「水の音」

 海の夢を見た
 青い水面
 赤い水
 沢山の舟
 小さな声と大きな音
 沈んでいく・・・・

 ドシ!!

 「ふぎゃっ!」
 モロにお腹に喰らった衝撃で目が覚めた。
 ムクリと起きて、右を見れば知盛の足が。
 左を見れば将臣くんの腕が。
 それぞれ人の上に直撃している。
 さっきの衝撃がどっちのものかは知らないけれど、
 「重いって」
 とりあえず、ゴロンゴロンと二人の体を自分と逆に転がす。
 かなり乱暴に動かしたが二人が起きる様子はない。
 やれやれと呆れながら、さっき見てた夢を思い出す。

 海の夢

 何だか嫌な感じがする。
 ひどく自分が無力に感じる。いや、感じた。
 白龍が万能でないように、神子だって万能じゃない。
 何だろうこの気持ちは。

 「寝よう」
 考えてどうしようもない事は寝るに限る。
 そう思いながらも目は冴えて。
 転がってる二人に布団をかけ直し。
 月明かりに映る顔なんかをぼんやり眺めてみた。

 (男って三年でやたら大人になるもんだ)
 (トモチーも寝てれば美形なのに)

 
 それから、鼻つまんで苦しんでる顔みて喜んだり。
 ほっぺたとかびーっと伸ばしてみたり。
 二人の髪の毛を三つ編みにしてみたり。
 やっぱり三人でこーしてるの好きだなーとか思ったりもして。

 そんな一人遊びをしてるうちに、良い感じの眠気も戻ってきたので寝る事にする。

 (大丈夫。大丈夫。私には白龍の逆鱗があるもの)

 そこで、唐突に思い出した。
 どれだけ時間を遡っても変えられない未来もあるのだと。
 眠気が去った。
 隣で寝てる知盛をゆすった。

 「トモチー。トモチー」
 「・・・・・〜〜あ?」
 「あのね、海の底に都なんて無いよ」
 「・・・・・・何言ってんだ・・寝かせろ」

 知盛はそう言って背中を向けて寝てしまった。
 その背中を足で蹴って言う。

 「どうしても行くんなら私も連れて行って」
 「・・・・わかったわかった」

 こっちを向かない気のない返事に、朝になったら忘れてる感がひしひしと感じられる。
 それでも仕方がない。

 
 その時になっても知盛は私を連れて行かない。
 それも仕方がない。

 
 今ここで何をしても先の事は変わらない。

 (この晩を繰り返すのは今夜で7回目だ)

 思い出したら、泣けた。

 二人を起こさないように泣くのは、何回やっても難しいと感じた。





初めての遙ときSSです 
色々と夢を見ています
何でこの三人が同じ部屋で寝泊まりしてるのかとか、そっとしておいて下さい

この話の最後は無印の知盛ED(と言うかラスト)
一枚絵も無く海の藻屑の知盛が哀れです

望美は運命を上書き出来るのが強みですが、逆にどうやっても変えられない時の葛藤はもの凄いだろうと思ってます
なまじ変えれるだけに出来なかった時の喪失感は人より重いだろうと
繰り返しても繰り返しても最後死ぬけど、やっぱり繰り返す
その度に泣いて、また繰り返す

「トモチー」はウチの望美が使ってる知盛の呼び方です
ウチの望美はずっと「とももり」を「とももち」だと思ってます(そして私も漢字登録を間違えてしました)
将臣は教えてもまた間違えると思って放置
知盛はいつ気付くんだコイツと思ってますが、面倒なので放置