「貴方が私にくれた物」
「龍斗、ほれ」
「ん?何お父さん」
毎度お馴染み犬神さんと緋勇さんの家(古寺)です。
龍斗の養父のんべえ犬神が何やら風呂敷包みを渡しました。
「明日から働きに出るんだろ。やる、着て行け」
「着て行くって事は・・・着物っすかお父さん!」
犬神は黙って頷きました。
「うう・・・(約)18年生きてきて初めてのお父さんからのプレゼントォー・・・明日は槍が降るかも」
「やかましい!」
「ふぇーん嬉しいよー」
感動の涙を流しつつ龍斗が包みを開けました。
中から出てきたのは真新しい一組の着物でした。
色は白と黒。
普通に見れば何て事無い着物ですが・・・・。
「・・・お父様。このお着物なんですが・・・元は何だーー!!」
「・・・・・・鼻の効く奴だ」
「こんだけ線香臭かったら誰かて解るわい!!」
白と黒。
お線香の匂い。
とくれば嫌でも解りますね?
「山中さんに感謝しろよ」
「誰?山中さんて誰?」
「まーもう骨だがな」
「やっぱり葬式の布かい!!!!!!!」
はい、このお着物。
数日前まで山中さんのお葬式に飾られておりました。
ええ、あの白と黒のストライプの布です。
犬神さんはそれをそのまま貰ってきて使ったようです。
「うわぁぁぁぁ、山中さん(誰かは知らないけど)すいません!!このボケ親父が罰あたりな事しまして!」
「失礼な奴だな。もう使わない物だろうが」
「そういう問題かぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「・・・・いらないのだったら返せ」
ここまで否定されて流石の犬神さんも腹が立っているようです。
着物の返却を求めました。
しかし龍斗は文句を言いつつも、しっかり着物はゲットしております。
更に何かしら手を加えようとしておりました。
「・・・あれだけ言っておいて何をしてるんだ」
「え?いやー何か背中が寂しいんで絵でも描こうかと」
結局文句は言っても使うようです。
「・・・・・・・勝手な奴め」
「ハハハ。有り物は使わないとねー。で、龍でも描こうかと思うんだけど、どうっすか?」
こう見えても龍斗は絵が上手なのでシャコシャコと龍を書き始めました。
ちなみに染料など買えないので墨です。
水落ちしそうです。
更に白黒着物に薄墨龍でベラボーに辛気くさい着物となりました。
「・・・・・本当に陰気な着物だな」
「・・・・・・元が悪いんだよ、元が」
「まーいいのだ。明日はコレで行くし。見ようによってはシックでいいじゃん」
「・・・・・」
犬神氏が顎に手をやってしばらく着物を凝視しておりましたが、やおら筆を手にすると何やら書き足しました。
サラサラ・・・・
「何ー!!この胸の所のT狼Uの字はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「いいだろうが派手で」
「いや地味!もの凄い地味!」
犬神が手を加えた事により、龍斗の着物は、背中から左胸にかけてT龍の絵Uそしてその逆側の胸にはT狼Uの文字と言う。
アンタはどっちやねん!
とツッコミたくなる着物となりました。
「あーー変な着物にーーーーー」
「狼の守護付きだ感謝しろ」
「意味わかんねぇ!こんの馬鹿親父!!!!」
龍斗は泣いておりましたが、犬神は満足そうでした。
その後、この着物は散々奥継にからかわれる事になるのですが、この話しはまたいつか。
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