまとっていた。
胸元には派手ではないギャザーが入り、ふわりとしたAラインのスカートは小さな真珠が散りばめられている。
幾重ものヴェールで視界は多少遮られているが、己の姿がどうであるかくらいは判る。
あぁ、全く見事な夢だよ。
一体何だって、こんな夢見るんだ自分?結婚願望ないぞ?しかも俺花嫁かよ?
しかしそんな余裕も、新郎の隣に立つまでだった。
ちらりと見上げた先に、新郎の…弟の真摯な視線を見つけてしまい、俺は動揺して目を伏せた。
何時の間にか、自分よりも凛々しく逞しく育ってしまった弟。
上背も、腕力も、武術も彼の方が上。そして日常生活も隣人関係も全てそつなくこなしてしまう器用さをも併せ持った弟は、おそらく望めばどんな女性でも口説き落とせるだろう。いや、あいつから口説く必要もないくらいだ。
そんな弟が、いま真っ白のタキシードに身を包み、俺の隣に立っている。
いいのか?
お前の人生に、俺はそこまで関わっても?
数々の言葉が浮かんでは、言葉にならず消えていく。
ずるい男なんだ、俺は。
お前が笑って受け入れてくれることを知っていて、それでも聞きたいんだ。
何もかも、俺の上を行く弟。
俺が勝てるのは、錬金術師としての腕と、そして―――
お前に対する、この想いの大きさだけだよ。
『綺麗だね、兄さん』
唇の動きだけで彼がそう伝えてくるのに、俺は鼓動を抑えようと必死だった。
こいつは知っていてやっているんじゃなかろうか。
俺がこいつの言動1つに、どれだけ心乱されるのか。
あぁ、もう、早く。
夢なのだから。どうせ夢なのだから。
早く、早く。
この花嫁衣装と同じに、お前に染まりきってしまいたいんだ、と―――
「兄さん、顔を上げて?」
突然の彼からの呼びかけに、俺はびくりと身体を震わせた。もちろん、歓喜に。
おずおずと顔を上げると、静かに、まるで壊れ物を扱うような手つきで弟の手が、俺の視界にかかる靄を取り払っていく。
間近に迫る、雄々しい男の顔。
これが、俺の物になる。
ヴェールを上げられ、顔を晒された俺は目に愛情と信頼を込め、ゆっくりと目蓋を下ろした。
そ、と弟の手が頬にかかる。
彼の吐く息がかすかに感じられ、体温が空気を通しても伝わってくる―――
「大将!んなトコで寝てると風邪引くぞ!!」
「っ、うわぁっ!!?」
思いきりよく飛び起きた俺は、真っ先に心臓を落ち着かせようと大きく呼吸した。
あぁ、駄目だ。収まる様子もない。
「…大将、何やってんだ? 深呼吸?」
のん気に煙草をくゆらせているハボック少尉のその顔に、無性に俺は腹がたった。
どうして、あと10秒でいいから眠らせていてくれなかったんだ!!
「少尉の馬鹿!いいトコだったのに!!」
「はぁぁ!!?何だそりゃ!?」
八つ当たりなのは判ってるけど、一日くらい付き合え、馬鹿少尉!!
