「2014年お正月あいさつ」

12月31日
夕方というには夜に近い時間。
ここ如月家では、今頃大掃除をしています。

そして、その居間で龍麻が死んでいます。
「……龍麻、大丈夫?」
拭き掃除中の壬生が声をかけますが、畳に突っ伏したまま動きません。
「龍麻が掃除するとよけいに散らかるからな。大人しいならそのまま死んでいてくれ」
ほっかむりに割烹着ではたきを持った如月が忙しそうにそう言って去って行きました。
「今年の冬コミなど天気はいいし温かいでベリーEASYモードですよ。情けない」
片付けろ、でなければ庭で焼く、と如月に脅された御門が薄い本を大量に抱えて龍麻を踏みつけました。
「気温がどうとかちゃうわ!!」
龍麻が復活しました。

「壬生、聞けよ!聞いてよ!」
「は、はいはい」
雑巾をバケツにほりこんで、壬生が正座します。
「御門が無理矢理人を拉致して行きよってな!なんか男が!怖い目した男がいっぱい!気が黒い!黒と言うか濁ってる!濁ってるのにまっすぐで澄んでんの!怖い!」
「しかも御門の机だけシャッターの方向いてて、開いたら男がぎょうさん居て!人!人で壁が出来てた!」
怖かったー、と壬生の膝にしがみついて泣きます。よっぽど怖かったようです。
「……お疲れ様」
よく見ると龍麻の金色の鱗が微妙に黒く染まっていました。
(……これは、言ったほうがいいんだろうか……)
本人は気づいていないようです。

「御門、今日は売れたのか?」
「ええ、もちろん。龍麻効果で龍脈も味方したのかすべて完売です」
シャッター前三日目最大手の売り上げはいかほどのものかわかりませんが、かなり凄いよ!という事だけはわかります。

「もう嫌だ、コミケとか死んでも行かない」
「貴方のコスプレ好評でしたから、夏もお願いしますね」
ちなみに女装コスプレです。
「嫌や!と言っておるがな!」
「夏は壬生も来なさい。列の整備をしてもらいます」
「はぁ……龍麻が行くのなら」
「行かん!」
「夏は僕も行ってやろう。売るのは得意だ」
「ええ、お願いします」
「僕は行きませんからな!!」
龍麻が叫びますが、着々と夏の外堀が埋められております。

「コミケ怖い……コミケなんか滅んでしまえ……」
「有明周辺の利益を消滅させる気ですか」
有明付近のコンビニはコミケだけで年間収益の6割を稼ぐとか何とか。

それはそれとして、四人で黙々と掃除し(龍麻と御門は役立たずなので実質二人)大掃除が終わりました。
今日の夕飯はお節のあまりです。
「……これを食べると庶民の家の大晦日だと思いますね」
「文句があるなら自分で作れ」
「庶民が嫌なら家へ帰れ」
「…………」←何を言っていいかわからない壬生
「別に嫌とは言ってないでしょう」
楽しいお夕飯です。

で、それぞれネットしたり紅白見たりゲームしたりと適当に過ごして、おそばの時間です。
「毎年思うんだが、年越しそばって何時に食べるのが正解なんやろ?」
「さあ?」
作者宅では11時くらいに食べてます。

「今年は海老天ではないのですね……」
珍しくしょんぼりの御門。
「……わかった。揚げてやるから待て」
に、ほだされる龍麻。
「龍麻、ついでにかき揚げも追加してくれ」
「太るぞ……」
今年の年越しそば。そば&油揚げ&ネギ&かまぼこ。
追加で海老天とかき揚げ。
お好みでとろろ昆布と揚げ玉。

ずるずるずるずる…………。

「夜に食べると何でも美味しく感じるのはなぜなのか」
「なんだ、僕のそばに文句あんのか」
「龍麻の作る料理はなんでも美味しいよ」
「だそうだ、良かったな龍麻」
「壬生の発言は流せ!」
龍麻が真っ赤です。

11時45分。
「そろそろ、年始に出かけるか」
と如月がコートを着始めますが、
「眠いので……」
「今日は悪夢のようにハードやったから疲れた」
御門と龍麻がこたつにもぐりこんで出てきません。

この場合、無理に引きずり出すよりも、
「よし、二人は留守番だな。壬生、行くぞ」
「え?あ?はい」
壬生だけを連れ出そうとすれば、
「ちょっと待て!!」
「どうした?眠いなら寝てていいぞ」
案の定龍麻が釣れました。
「行く行く、行くから待って。御門も起きろ!!」
「……私はいいです」
「良くあるか!陰陽師が神仏関係をブッチすんな!」
寂しがりなので、御門も強制参加です。

四人で仲良くお参り。
「何をお願いします?」
「はよ帰って寝たい。あと、夏コミは出ません」
「夏のコミケが受かりますように、龍麻強制参加で」
「宝くじが当たりますように、楽して大金が手に入りますように」
(……夢がないな)
ちなみに壬生のお願いは「龍麻の鱗が元の色に戻りますように」です。

缶コーヒーをちびちび飲みながら家に帰ります。
「冬の外で飲む缶コーヒーの美味しさは格別だと思う」
「味はいいのですが、年々一缶飲み切れなくなるのが……」
「言うな、歳の事は言うな……」
「歩き飲みとか出来なくなりますよね……」
リアルで今の歳とか考えたくない四人です。

布団をひいて、寝る前に、
「龍麻、一言」
「へい」

「あけましておめでとうございます。本年も最凶の骨屋をよろしくお願いします」

「以上、言ったから寝る!コミケつかれた!」
「冬コミなどヌルゲーですよ。今年は夏コミの地獄を見せてあげましょう」
「いりません!」

今年もよろしくお願いします。


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