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※ 注意
 既に半パラレルと化しています。
 エド氏と中尉が夫婦でしかも一女をもうけていたりします。
 オリキャラも出現しておりますので、苦手な方は今のうちにお戻り下さいませ。







 司令部の門を守る衛兵が、雰囲気に全くそぐわない親子を見咎め、声をかけた。
 しかし次の瞬間親の顔を見とめ、衛兵は非礼に顔色を青ざめさせたのだった。


 ++ とある未来の司令部にて ++


 ここ、中央司令部は軍事国家において、国の中枢と同義語である。
 当然、不審人物は徹底的に排除され、国家転覆を狙うテロリストを年に5回は根絶やしにし、内乱が起これば一斉に軍力を投入してその脅威を知らしめる。いまだ軍事政権は揺るぐことなく勢力を誇っている。特に現在、北や西の諸国が不審な動きを見せており、司令部特に中央などは常にぴりぴりとした緊迫感が絶えないのだった。
 そして今。
 そんな、国の中枢神経が束になって通っているような司令部の、それも将軍クラスの部屋が建ち並ぶ回廊に、ひょこひょこさ迷う小柄な影がひとつ。
 「…お父さーん、お父さーん、何処ぉ?」
 あれぇ? と片手にこれまた可愛らしい小さなバスケットを下げて、少女は不思議そうに周りを見渡した。年の頃は5歳前後。白地の裾にだけ赤い花模様の入った、シンプルなワンピースを着ている。少女の金髪は可愛らしくツインテールにされ頭上で揺れており、同じく金色の瞳は年の割には思慮深く、厳つい造りの建物を興味深げに観察していた。
「お父さん、迷子?」
 お父さんなのに。変なの。
 見渡しても人影ひとつなく、真紅の絨毯が長く敷き詰められた回廊の中央で、その光景に似つかわしくない少女は1人考え込んだ。どうしよう。誰か大人の人を見つけて、父親を捜してもらわないといけないだろうか。いやいや、ここでじっとしていれば、その内あちらが自分を捜し当ててくれるかもしれない……
 少女はスカートが汚れるのも気にせずそのまま座り込み、あぁでもないこうでもないと空中を睨みつけ始めた。そんな奇怪な少女の姿が長く発見されないわけもなく―――また発見されなければ中央司令部の警備体制に関わる―――、いつしかちらほらと軍人たちの人だかりができていた。ざわざわと互いに顔を寄せ合い、何故こんな処に子どもが? と正解の出るわけもない問答をしている衛兵たちをかき分けて、少女のすぐ後ろに立ったのは肩に星を幾つも背負ったエリート軍人さんだった。どこかで見たような後ろ姿に来てみれば予想通りの少女の姿。問いかける声も自然、気の抜けたものとなる。
 「…リーリア?」
 「あ、こんにちは、マスタングのおじさん」
 中央でも様々な意味で有名なロイ=マスタングをあっさりと、リーリアと呼ばれた少女はおじさんと呼ばわった。
 「マスタングのお兄さん、と呼んでくれるかいリーリア」
 「だってお父さんがそう呼びなさいって」
 あの野郎。
 一瞬伏せた顔の向こうで唇が歪んだがそれをおくびにも出さず、ロイは女性専用のにこやかな笑みを見せる。
 「ところでリリィ。こんな処でどうかしたのかい?」
 「お母さんとお父さんと一緒にお弁当食べようって」
 「お母さんと?」
 「うん。お弁当作って」
 持って来たの、とリーリアは小さなバスケットを得意そうに掲げた。それで大体の状況を把握したロイは、優しく少女の髪を撫でてやる。
 「偉いね、リーリア。一緒にいたはずの豆…じゃなくてお父さんは何処かな?」
 「お父さん、どこか行っちゃった。それで、それで」
 「考え込んでいたと」
 やれやれ。これだから遺伝というものは恐ろしい。
 少女の考え込む顔つきやら姿勢やら、また場所も考えずに己の世界に没頭する癖はどうも父親から十二分に受け継いでしまったらしい。ついでに、自分が迷子になったのではなく相手が迷子なのだと主張する辺りもそっくりである。そんな場面に遭遇したことはないが、きっとあの小憎らしい青年ならそう主張して憚らないだろうことは、けして短くも浅くもない付き合いで、ロイは判りすぎるほど判っていた。
 「行こうか、リーリア」
 「何処に?」
 「お母さんの処だ。お父さんもそこにいるだろう」
 「本当!?」
 おじさん大好きっ、とリーリアはロイの腕にひしっとしがみ付いた。だからお兄さんな、としつこく訂正を入れながらよっこらせと抱え上げてやる。5歳の少女の身体は抱き上げるというより持つ、に近いほど軽い。ちゃんと落ちないようにな、とお決まりの注意を促してさて目的地へと…と思えば、いつのまにかギャラリーは凄い数になっていた。そしてその中の1人が、怖々、本当に恐いもの見たさ、と言った顔つきで、ロイへと尋ねる。
 「……あ、あの、マスタング少将。そのお子さんは……???」
 「あぁ、私の娘だ。可愛いだろう?」
 嘘発見器が泣きそうなほどに平然と、ロイは衝撃的な発言をかましたのだった。