▽ happy wedding (side:R)
青の軍服ではなく白のタキシードをまとい、私は教会の祭壇前で神妙な面持をして立っていた。
パイプオルガンの重厚な音色が小さな教会に響き渡る。色とりどりのステンドグラスから差し込む色のついた光は、まさに晴れの日に相応しい。
私はここで、花嫁となる女性を待っているのだった。
とは言っても、私は彼女と親しく付き合っていたわけではない。いわゆる上に行くための戦略の一つとして、私は今日式を挙げ、そして輝かしい未来と永遠の墓場を手に入れるのである。
そういえば、彼女の顔も名前も、ろくに印象に残っていない。顔くらいは合わせているはずだが、何の印象もないとなると…ほどほどの美人、でしかないのだろう。どちらでも私にとっては変わりない。
背後に並ぶ長椅子には、新郎側新婦側の親戚友人知人が雁首揃えているはずである。私の腹心の部下たちも、おそらく慣れぬ礼服を着込んでしかめっ面をしているに違いない。
私の花嫁が私をどう思っているか。それはヴェールに覆われ軽く俯かれ、推察もできない。
しかしこれからの人生と共に歩む相手なればこそ、私は必要な礼儀は払って彼女に接して行こうじゃないか。
2人して誓いの言葉を述べ合い、そして小太りの神父は重々しく頷いた。
ふむ、基督教式の婚姻はなかなかに複雑な手続きがあるものだ。
「…では、2人の婚姻に異議ある者は」
「異議アリ!!!」
前に、という神父の言葉を無視して投げ放たれたその大声は、開け放たれた扉から歩んでくるその人物のものだった。
「な、何!?」
花嫁が驚きに叫び、私の腕を掴む。しかし人影は全く周りのざわめきを気にせず、私たちの方へと歩み寄り―――
「酷いじゃないか、ロイ!いくら保身の為だからって、そんな女と!」
ひしぃっ、と私の胸に飛び込んで来たのだった…。
「鋼の!?」
「ロイさん、この子をご存知なの!?」
思わず口にしてしまった彼の二つ名に、花嫁が詰問するように迫ってきた。
「い、いや、彼は私の…」
「恋人ですぅ〜」
べたりと鋼のは私の胸元へと引っ付き虫よろしくくっつき、ご丁寧にも腕を首に回してきた。ちらりと見せつけるように花嫁を横目で見やり、ふふんと笑ったのが私にも判る。甘えるように頬を摺り寄せ、睦言を囁くように口を開けば、この少年の場合は…
「ねぇロイ。火遊びなら幾らでもして良いって言ったけど。でもこの人、ロイの好みじゃないよねぇ?」
「〜〜〜っっ!!」
かぁぁぁ、と花嫁の顔面が一気に染まり、怒りに眉がつりあがった。
「……この結婚、なかったことにして頂きます!!」
「はーいはいはい。あ、お姉さん。出口はそっちだよー」
要らぬ台詞に花嫁が睨みつけるが、少年は何処拭く風だ。ひらひら手まで振っている
花嫁は結局私が名前を覚えることもないまま、思い切りブーケを投げつけると、その場から消え去ったのだった…
「やぁい、花嫁に逃げられてやんの」
「…君が元凶だろうが!」
「うん。責任は取ってやるよ?」
「…責任?」
にこっと笑う少年が手にしているのは、先ほど投げられたブーケ。
「投げたブーケ貰っちゃったの、俺だしぃ?」
その意味を把握する前に、少年は手近にあったレースやらブーケやら布を集めて、両手を合わせ。
ふわぁ、と一瞬の内に自分サイズに純白のドレスを作り上げてしまったのだった。
「どぉ?」
「兄さん!すっごく綺麗!とても似合ってるよ!」
「おう、当然だな!!」
「でもどうせなら、もっとミニの方が良いと思うよ」
「ふ、まだまだ甘いな弟よ!チラリズムの極意を知らん!」
何で平然と褒められるんだエルリック弟よ!
それに何時から君はいたんだ!?
大体、普通の兄弟の交わす会話じゃないだろう!!
極意って何だ!!!
私の優秀な筈の頭脳がややビジー状態になっているにも関わらず、新郎側(つまり私の側だが)の部下やらは少年にやんやの喝采を上げ。
「大佐のお守りは宜しくね」
「ロイの野郎も、これでいっぱしの男だな、うん!」
「ま、大佐の手綱、頑張って取ってくれや」
「おめでとうございます、エドワードさん」
……誰か1人くらいこの状況に異を唱えるべきではないのか?
