「ところてん」
「芭唐、どちらか選びなさい」
黒くて固そうな肉の塊がそう言って俺を見下ろした。
「そうよ、貴方の好きな方でいいのよ」
細い細い白ネギみたいな女がハンカチを目にあてながらそう言った。
俺はどっちも選びたくなかったし、そもそもココに居たくなかった。
黙りを決め込んだ俺に豪を煮やしたのか黒い肉が立ち上がって、ゴウゴウと耳障りな声を上げた。
「何でさっきから黙っているんだ、誰の為にこんな話し合いをしてやってると思っているんだ。大体お前のその目つきは何だ、それが実の●ж:にする目か」
気持ち悪い。
白ネギがダラダラと液体を流しながら弱々しく言った。
「お願い貴方止めて頂戴。この子も私も傷ついているのよ。お願いよ芭唐せめてノヌノハノさんの方を見て頂戴」
ああ、気持ち悪い。
帰ろう、早くあの家に帰ろう。
逃げるようにソファから起きあがると出口に向かった。
「いけませんよ。芭唐さん、旦那様と奥様のお話を聞きませんと」
いきなり目の前に巨大なヤモリが両手を広げて通せんぼした。
爬虫類の黒目しかない目が俺をギョロリと見た。
押しのけようとした俺の腕にドロリと何かが乗っかって、見ればそれはヤモリの崩れかけた手だった。
半透明の皮膚は下の血管や神経を写して吐きそうな程気色悪かった。
「うわぁぁぁ」
「「まぁちぃなぁさぁいぃぃぃぃ」」
いつの間にか後ろに来ていた肉とネギの体も半透明のゲル状の物体になっていた。
そして生暖かくてドロドロとした手で俺の肩を強く掴んだ。
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
叫んでその肉塊を振り払おうとしたけれど、それはまるで蛭のように肌に吸い付いて、俺は半狂乱になった。
パチン!
イキナリ場違いな音がして、した方を向くと、無表情なシバちゃんが頭の上で箸を持って立ってた。
(あー割り箸割った音か)
何か普通にそう思ってシバちゃんを見てたら、シバちゃんはツイっとヤモリ女の腕を
箸でつまんだ。
そんでそのままパックリ食べた。
『あ』
俺もヤモリも肉もネギも声をそろえてそう言った。
つるるるるるるるるるん ごっくん
そして心太を食べるみたいにつるんと飲み込んだ。
ツイ
今度は肉の番。
つるるるるるるるるるん ごっくん
ツイ
最後ネギ女。
つるるるるるるるるるん ごっくん
そして当たり前のように袖口で口を拭くと、俺の方を見て
「 家 に 帰 ろ う か 」
と言った。
そこでやっと俺は夢を見ていたのだと解った。
ついで、シバちゃんが意外と俺の事を大事に思ってくれてんのも解った。
なんだこの話しは
とりあえず、ウチの御柳は家と家族が嫌いと言うか苦手と言うか
両親がドロドロしてるのは、捨てたいけど捨てれない御柳の葛藤とかそんなんだと望ましい
司馬は、んなの気にしないから食べます、ぺろりと
司馬家で幸せなら実の家族捨てても良いと思います
嫌な場所から逃げて楽な所に居るのは良い事だよ
本当は新刊の書き下ろし用に書いてたやつ
ページ半端だったので入れれなかった
個人的にはところてんよりくずきりが好きです