+++


 「おぅっ!!?」
 執務室の扉を抱えた少女に開けてもらいながらロイがくぐると、いきなり変形した壁が襲いかかった。
 「んなっ!?」
 「きゃー、すごーいっ」
 場違いに歓声をあげる少女を腕に、ロイはついで牙を剥いてきた天井の梁と格闘している。容赦なしに向かってくる刺を右に避け左に避けつつ、ロイは危険なイリュージョンを作り出している相手へと叫んだ。
 「待ちたまえ鋼の! せっかく君のレディを連れてきてやったのに!」
 「っさい!! さっさと下ろしやがれ頭狙うぞ!?」
 「あー、お父さんー」
 「リィ! ほらこっちおいで」
 ぴた、と素敵な形に捻じ曲がった室内が停止する。その合間を縫って、ついでにロイの腕からもすり抜けて、リーリアは父親の元へと駆け寄った。長い金髪を後ろでひとつにまとめた青年が、少女を優しく抱きとめる。
 「大丈夫かリィ!? 何もされなかったか!? 触られちゃいけないって言っただろう?」
 「ごめんなさい…でも大丈夫だよ」
 「待て鋼の。君は一体娘に何を教え込む気だ」
 「身の安全に決まってるだろーがスケコマシ」
 スケコマシってなぁにー? この世からなくなったほうがいいものだぞー、と全く微笑ましくない親子の会話。
 身長は既にロイと並ぶ程で、やや華奢な印象もあるが瞳に強い光を湛えた青年はエドワード。時の流れとは恐ろしいもので、彼は周りが驚く程に成長を遂げると上司兼後見人よりもさっさと人生の伴侶を得、更には新たな恋人とも言うべき愛娘までもうけているのだった。
 「ま、サンキュ少将。リーリア連れてきてくれて」
 「いや、私も偶然見かけただけだからな…ところで、そろそろ動いてもいいかね?」
 「あ、忘れてた」
 一瞬にして、部屋は元の様相を取り戻す。ロイのこめかみ3センチにまで迫っていた元本棚の凶器も、大人しく収納家具の用途に立ち返った。
 「…どうせなら期限切迫の書類でも粉砕してくれれば良かったものを…」
 「いいかリーリア。これが世に言う駄目な大人の典型だぞ。はい復唱」
 「だめなおとなのてんけいのマスタングおじさん」
 「だからお兄さんと呼んでくれるかいリリィ?」
 「…図々しくない、中将?」
 内心の嵐はともかくとして、女性に対する外面の良さだけは1級を誇るロイ=マスタング。ちなみに現在彼は38歳。地位は中将にまで上り詰めている。若くして異例の昇進記録はいまだに健在。東方司令部に所属していた頃からの腹心の部下たちも、ロイの下で着実に官位を上げていた。そしてかつて最年少天才錬金術師と称されていたエドワード=エルリックもすでに24歳。喪失を取り戻す旅も無事本懐を果たし、一足先に故郷で暮らす弟に心配されつつも、彼はいまだに軍籍にあった。
 これまでの業績の数々から軍部が手放すことを惜しんだのが3割。
 彼自ら軍に在籍する恩人たちに借りを返すためとしているのが4割。
 そして残りの3割は、彼の妻たる人物もまた軍人であるためである。
 こんこん、と執務室の扉が叩かれる。
 「入りたまえ」
 「中将、先ほどの書―――あら、エルリック中佐」
 いらしてたのですか。
 くっきりはっきり公私のけじめをつける、リザらしい台詞だった。