しかし私のそんな常識たっぷりの考えは綺麗に無視され、式は滞りなく(滞ったままというか)再開された。
花嫁姿の少年は不敵な笑みを浮かべると、私の首へと再び腕を投げ出し、そして耳元に口を寄せ囁いたのだった。
「―――幸せに、してやるよ?」
…目が覚めた。どうやら夢だったらしい。当たり前だ。
ぼんやりした天井を眺め、私は1人呟いた。
「…それは私の台詞だろう」
▽ happy wedding (side:A)
りんごん、りんごん、と澄んだ美しい音が空に響く。
幸せの、象徴が。
ふと気づけば、僕はきっちりとしたスーツ姿で雑然とした部屋の所在なげに佇んでいた。
見渡せば白い壁に囲まれたこの小部屋には、大きな姿見があり、木製の小さな間仕切りには白のヴェールが無造作に投げ出されていた。
「アル!」
呼ばれ、振り返ればそこには満面の笑みで駆け寄ってくる兄の姿。
いや、正確にいうならば、最愛の人の姿。
「兄さん」
「うわぁ、アル!お前めちゃくちゃ格好良い!」
俺とお前、本当に血ぃ繋がってんのかぁ?と心底訝しげな彼の顔はもっともで。
僕の顎の下辺りに、彼の頭頂部があたる位置関係にある。
ちょうど抱きしめるのにいい感じだよね、と言ったら殴られたんだっけ。そういえば。
もっとも、口にしないでも実行はし続けて今に至るわけだけれど。
「兄さんこそ、凄く綺麗」
「…おぅ」
ふぃ、とそっぽを向いてしまう彼の肢体は、今や真白の布に包まれているわけで。
上質の光沢を放ち、シンプルな形に仕立てられたドレスは見事に彼のためにあつらえたかのように彼に映え、しかし主張しすぎることはない完全な引き立て役になっている。
うーん。贔屓目じゃないけど、本当に美人なんだよねこの人。
今度は僕の台詞だけど、本当に血が繋がっているんだろうか。
血が繋がっていないなら好都合。繋がっているならそれは断ち切れない永遠の絆。
僕と彼とを繋ぐもの。
「ん」
ちゅ、と可愛らしい音を立てて、僕は彼の両頬にキスを落とした。
親愛のキス。家族のキス。
彼からも、お返しに柔らかなキスが降って来る。
幸福のキス。未来のキス。
「…そろそろ、時間だな」
「あ、そうだね。行かないと」
慌てたように彼は放っていたヴェールを引っ掴み、無造作に頭へと被せた。それを「駄目だよ、ちゃんとして」と直してあげるのは、僕の役目。
昔から何も変わらない。
何が変わっても、僕たちだけは変わらなかったんだ。本当に。
教会には、リゼンブールの皆も、お世話になった軍部の人たちも来てくれていた。
皆、にこにこと嬉しそうにしてくれている。
何故かこの間昇格したマスタング准将は、妙に不機嫌だったのだけれど。
そして一瞬空気が静まると、ゆっくりと新婦姿の彼が現れる。
ゆっくりと、新婦は歩み。(ヴェールを持つのはウィンリィだった)
そして祭壇の前に佇む、新郎の元へと辿り着く。
新婦も新郎も、ともに似通った金の髪。
それを僕たちは、とても好ましい表情で見守っていて―――
僕たち=H
あれ?
何故に僕は長椅子にいるのに、彼の隣にはすでに新郎がいるんでしょうか。
ちょうど僕からは新郎の背中しか見えない。けれど確かにあそこには新郎がいて、そして僕は家族としてここに座っているというわけで…
え? どういうこと?
僕が状況を飲み込めず、おたおたしている間にすでに式は2人の誓いまで進んでいた。
わ、え、ちょ、え、んん?????
新郎がゆっくりと花嫁をヴェールをめくり上げると、僅かに紅潮した兄の顔が覗いた。
綺麗!綺麗だよ兄さん!ビバ兄さん!ってそんなこと言ってる場合じゃないから!!
そして憎むべき新郎が身をかがめ、兄の方へと囁いた―――
「…幸せに、なりましょうね。エディ?」
「トーゼンじゃん、リザ姉」
――――――、中……っっ!!!!???
