「花火が上がったよ」
司馬葵が自室でマックをペコペコしておりましたら、外でドンと音が鳴りました。
最初は雷でも鳴っているのかと思いましたが、その音はドンドンと規則正しく鳴り続けました。
「・・・・・・?」
そこへ中お姉ちゃんが飛んで来ました。
「葵、葵。来てごらんすごいよ。花火が上がってるよ!」
そのまま司馬の手を掴んでベランダまで連れて行きました。
「おお、葵も来たかね」
「キレー」
そこにはすでに父と下姉が居りました。
ヒュ〜〜〜〜・・・・ドン!
言ってる間にまた1発上がりました。
空に大きい花が咲きました。
「凄いー。キレー」
デカイ物好きの中姉はかなり興奮してるようでした。
「でも今日何かあったかな?」
よく見ればちゃっかりウィスキーなど片手に持ってる父が空を見ながら呟きました。
「知らなーい」
「・・・・・・?」←知らない
「いいじゃんどうでも綺麗なんだし」
中姉はどうでもよさそうでした。
「でもね、こうして呑気に見てて、本当は花火倉庫が火事で下は大惨事だったらどうするよ」
「・・・・・・・なんでそうネガティブに考えるかなこの父親は」
「あ、近所の人も出てきたー」
見れば暗い中其処ここの家からも花火の音を聞きつけて皆出て来ておりました。
そして花火が上がるたびに歓声が上がりました。
ヒュ〜〜〜〜・・・・ドンドンドドン!
「きゃー、キレーキレー!!」
「おー凄いな」
「・・・・・・・♪」←楽しいらしい
「凄いー」
どうして人は花火を見ると「綺麗」と「凄い」しか言わなくなるのでしょうか。
ドンドン・・・・・ドン・・・・
花火は連続してどんどん上がります。
近所の人もこの花火が何で上がっているのか解らないようで、上がる合間にはその事を話しておりました。
「新聞に載ってたかしら?」
「阪神優勝の前祝いとか?」
「あれ、臨空の方よね」
「お母さん、なんで花火上がってんのー?」
「ちょっと家空けて出てきちゃったわ」
「あ、ウチもよー」
「お父さんも呼んで来ましょうか」
「・・・・空き巣入り放題ね」
「と言うか阪神優勝て」
「そう言えば下のTVつけっぱなしー」
「・・・・・・」←PC接続したままだなーと思っている
・・・・・・ヒュ〜・・・・・ドン!
「キレイキレイ!!」
「おーハート型」
「凄いねー葵ちゃん!」
「(うんうん)」
人は花火が上がると思考が中断されます。
さて新宿区でも花火は上がっておりました。
「壬生ー!!花火ー!花火ー!!!!!」
こちらでは花火好きの黄龍が興奮しておりました。
「はいはい」
「おー!また上がったぞー!!!玉屋ーーーー」
「・・・・龍麻ご近所迷惑」
「気にするなこのマンションに住んでるのは僕らだけだ」
と言うわけでこちらも花火見学です。
ヒュ〜〜・・・・・・・・・・・ドン!
「スーゴーイー!花火ー!ビバ花火!」
「龍麻は花火が好きだね」
双龍は黄龍の為にはっさくを剥いてあげながら見てました。
「花火はー、火薬の最も美しい使い方なのだと昔誰かが言ってました。僕もそう思います」
ドンドンドン・・・・・・
金色の枝垂れ柳が空に弾けます。
「ミサイルとか全部花火になっちゃえば良いのにな。そう思わん?」
「そうだね」
「そしたら軍人は皆花火職人に転職だ!」
「・・・・それは日本人有利だね」
「おう!」
ヒュ〜〜〜〜・・・・・・・・・・ドォン
「わー!今の凄い!!!!見た見た見た????」
「・・・龍麻、とりあえず落ち着いて」
「キレイーーーーキレイーーーーキレイ過ぎる!!!!!」
「・・・・・・(凄いはしゃいでいる)」
黄龍も花火を見ると思考ストップみたいです。
世界中のロケットが花火に変わってしまえば良いなと思いつつ。
花火を見ていたそんな夜でした。
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