「あけましておめでとう」
大晦日
「寒いー」
「寒いねー」
コツコツと革靴の音を響かせて東京を巡っているのは、龍麻と壬生。
「えっとこの道どっちだ?」
「待って地図見るから」
立ち止まって電柱の明かりで地図を広げる。
「向こうだね」
「おっし」
道を確認してまた歩く。
所々で初詣の人達とすれ違う。
「おめでとうございます」
「おめでとうございます」
知らない人と夜中に言葉を交わすというのも不思議な話。
「寒いーーー」
「それさっきも言ったよ」
「でも寒くないと気分でないよな」
「それは確かに」
自販機の缶コーヒーで暖を取りつつまだまだ歩く。
「大晦日に何か飲みながら歩くのって大好き」
「いつもより美味しく感じるね」
「大晦日マジックだ」
どこかで除夜の鐘が聞こえた。
「あー鐘が鳴ってる。あれって0時前に打ち終わるんだっけ?0時から打つんだっけ?」
「過ぎてからじゃないかな?紅白の後聞いてた気がするよ」
「そうだっけか?」
やっと目指す家が見えた。
「ポスト投函ー!」
「・・・・龍麻、声は静かに」
「へーい」
龍麻が入れたのは年賀状。
そしてここは仲間の家。
そう、二人は東京中に散らばっている仲間の家に年賀状を配達してるのでした。
「さー次行くぞー」
「・・・・元旦に届かないからって自ら入れに行かなくても良いと思うんだけど」
「駄目だ!年賀状は元旦に届いてこそ華なんだから」
「・・・・・・だったらもっと早くに書いたらいいのに」
「その意見は却下します」
「・・・・はぁ、寒いねー」
「だからさっさと終わらす。次はどこかね」
「・・・・・練馬区」
「大晦日は電車が動いてていーねー」
「・・・・・・そうだね」
「終わったら如月の家に寄ろうな」
「何で?」
「お風呂沸かしてくれるってー。暖まって帰ろう」
「・・・・いつの間にそんな話しに」
「お前の知らない内に世界は動いているのさ。雑煮もあるって」
「如月さんもマメだね」
「忍者だからな。村雨も来てるらしいから朝まで麻雀でもすっか?」
「・・・・僕は寝かしてもらうよ」
「寝ると言えば、さっきからマジで眠い」
「・・・・・・龍麻。寝たら放って帰るからね」
「あ、それは嫌」
「さっさと終わらせようね」
「へいへい」
足早に次の目的地に向かう二人の側でまた鐘の音が聞こえました。
「今度はTVの音だ」
「だね」
「そいやー寒い寒いで言ってなかった。あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます」
「今年もよろしく」
「今年もよろしくお願いします」
「出来ればずっとかなー」
「出来ればね」
またどこかで鐘が鳴りました。
『あけましておめでとうございます』
新年トップは龍麻と壬生
今年も色々あるとは思いますが、どうぞ宜しくお願い致します