「うわぁぁぁぁぁぁっっっ!!?」
お前はぜんまい仕掛けか、という勢いで身を起こした僕は、ベッドの上で心臓をばくばく言わせているのだった。
見渡せば室内はまだ薄暗く、そして兄は隣室で同じく眠りについているはずで。
「……夢?」
―――そして翌朝。
「中尉。是非とも中尉にお聞きしたいことがあるんですけど」
「あらアルフォンス君。真面目な顔で…なあに?」
「『新郎の心得』を是非…」
「…はい?」
▽ 「しあわせ!」こぼれ話(side:L)
ゆっくりと、眠りなさい。
あなたには、己を労わる義務がある。
金色の、形の良い眉がひくりとひそめられる。
日光でも差しただろうかと右手で影を作り顔に落とし込んでやるが、次の瞬間つとまなじりから伝い落ちた雫に、リザは言葉を失った。
眠る彼の唇が紡ぐのは、かつてその死に耐え切れなかった相手を呼ぶ名。
苦しさだけではない。少年の声音に潜んだそれは、懐かしさだった。
きらきらした美しい思い出をふと掬い上げ、そして掬い上げた掌の罪深さに恐れおののく小さな。―――小さな。
ベンチで眠る少年を見かけたのは、偶然だった。
昼休み、通常ならば自分は食堂にいるかサンドイッチ片手に上司の見張りでもしているだろう。
たまたま、本当にたまたま、リザは中庭を歩き、そして少年を見つけた。
この木漏れ日は昼寝には最適だろうと思うのと、同時に。
枕が木では堅かろう、と思う。
少年の無理な体勢にどうやら寝るつもりではなかったようだと推測すると、リザは小さく笑って少年の頭の近くへと腰かけたのだった。
ゆっくりと、気づかれないように彼の頭を持ち上げながら。
眠りなさい。
眠りなさい。
ひと時でもいい。
君の周りには、まだこれほどに暖かな太陽が降り注ぐ。
白い指先で少年の涙を静かに、拭い取る。
彼が目を覚ます頃には、残滓は乾き切っていることだろう。
目覚めた時、少年はおそらく彼女の存在と己の体勢に驚愕する。
衝撃は、夢を忘れる格好の薬だ。
そしてただ君は春の陽射しの中で、他愛ない話をしながら惰眠を貪ってくれればいい。
過去はなくせない。忘れ去ることはできない。
忘却は、時に酷く残酷な仕打ちしか行わない。
けれど一瞬でも逃れることすら、己に許そうとはしない君に、伝えましょう。
誰よりも愛することを知る君を。
誰よりも愛に貪欲な君を。
愛し、慈しみ、守ろうとする、君と同じく愚かな人間たちがいることを。
祈るように。
祈るように。
神を信じぬ軍人は、金色の少年のために1人、祈る。
―――この膝の重みは、ひと時ばかりの安らぎの重さ。
▽ 「最強伝説〜聖母降臨〜」余話。(side:T)
今日もいい天気だわ。
私は冷たい井戸の水を汲み、小さく歌を口ずさみながら朝食の準備をする。
やれやれ、最近はお野菜も高くて嫌になる。
全く、どれだけ儲けたら気が済むんだか。
隣村で農園を経営している狸親父の丸々とした顔を思うと、知らずカボチャも真っ二つ。不思議なものね。
しばらくしてから、私は子どもたちの寝室へと向かった。
名を呼びながら扉を蹴り開けると(失礼、ちょうど手はフライパンと菜箸を握ったままよ)、あらまぁ、2人してぐっすり夢の中。
―――私だってもう少し寝たいんだから、さっさと起きなさい。
フライパンを振り上げて、勢いつけて枕元へと叩きつけた。
ちっ。最近は図太くなったわね。これくらいじゃ起きやしない。
あら、アルの方が先に目覚めたみたい。薄く目を開けてこっちを見てる。
アルってば、いかにも文句を言いたそうな顔をしているわ。聞かなくても、文句の内容は判ってよ。
だってよくよく見れば、2人して同じベッドに入ってるじゃない。アルフォンス、あなたのベッドはそっちでしょ。
私だってね、鬼じゃないの。愛する子どもが2人してベッドでぬくぬく丸まってたら、そりゃ少しはこの野郎子どもだからってとか思うけれど、やっぱりほのぼのした気分にはなるのよ。
