「神頼み白黒兄弟と末っ子」

とあるお休みの日。
ベットで惰眠を貪ってる白黒の兄をトウヤが起こしにきました。
「おはようございます。良い天気ですよ」
「おはようトウヤ。まだ眠い」
「おはようございます、トウヤ様。おやすみなさいまし」
「寝るんじゃない」
もう一度布団に潜り込もうとする二人を引きずり出して着替えさせます。
「今日までなんですから、はい、しゃんとして服を着替える」
「今日までってなに?」
クダリの問いには答えずにピシっとアイロンがあたったシャツを渡します。
「はいはい、着替えて、朝ごはん食べて。用意が出来たら行きますよ」
「どちらへです?」
ノボリの問いにもトウヤはにっこり笑うだけでした。

二人が朝ごはんのホットサンドを食べてる間にトウヤはせっせと何やらバスケットにつめています。
「トウヤ、どこか行くの?」
「ええ、今日までですから」
「ですから、なにが今日までなのですか?」
「五人に一人ご利益キャンペーンですよ」
「「なにそれ?」」
なんでしょう。

「トウヤ……まだ」
「まだです。と言うかまだまだです」
「トウヤ様。少し休憩いたしましょう」
「口開かないで足を動かしなさい」
朝ごはんの後、空を飛ぶで飛んで来たのは立派な石の階段前。
どのくらい立派かというと、金毘羅さんくらい。
「まさかの1368段!」
「さすがはクダリさん。よくご存じで」
「本当に1368段もあるのですか!」
「いえいえご安心を。この間数えましたが1700段くらいでした」
「「…………」」
「こっちの方が多いじゃん!」
「それは人が登れる段数ですか!!」
「はい、お茶飲んで頑張りましょうね」
お茶を差し出すトウヤの顔は有無を言わせぬ笑顔です。
「……トウヤの笑顔が怖い」
「……同感です」
お茶は砂糖入りの麦茶でした。

「つ……ついた……」
「ひ、膝がガクガクいたします……」
這うような体で頂上にたどり着いた二人とは対照的に、トウヤは賽銭箱の前で踊ってました。
(あの子は何をしているの……)
(トウヤ様は止まると死ぬご病気でしょうか……)
「あ、やっと来ましたね。もうlove&joyを踊り終わるかと思いましたよ」
「なんでそんなに元気なの!」
「若いから」
「先ほどのダンスはyoutubeに投稿してもよろしいですか」
「よろしくないです」
「じゃあ、僕たちの前で最初から踊ってよ!」
「なんでキレてんですか」
疲れているからです。

「さあ、そんな事よりお参りしないと。ご利益還元セールは今日までですよ!」
「だからそれなに!」
「トウヤ様。まずはご説明を!」
「こちらの神社の神様が現在『参拝客ありがとうキャンペーン』中。なんと!お参りにきた五人に一人ご利益が!なんたる太っ腹!それはお参りしないとでしょう!」
「「……はい」」
勢いに押されました。
「はいお賽銭」
二人に五円ずつ。

ガランガラン←鈴
ちゃりーん×3
ぺこぺこ←二拝
パンパン←二拍手
「……トウヤ、これって何お願いしてもいいの?」
「ここはオールマイティな神様ですよ」
「それはようございました」

「トウヤがお嫁さんにきてくれますように!」
「トウヤ様が妻になってくれますように」
「両側二人の願い事がかないませんように」
「「え?」」
ぺこ←一拝

ピンポンパンポーン
『クダリ、トウヤ、当選オメデトウゴザイマス。マタ来イ』
ポンポンポンポン……。

「あ、願いがかなった」
「今の?」
「神社の放送じゃないですか?」
「有難いご神託ですよ」
あまりありがたみがございません。

「さーご利益も頂きましたし帰りましょうか」
さくさく帰り支度をするトウヤをとりあえず押しとどめます。
「で、トウヤ何がどうなったの」
「僕とクダリさんが当選しました。ノボリさんは残念ながら落選です」
「はい」
「はい」
「で、クダリさんの願い事は叶ったのですが、僕の願い事も叶った為、相殺されました。以上!」
「「以上!!」」

((骨折り損……))
「叶ってよかったですね。さあ、帰りましょう」
「トウヤ!ワンモア!」
「もう一度チャンスを!」
「応募は一人一回までです。次のキャンペーンに期待しましょうね」
「次っていつ」
「確か……800年か……1000年後?」
「生きておりません!」

「まあまあ、落選した人の中から抽選で5名様にストラップ当たるそうですから」
((微妙……))
「そもそもトウヤが変なお願い事するのが悪いと思う」
「トウヤ様意地悪でございます」
「でも僕が本気の願い事したら……お二人は今頃首と体が別々になってますよ」
「なんで?」
「なにがでございますか?」
「今まで秘密にしてたんですが……」
なぜかトウヤが頬を赤らめて言います。
「ノボリさんとクダリさんが……首だけになったらいいなって思ってたんです」
「ごめん!意味がわからない!」
「ご説明を……いえ!怖いので結構です!」
「こう、首だけ植木鉢とかに植えてですね、ご飯あげて可愛がって育てたいんですよ」
「言わなくていいから!心の中にしまってて!」
「体は体で、頭の部分にムーバ・グローブとか置いとくとそれはとてもセクシーで良いと思います」
「もちろん土星でもいいですし、時計も素敵です。花瓶だったら毎日違うお花さしてあげますね」
トウヤまさかの異形頭好き。
「もちろん!映画泥棒とか大好物です!」
「知りたくなかった」
「でも、首だけ、首なしになったら肩こり解消されると思いますよ」
「頭なくしてまで解消したいとは思いません!!」
頭を支えるというのが肩への負担になってるとかなってないとか。

「もうトウヤ怖いし、早く帰ろう!」
「そうでございますね!帰りましょう」
「でも異形頭って一ジャンルなんですよ」
「「それもういいから!!」」
兄たちに両側から手を引かれて前のめりに階段を下りていく後姿を、神様が「またね」と見送りました。

なお、熱く願われたところで、流石に首だけ人間を生産する力はございません。

おまけ

「首だけって浪漫なんですよねー」
「どれだけ見てもダメなものはダメ!」
「あきらめてくださいまし!!」
しばらく弟が包丁片手に怖い感じ。

「譲歩しますので、ギアステ定年退職したら考えてください」
「考えたげるから、その時はトウヤ僕の奥さんね」
「ちゃんと結婚してくださいましね」
「首とだったら結婚したげます」
なお夫婦の営み回避の可能性。



昔、女神の生首を育てるゲームがありましてね。そんな感じで育てたいと思っているトウヤです。
本気で願い事が叶うなら「Portal3」とか「魔人帝都帖」とかVitaに「moon」と「真メガ3」移植とか、それより日本が景気よくなって欲しい
なんかそれで全部の願い事叶いそうな気がする……