 リザ=ホークアイ。
 猛獣使いとも鞭使いとも呼ばれる(その上に上司の、という枕詞がつく)、武勲以外で有名な逸話の多い軍人である。30歳を過ぎてもいまだに若々しい容貌を誇る彼女の左手薬指には、銀の指輪が存在を主張していた。
 上司の部屋に向かってみれば、室内には夫と子どもの姿。
 それでも動揺を見せない辺りが流石である。
 「たまに軍に顔出さないと怒られるからさ、仕方なくね。ホークアイ少佐」
 「それは中佐が研究と称して突如1週間以上音信不通にされることが多いからでは?」
 「せめて事前連絡は入れるようにするよ」
 軽く両手を掲げて、降参のポーズ。隣でリーリアが真似ている微笑ましい光景に、ふっとリザの顔にも柔らかさが点った。
 「さて、そろそろ昼食の時間だな少佐。君はここで食べるといい」
 「? え、ですが」
 「そうだろう、リリィ?」
 足元に目をやると、じぃっと母親を見上げた少女が手にしたバスケットをリザの方へと差し出していた。
 「リィ? これは?」
 「お弁当」
 「リィが作ったの?」
 「そう! お父さんも一緒に」
 「そうそう。俺とリリィで一緒に愛情込めたんだよなー?」
 「なー」
 「と、言う訳だそうだ。君の旦那はそんな用事でもない限り職場に顔も出さないらしい」
 やれやれと呆れた素振りを見せながら、ロイは客人用のテーブルを家族連れへと提供した。


 「これがリリィの作ったのー、こっちがお父さんの作ったのー」
 実に楽しそうに各自の皿へと、リーリアが取り分けていく。
 「はい、おじさんの分v」
 「くれるのかい、リリィ?」
 「うん」
 にこぉ、と零れる笑みに、とうとう強制お兄さん呼びを諦めたロイが目を細めた。
 「こら待て変態。いくらうちのリィが可愛いからって何だそのだらしない顔!」
 「何を言うか。全く娘がこんなに常識的に育っているのに親がそれとは情けない。なぁ可愛いレディ?」
 すっかり機嫌を良くしたロイが、小柄な少女を優しく抱き上げる。軍服に身を包んだ人間が愛らしい少女を抱かかえている様子は、アンバランスなようで何処か平和的でもあった。
 「やれやれ、本当に遺伝の神秘を思ってしまうね。アレから、これとは…」
 「アレ?」
 「リィ、君は気にしなくていい。これから素敵な女性になっていってくれたまえ。さぞかし素晴らしい淑女になれるだろう」
 にこにこと、満面の笑みはすでにでれでれと形容しても差し支えない様子である。
 「そうだリリィ、君が18歳になったら一度食事でも」


 ガゥン!!