でもねぇ、今日も学校があるんでしょ。将来いい仕事に就いて年老いた私を養ってもらうためにも、今から勉学を積んでもらわないと困るの。
だからあなたも我慢しなさい、アル。
この間ちゃんと、将来エドはあなたにあげるからって約束したでしょう。朝くらい離れなさいな。
言っておくけど、寝ぼけた振りしてそうしてエドにしがみついていても、無駄だからね。
私は片手でフライパンと菜箸を持ち、空いた手で容易くベッドのマットレスを引き抜いた。当然、上に乗ってる2人はごろんごろんと床にキス。
…アルってば、私が思っているより強者だったわ。しっかりエドを抱きしめたまま、兄のクッションになっている。
ようやく目覚めた2人は(今日は目覚めが良いほうね。まぁ、過去2、3度ベッドごと外へ放り出したことはあるけれど)、それからは電光石火の早業で朝の準備を整え、早々に学校へと行った。
2人が行ってきますをして、並んで登校していく様を見るのは、何にも代え難い幸せだわ。
だって2人をよくよく見て御覧なさいな。
アルフォンスの丸みを帯びた瞳、少しくすんだ金の髪、にこりと笑った時に片頬にだけえくぼができる様子もみんな、私譲りよ。
そしてエドワードの切れ長の瞳、鮮やかな金の髪、拗ねた時や構って欲しい時に見せる、指先を遊ばせる仕草はみんな、父親譲り。
そうよ、この2人が並んでいたら、まるで私とホーエンハイムのデート姿に見えなくて!?
思わずうっとり眺めてしまうわ。
そりゃあね、騎士様と姫様の役割は逆だけれどね。
2週間前くらいかしら。
アルフォンスが真面目な顔して、大きくなったら、お嫁さん貰わないといけないの?って訊いてきた時、私は答えたわ。
そうよ。できるだけ顔と身体と料理の腕のいい、できるなら土地付き家付きのお嬢さんにしなさい、って。
そうしたらアルフォンスはぶるんぶるんと首を振り、宣言したのよ。
僕、だったらお兄ちゃんをお嫁さんにする!って。
その時私は拍手したわね。やっぱりこの子も私の子。好みからして同じだなんて、母さん嬉しいわ。
そうね、考えてみれば、理想の相手がそれこそ生まれた時から身近にいるんだもの。
ちょっとアル、母さんあなたが羨ましいわ。血縁を盾に何したって許されるじゃない。
だから私は外に出ていたエドの代わりに、アルと約束したの。将来あなたの所に嫁ぎますって。
ちゃんと約束は守るつもりだし、守らせるつもりよ?
あぁそうだ、ほら見て?
予行練習にと思って、今からウェディングドレスの小さいサイズを作っているところよ。
ウィンリィちゃんが着ていた白の可愛いワンピースの型を貰って、少しアレンジを加えてみたの。
やっぱりエドは日に焼けない体質だから、肌が綺麗なのよ。
だからここぞとばかりに、ミニスカートにしてみたわ。
うん、これならアルも喜んでくれるわね!あの子私に似て、趣味が結構イロモノだから。
ちゃんと脱がせやすい作りにしてあげるなんて、私ってば何て子ども思いの良い母親。
あら、何?
エドとアルは兄弟だろうって?
そうよ、だから何なの。
いいじゃない、戸籍は元々一緒だし。名義変更や書類上の手続きなんて要らないのよ。
それに互いに好き合ってるみたいだし。あ、エドの気持ちは確認してないわね。まぁいいか。
そして一番の理由がこれよ。
アルは性格が可愛いの!(やっぱり私似だからね)
エドは顔が可愛いの!(父親似な上、絶対将来美人になるわ)
可愛い者同士にゃんにゃんしてたら、眼福以外の何だと言うの!?
まさに世の摂理。
2人が教会で高らかにウェディングベルを鳴らすその日まで、私はうきうきとドレスを繕うつもりよ。
勿論、結婚式にはホーエンハイムも呼ばないとね。
今からでも、あの人を呼び寄せて捕まえておく算段立てて置かないと。
うふふふ、こんな田舎に家立てやがったあの研究オタク、今度会ったら二度と家を出られると思わないことね。
もう少ししっかりしつけておくべきだったわ…。
あぁ、昼寝の時間ね。
主婦は昼寝も仕事のうちよ。
御免遊ばせ?