‡ とある日の撮影現場 ‡ |
「はーい、じゃあ撮影入りまーす」 「ちょっと待ってくれたまえ」 「どうかされましたか大佐」 「どうしてこの面子なのかね」 「といいますと」 「わたしはいい。君もわたしの部下だからな。しかしどうして…」 「いやいやいやマスタング大佐殿。お気になさらずに。このルイ・アームストロングけして大佐殿の邪魔にはなりませんぞ」 「…その割には中央を陣取っているようだが」 「写真撮影時には背の高い人間が後ろになるものですよ大佐」 「さよう。我輩は巨体ですからな。どうぞお二方は前列へ。ご心配なく、後列に行ったからと、我輩のこの筋肉美は損なわれることなし!」 「あーのー。そろそろ時間押してますんで、撮っていいですかー?」 「あらごめんなさいね、曹長。ええ、さっさと終えてちょうだい。まだまだ予定はあるのだから」 「待ちたまえ曹長!まだシャッターは切るな!」 「え!?どうかされまし」 「…湿気で髪がまとまらない。こんな情けない髪で全国に顔向けできるか!」 「だったら一気に乾かされたらいかがですか。そのくらいこんな天候でもできますよね?さあどうぞ」 「それにこの服も皺がよ」 「あら大佐。あれは何でしょう」 「ぬ?」 「はい曹長。シャッター切って」 ぱしゃ。 「中尉ーーーっ!」 「何か無駄に騒がしくねぇ、あっち?」 「あそこでは大佐たちが撮影を行っていますからな」 「え〜?何あの大佐。OPで十文字男よか出番少ない癖してちゃっかりと…」 「兄さん、たぶんそれかわいそう…」 「おや、曹長が撮影を終えたようですな。ではお二人もご用意ください」 「お待たせしましたー。えーと、じゃあまずエドワード君からね。アルフォンス君はその次で?」 「いやー。主役ってのはいい身分だよなぁ弟よ?」 「兄さん兄さん。今の顔はお茶の間に流さないほうがいいと思うよ」 「やかましい!へん、あの発火男なんぞ、このエドワード・エルリックの引き立て役に過ぎんわ!」 「確かに僕らはアップであっちは全身だけどさ…確かにあっちは提供の文字が被りまくるけどさ…」 「いや俺そこまで言ってねえし」 「あー…二人とも、そろそろポーズとってくれる?」 「あ、ごめんごめん曹長。えーと、こんな感じ?」 「…兄さん。一応言っとくけど、そんなにカメラに近づいても別に大きく見えるわけじゃ…」 「ええい兄に口出しするな弟!いいから!ほら曹長さっさと撮る!この角度で!」 「密かに注文細かいよ兄さん…」 「うーん、まぁまぁの写りかなー。さすが俺」 「いくら身長の比較をされたくないからと、このアップぶりは主役云々以前に見苦しい足掻きだぞ鋼の」 「うわこのへしゃい髪型かつ、よれた軍服、かてて加えて不意打ちの間抜けな顔なんて俺恥ずかしくてもう表歩けないな」 「いい男というものは、例え外見がどうであれ、女性から寄ってくるものだはははまだまだ子どもだな」 「はーん、なるほどー。そりゃそーだよなー。例え童顔でも無能でもへたれでも一発芸持ってるもんなー」 「面白いことをいうな君は。ははははははは」 「そお?何なら名乗っていいよ。一発屋の錬金術師ですーって。」 「ははははははは」 「あはははははは」 「曹長、意外といい腕してるのね」 「ありがとうございます。こういうの、結構好きなんですよー」 「あ〜、何か判る。曹長、そーゆー顔してるし。なあアル?」 「三枚の合成にはちょっと苦労しましたよー。一つの画面に入れなきゃいけないし」 「…てゆかさアル。お前この格好、のけぞり入ってないか?何つーか、構えてる? 熊っぽい?」 「僕と比較しても明らかにおかしいくらいアップで写ってる兄さんに言われたくない よ」 「お前こそふんどし写る面積下げようって魂胆見え見えなんだよ!」 「ひどいや兄さん!」 「どっちがひどいか!」 「うむ、兄弟喧嘩も微笑ましいものなり!」 「おや、フュリー曹長。何を」 「あ、ファルマン准尉。いえ、真実を報道する者としては今のこの姿を写したほうがいいのではと…」 「…とりあえず、軍属としては軍の威厳を下げないように行動したほうがいいのでは?」 「それもそうですね。仕方ありません。こっちを送っときます」 「それがいいかと。…しかしあれですな」 「はい?」 「たかだが10秒に満たない映像のために、ここまで本性が出るものとは…」 「あ、エドワード君切れた」 「…もう用事が終わったのなら、仕事に戻りますかな」 「そうですね。戻りましょう、准尉」 平和に仕事に戻る二人と、どうやら目的を忘れたらしい二人と、なぜかおもり役の残る 三人。 |