 突如として、銃声と共に壁に穴が開いた。
 「…っ、しょ、少佐…っ!?」
 ロイの襟足を掠めるように突き刺さった弾丸の持ち主は、司令部内で銃を持たせれば右に出る者なしのリザである。硝煙上がる愛銃をかまえ、リザは何処となく座った目つきで上司を見やった。
 「…今、何と? 少将?」
 「……い、いや…何も言っておりません…」 
 引きつった口元でようやくそれだけを答えたロイだったが、リザはぐっと愛娘を抱き寄せると宣言した。
 「私の娘には、黒髪の男は近寄らせません!」
 「は? 黒髪!?」
 「当たり前じゃないですか! 何が悲しくてリーリアに黒髪の男なんて!」
 確たる信念をその瞳にたぎらせ、リザは上司を仇かのように睨み上げた。
 「せっかく、意地でエディの目と髪の色に産んだのに! 優性遺伝子を混ぜるなんてとんでもない!」
 ―――意地で産んだのか。
 リザならばありえるような気がして、ロイは諦めたように目を伏せた。その視線が何処か遠い世界を指していたとて、仕方のないことだろう。リザのエドワードに対しての拘りは相当なもので、その髪の一筋すらも他人に任せたくはないらしい。書面ではエドワードが夫、リザが妻と表記されているが、これが性別の括りさえなければ間違いなく逆に記銘させていただろう。挙式の時でも、リザは自分が見たいから、という理由でエドワードにも一時ウェディングドレスを着せていた。そしてそんな彼女からの愛情を受けることに幸か不幸か慣れてしまっているエドワードは、彼女の拘りを気にせず受け入れているのだった。
 正しく、割れ鍋に閉じ蓋なのである。
 「ですので、リーリアの将来の夫は金髪金目。ぎりぎりまで譲歩してヘーゼルです」
 「本人の意思を無視するのは良くないぞ少佐。なぁリリィ、リリィも将来恋人を持つなら、私のような素敵な男性がいいだろう?」
 全く懲りた様子を見せず、ロイは変わらぬ笑みでリザの腕にいるリーリアに語りかけた。半分は冗談だが半分は本気である。何しろ素材の確かさは120%保証されたも同然なのだ。父親、母親共に平均をはるかに上回ることだけは、己の審美眼が認めている。それに、ここで少女が頷いてくれたなら向こうで自分を睨みつけている青年に一糸報いることもできるという訳で。
 しかし。
 「嫌」
 リーリア=エルリックはあっさりと、旧東方、現中央の女泣かせを3秒で振ったのだった。
 「あっははははは、よーしいい子だなー、リィ! よく言った! 流石俺の子」
 「何故だリーリア!? 私の何処が…っ」
 大喜びで手を叩くエドワードと、衝撃に打ちひしがれるロイ。まさに来客ソファの周囲は悲喜こもごものようである。
 「…リリィ、悪いが納得いかない。私以上にいい男なんてそうそういないぞ?」
 「だってリィはアルフォンスが好きだもん」
 「……おい鋼の! お前は娘にどこまで悪影響を与えたら気が済む!」
 「どーゆー意味だそりゃ!!」
 あまりに綺麗な即答に、天を仰ぐより他はない。やはり遺伝子は侮れない。やはりこの少女は何処まで行っても、エドワード=エルリックの娘なのか。
 「そーかー、アルが好きなのかー。よしよし、父さんに似て見る目は確かだな、うんうん」
 「うんっ」
 「ちょっと遅かったなー、リリィ、残念だけど、アルはもう売約済みなんだよ」
 後3年早く生まれてたらアルはお前にあげたのにな、とあまり冗談には聞こえない台詞を吐きながら、エドワードは少女を膝上に乗せ、その手にハムのサンドウィッチを握らせてやった。
 「?」
 「…そういえば、今ごろアルフォンス君はリゼンブールだったかしら?」
 「そう。ウィンリィに付きっきり」
 エドワードの弟、アルフォンス=エルリックは現在、兄と離れて故郷の田舎に帰っている。肉体を取り戻した彼はそれまでの時間を取り戻すかのように華々しい成長を遂げ、理知的で逞しい青年の姿になっていた。ちなみに、リーリアはアルフォンスのことを父親の真似をしてか「アルフォンス」と名前で呼ぶ。ロイとは逆にアルフォンス本人は「叔父さん」と呼んでもいいよ、と言っているのだが、どうも直る気配はない。
 そんな彼がエドワードと共通の幼なじみである機械鎧技師、ウィンリィ=ロックベルと結婚したのはつい2年ほど前だった。単に式を挙げ書類を提出しただけで、彼らと彼らを取り巻く関係や日常は何の変化も起こりはしなかったのだが、ささいな変化が起きたのは半年前。そして今、アルフォンスとウィンリィはリゼンブールで新たな命の誕生に備えているのだった。
 「アルは女の子が欲しいって言ってたけどな。どっちだろなー」
 「どっちにしろ、元気な子が産まれると良いわね」
 「そーだよねー、って。おぉそうだリリィ」
 少女の口周りについたマヨネーズを拭ってやりつつ、エドワードは娘に囁いた。
 「アルはやれないが、アルの息子をお前にやろう!」
 「本人どころか、親の意思も無視か!?」
 「アルとウィンリィなら二つ返事に決まってるだろが!」
 反論しきれない我が身が恨めしい。
 おかしくないかこの兄弟。ついでにその幼なじみ。というかあの田舎がおかしいと思う自分がおかしいのか。
 そろそろ真剣に頭痛を感じてきたロイは、それを忘れ去ろうと冷たいお茶を一気に飲み干す。空になったグラスがからん、と涼やかな音を奏でた辺りで、どんどんとやや急いたノックが響いてきた。
 「入りたまえ」
 入ってきたのはこれまた古くからのロイの腹心、フュリー准尉である。普段穏やかな雰囲気をまとわせている彼が、今日は何やら焦りを見せているようだ。
 「俺に? 電話? …アルから?」
 訝しげな表情で、エドワードが受話器を受け取った。フュリーは詳しい説明もなしに、いきなりエドワードに受話器を押しつけ、そして「アルフォンスさんからみたいです」とだけ言ったのだった。彼はアルフォンスの顔も声も知っているだろうに、困惑した表情を隠しもしないのは何故だろう。
 そんなエドワードの疑問は、受話器を耳にあてた時点で氷解した。


