「チョコの海に沈め 2007」
こちら、天香学園生徒会室。
「・・・神鳳さん。コレなんすか?」
眉間に皺を寄せた夷澤が指さすのは、机の上に散乱してる棒状の菓子です。
「何って、九龍くんにあげるチョコレートですよ」
「・・・・・・・」
サラリと返した言葉に固まった夷澤を見て、神鳳はやれやれと頭を振って言いました。
「貴方のように田舎から出てきた人には馴染みが無いかもしれませんが、本日はバレンタインデーと言いましてね」
「知ってますよ!そんくらい!」
「おや、新潟にもありましたか」
「ド田舎青森にあるんですから、新潟にだってありますよ」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
不穏な空気が流れました。「で、バレンタインデーと言う行事も知っていて、尚かつチョコレートも知ってる夷澤くんは何に文句があるんですか?」
「この際、男同士と言う事は省くとして・・・何でバレンタインのチョコがチョコバットなんすか!アンタ等仮にも恋人同士でしょうが!」
机の上に散乱した菓子
みんな大好き『チョコバット』
コンビニなどの床に近い場所によく置いてあります。「失礼ですね。数にして10本もあるんですよ」
神鳳がさも心外そうに言いました。ちなみにチョコバット1本は21円
21円×10本=210円(税込み)「210円じゃないっすか!安ッ!どんだけケチなんすかアンタは!!」
「夷澤」
「・・・何ですか」
憤慨する夷澤の肩にそっと手を置いて神鳳が言いました。「いいですか。愛というのはお金では計れないんですよ」
「210円で愛とか出してこないで下さい!」
「さて、バカは放っておいて。ラッピングしないと。明るいのとシックなの、どちらが良いと思いますか?」
鼻歌まじりの神鳳の手にはスーパーの広告と新聞紙が握られております。「包装紙を買え!!!」
夷澤の叫びは至極もっともです。
2007年。バレンタインデー
神鳳充。チョコバット×10本。計210円
同刻。教室では、
「チョッコレート。チョッコレート。チョコレートは明治〜」
「・・・・九ちゃん、持ってるソレは?」
「え?これは森永チョコレートですよ。日本初の板チョコですよい」
九龍が森永チョコレート片手に明治の歌を歌ってました。
「それがどうかしたかね、甲ちゃん」
「いや、何でもない」
ツッコミを放棄しました。「で、神鳳にチョコを渡すのか?」
「当たり前田じゃないですか。神鳳くんの好きそうな『塩プラリネ』を贈る予定です!」
塩プラリネ・参考価格 5個1575円(エクチュア調べ)「ふーん。結構はりこんだな」
「え?何が?」
そう言う九龍の手には遺跡にゴロゴロしている「食塩」が。
「・・・・まさか」
「森永チョコレートと塩を調合!」『compound!』
「あっと言う間に『塩プラリネ』!!!」
「材料費100円未満!!」
「後は、適当な教室でゲットレした和紙と色紙(金色銀色)を調合!」『compound!』
「あっと言う間に『お洒落な包装紙』!」
「なんでだ!!」「そして、『塩プラリネ』と『お洒落な包装紙』を調合すれば!」
『compound!』
【アイテム・本命チョコレート】
「完成!さーあげて来よー」
「・・・・・・」
「ほんじゃーねー。甲ちゃん」
2007年。バレンタインデー
葉佩九龍。森永チョコレート。塩。計80円