「2012年お正月挨拶」
如月家、元旦。
いつもの四人がお節とお雑煮を囲んでます。
雑煮をもぐもぐ食べながら龍麻がぽつりと言いました。
「・・・お節が好物ですって奴を聞かないよな」
「栗きんとんは好きですよ」
カレー用スプーンで自らの皿に山盛ってる御門が返します。
「やから、栗きんとんが好きとか、伊達巻が好きとか、黒豆はいくらでも食べれるとかはあるけど。お節が好きで好きで正月以外にも毎日作って食べてます、てな人間ておらんよな。言うか、御門は栗きんとんとりすぎ。それは四人分!」
横から半分ほど奪い返します。にらんでますが龍麻も栗きんとんは好物なので無視です。
「作るのに手間がかかるからじゃない?」
小皿にちょっとづつ全部取ってちみちみ食べてる壬生がそう言うと、
「そもそもお節自体が美味い物じゃないだろ」
さっきから雑煮しか食べてない如月が切り捨てました。
「僕が朝の五時から作ったお節にご不満かー!!」
頑張って手間隙かけて作った身としては反論します。
「数の子と海老は好きだ」
「海老と数の子以外も食えや」
「じゃあ、田作りは僕が」
「お前は地味な物が好きだよな」
「龍麻の作るの美味しいから」
「壬生は良い子じゃのう。もっと食え」
小皿に山盛りの田作りが置かれました。
「そればっかりはちょっと・・・」
「赤貝は珍しいですよね」
口が開いてなくても大丈夫なのが赤貝です。
「島根の友達が送ってくれた。あっちでは正月に食べるらしい」
「美味しいですよ」
「この雑煮の海苔もそうだよね」
雑煮も島根仕様です。
「ところで正月と言えばあるだろう」
数の子をボリボリ食べながら如月が問います。
「年始参りか?」
「食べてからでしょう?」
「今年も着物着るよね?」
「着る着る」
「違う!あるだろう大事なものが、お年玉が!」
何を力説してるんだこの男は、と言う顔で三人が見ています。
「と言うわけで、お年玉を」
「何でじゃ!」
目の前に出された手をはたきます。
「こんな時は家長である貴方が渡す側じゃないんですか?」
御門が栗きんとんを食べながら正論を言います。
「金を渡すくらいなら、家長などくれてやるわ!!」
えらい事を堂々と言われました。
「落ち着け」
「普通は年上から渡すんじゃない」
「年上・・・」
壬生・四月生まれ
龍麻・六月生まれ
御門・九月生まれ
如月・十月生まれ
「壬生か・・・さあ、このポチ袋に入れろ」
A4の袋を渡されます。
「それ書類袋じゃ・・・」
「落ち着きなさい」
「味付海苔でも入れとけ」
「そいやー・・・」
龍麻が何かを思い出しました。
「村雨が国際宅急便でなんか送ってきてたな」
ガサガサと封筒を開けると、中からポチ袋が四つ。
ギャンブラーからのお年玉です。
「村雨・・・素敵!」
「すごいね村雨さんは」
「田舎の祖父母ですかアレは」
「中身は・・・五千円か・・・」村雨株が急上昇しました。
「さて、懐も落ち着いたところで。年始の挨拶をするぞ」
ポチ袋を胸に納め、キリッと家長顔に戻った如月がしめます。
「明けましておめでとうございます」
「おめでとー」
「今年も最凶の骨屋をよろしくお願いしますよ」
「お願いします」
今年もよろしくお願いします。
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