2023年お正月SS

2022年大晦日の如月宅

ほっかむりをした如月がはたき掛けをし、龍麻が雑巾と新聞片手に窓を拭いております。

今日は大晦日。
こちら如月骨董品店も大掃除の真っ最中です。

「大掃除だというのに壬生も御門もおらんとはどういう事かね!」
龍麻が文句を言います。
「壬生は仕事納め。御門はいつものコミケだ」
二人とも留守のようです。

「壬生は仕事やからしゃーないけど、御門はどうなんよ!一番散らかしてるのあいつやん!」
ゲームとか雑誌とか漫画とかその他もろもろを出しっぱなしな御門です。

「帰ったら自分の場所は掃除させるつもりだ」
「……御門が巣を作ってるの今まさにお前さんが掃除中の居間ですが?」
「……倉庫を掃除させるか」
「御門が素直に掃除するとも思えんが、賛成」
みんな大嫌い如月家の倉庫掃除。


「雑巾をゆるめにしぼって拭いた後に新聞で拭くとピカピカになる。楽しい」
「龍麻、上の部分に拭き残しがあるぞ」
「背が届かないんや。壬生が戻ってきたらやってもらう」
「踏み台を使えばいいだろ」
それもそうかと押し入れからはらぺこあおむしの折りたたみチェアを出してきます。

キュッキュ……

「今、気づいたんやけど」
「どうした?」
如月がはたきから箒に持ち替えて畳を掃いています。

「玄武の家を黄龍が掃除してるって変やない?僕お前の上司でございますですよ!?」
「ここがまだ曇ってる」
「今から拭くわ!」
新聞で拭きます。
「玄武!お前は玄武で僕の部下!!わかっておろうかね!?」
「龍麻。掃除が終わったら貰い物の羊羹でも切ってお茶にしようか」
にっこり、
「わーい!羊羹ー!」
ごまかされました。ちょろい黄龍です。


羊羹を食べた二人が、掃除の終わった綺麗な部屋でくつろいでいると御門が戻ってきました。

「ただいま戻りました」
「おかエリー」
「おかえり」

「お土産です」
持ち手が限界の紙袋を渡されます。
受け取った龍麻が中身を見ましたら、
「エッチな本だ!」
「エッチな本ですよ!」
エッチな本だったようです。

「ちなみにコミケは18禁本ばかり売ってるイメージがありますが、健全な本のほうが多いですよ」
「あ、はい」
実際そうらしいです。


とりあえず壬生が帰ってくるまで夕飯も始まらないので三人で戦利品の本を読みます。

「丸のみってエッチなん?」
「その人のはR-18でもGのほうですから」
「よくわからんけど、消化される描写が細かくて面白い。人間丸のみにするとこんな感じかー」
「するなよ」
「しないでくださいね」
「僕は育ちがいいから、ちゃんと噛んで食べますよ!」
((人を食べないわけではないのか))

黄龍くんは雑食なのでわりとなんでも食べます。


「ただいま帰りました」
そうこうしてるうちに壬生も帰ってきました。

「おかエリー」
「おかえり」
「おかえりなさい」
「ただいまです」

「ところで、妖魔退治の仕事納めってなんぞ?」
「一応、事件が起きそうなところをパトロールしてきたけど」
夜回り的な仕事だったようです。

「心配せんでも元旦に妖はちょっかい出さんと思うぞ」
「どうして?」
壬生がコートを脱ぎながら聞きます。

「簡単に言うと、元旦は神様達も浮かれてる。おまけに年神様は仕事始めやからめっちゃ張り切ってる」
「そんな中、一介の妖怪風情が水をさしたらどうなると思う?」
龍麻がにやりと笑います。

「……消される?」
「消されたほうがマシやと思う」
どんな目に合わされるんだ、と御門と如月は背筋を寒くしました。

「なんで、まー三が日までは壬生に緊急の仕事とか来ないと思う」
「うん。それは嬉しい」
龍麻と炬燵でのんびり出来るならそれに越したことはないです。

「お正月はユザワヤの福袋を買いに行きたいしね」
「却下ー!!!」
そこは早々に却下しておきます。
「ユザワヤは忘れて、とりあえず御門が買ってきたエッチな本を読むがいい!」
「僕的には龍麻が一番エッチだよ」
「いいから!そういうのは!」
年末もいつもの壬生です。


お夕飯。

「わりと大晦日の夕飯って何か悩むよな」
と言う龍麻の前にはコロッケとシュウマイとゆで卵と黒豆があります。
冷蔵庫の残り物を集めました。
「この後に年越しソバもありますしね」
「我が家はいつもおでんだったよ」
と壬生。
「なんでおでん?」
「残りのお汁でソバを作れるから」
「それは……効率的なんか?」
「温まるからいいんじゃないか」

作者の家では大晦日からお節食べてる年もありました。


「あとは0時前にソバ食べて。除夜の鐘つきに行って、昆布もらって寝る!完璧!」
「コロナでお神酒のふるまい無くなったのは残念ですね」
「今年は復活してるんじゃないか?」
「龍麻。外行くときはマフラーしてね」
「するとも!マフラー巻く機会は一瞬でも逃さん!」
首巻きノルマがあるので大変です。


「あーやっぱり大晦日とお正月はいい。今年あった問題が一旦リセットされる感じが嬉しい」
畳をゴロゴロして嬉しそうな龍麻を見て、壬生も嬉しそうです。

「元旦は財布の紐も緩むので僕も好きだ」
と如月が福袋の在庫を数えながら言います。

「新年を迎える前に如月に一言いいたいのですが、いいですか」
御門が挙手しました。

「はい、御門くん。なに?使えないアイテムをさも大事そうに福袋に詰めるなとか、そんなんか?」
「それも言いたいですが、こっちのほうが気になってます」
と手にしたのは今年如月からきた年賀状です。

「あなた、いい加減人の名前の前に「顧客番号」入れるのやめなさい」
宛名の「御門 晴明」の前にがっつり「T-0022」と番号がふってありました。

「仕方ないだろう。顧客リストから住所を印刷してるんだ」
「そもそも友達を顧客リストに入れるな!!」
龍麻も思うところがあったようです。

「それ見るとちょっと寂しいですよね」
「寂しくはありませんが、「こいつの中で自分は顧客0022なのか」と思うのが嫌です」

「いいか、一度僕の客になった者が逃げられると思うな!」
「どういう理屈やねん!!!」


ちなみに頭文字の「T」は「友達」の「T」です。
なぜ日本語なのかは謎です。


本年もよろしくお願いします。



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