+++


 がちゃ、と受話器を置くと同時に、慌しくエドワードは立ち上がった。
 「…エディ、何か」
 「っしゃぁっ!」
 訪ねるリザの声に重ねて、娘の処へと駆け寄り、抱き上げる。
 「なにー?」
 「おめでとうリィ、もうすぐ未来の旦那が産まれるぞ!」
 「…え、もしかして」
 「うん、陣痛始まったって!」
 こんなとこで油売ってる場合じゃねー! と叫びながら、慌てて身の回りの物をまとめ出す。ばたばたと手荷物とリーリアと片腕に抱え、上着を羽織った頃には既に、リザが電車の手配を済ませた処だった。
 「ありがと、助かった」
 「いいのよ。あぁそうだ少将。私も、しばらく休暇を頂きますから」
 「は!?」
 「義妹の出産に立ち会わなくて、何が義姉ですか」
 さも当然の顔で2席―――リーリアはまだ数に入らない―――を取ったと告げ、リザは上司の机に鎮座する紙束を冷たく眺めた。容赦なく積み上げられた書類を舐めるように見つめ、そしてその視線を隣の男へと向ける。
 「…きちんと溜めずに処理しておきます…」
 「宜しい」
 泣きそうな上司には目もくれず、金髪の夫婦とその一人娘はさっさと東の田舎へと出かけていってしまったのだった。後には父親に自分の執務室を散々に変形されその娘には振られ、挙句の果てには母親に脅された出世頭が1人、呆然と取り残されているだけだった。
 「アルとウィンリィの子どもだからなー、金髪はほぼ確定だな。金目の可能性も高いよ?」
 「そうね、これで男の子だったら今のうちに縁談の準備をしておきましょうか」


 ―――だからこれから祝福される赤子の未来を決定づけるのはどうなんだ…


 だから当然、そんな常識観念からのロイの台詞を聞く者は残念ながらいなかったのである。



 ちなみにその一ヵ月後、中央司令部内に吹き荒れる『マスタング少将に金髪金目の可愛らしい隠し子がいる』というまことしやかな噂を耳にして、鋼の錬金術師が焔の錬金術師を襲撃しにかかる光景が偶然、部下のJ.Hに目撃されたとか。






>>>某様より賜ったリクでした。
思いきり趣味に走ってて済みません。マスタングを苛めるためだけに書きました(ぇ)
あまりオリキャラ出すのは得意ではないので、もうリーリアちゃんは出ないと思いますが;;
例え娘がいたとしても、根底実はリザエドですと言い張ってみたり(笑)

ちょっと入りきらなかった会話でも少し。
「もしもーし、アル? アル? おい?
 ……いやちょっとじゃなく落ち着け。あ゛? 落ち着いてる?
 な訳ねーだろ正気に戻れ。
 つーか、俺に向かってラマーズ法をしてどうする。
 要するに産気づいたんだな?
 いやだから落ち着けってまずは井戸水に頭浸けて来い!!」
でも5年前のエドさんも似たような状況でした。

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