「すいす」
スいスで療養中の上お姉ちゃんからハガキが来た。
Tとてもとてもお姉ちゃんは暇しているのでお見舞いにいらっしゃい 上姉U
行く事にした。
すイスには昔行った気がするが道を忘れているので辰羅川くんに聞いた。
「スイスですか。それはまた遠いですね。ノープロブレム、私が地図を書いて差し上げましょう」
辰羅川くんが地図を書いてくれたのでそれを見て行く事にした。
キャプテンに明日の練習は休むと伝えた。
「スイスに行くのかい?それは大変だね。お休みの事は僕から監督に伝えておくから気を付けて行くといいよ」
今夜から行けば多分明日の朝には着くと思う。
兎丸にも言っておいた。
「スイスに行くの?僕行った事ないや。おみやげヨロシクね♪」
スイすのお土産は何だろう?
とりあえず自転車に乗って出発した。
制カバンが前カゴでゴトゴト言っている。
一度家に帰ってから行けば良かったと思った。
SUイスまでは遠い。
上お姉ちゃんの病気は心の病気で、治ったり治らなかったり、良くなったり良くならなかったりするらしい。
病院に居ると安心なんだそうな。
自分的には家に居て欲しいけど、お姉ちゃんは病院が一番好きだからしょうがないらしい。
好きだけど時々暇になるらしい。
自分も自分の部屋が一番好きだけど、一生そこに居るのはきっと暇だ。
だからお見舞いに行く。
途中の東急でお見舞い品を買った。
手を入れるとなごむ生物。
お姉ちゃんは気に入るだろうか・・・・?
ギィコギィコ・・・・
ス井スまでは上り坂が多いのでちょっと嫌だ。
でも帰りは速い。
そう思うとちょっと楽しい。
キィコキィコ・・・・
やっと平地になった。
上を見たら星がギラギラ。
夜になればサングラスは要らない。
と言うか夜の方が良く見える。
人に言うと不思議に思われるけど、自分は夜の方が良く見える。
数キロ先の車のナンバーだってハッキリ見える。
他の人が見えない小さい星だって見える。
野球の試合も夜にあればきっとどこまでもボールが見えるのに・・・惜しい。
(これはいつか監督に相談してみよう)
夜に試合。
ナイターじゃなくて、真っ暗な中で。
月明かりに白いボールは良く光るだろう。
グローブに収まった瞬間銀の粉も飛ぶかもしれない。
(これも人に言うと見た事ないらしい。結構飛んでる物なんだが)
取り留めなく考えていたら朝になった。
スイ巣はまだだろうか。
橋をさんじゅうろくも越えたからもうすぐかもしれない。
キィコキィコ・・・・・
なかなか着かない。
もしかすると地図が間違っているかもしれない。
道の真ん中に居た人に聞いてみた。
「ああ、これは大変良い地図ですね。もうすぐですよ。ご心配なく」
その紳士は紳士らしくジェントルメンに答えてくれた。
辰羅川くんの地図は間違ってなかったらしい。
疑ったのは悪かったようだ。
お土産リストに辰羅川くんを入れる。
キィコキィコ・・・・・
やっと病院が見えてきた。
到着。
キィ・・・
病院の自転車置き場に自転車を置こうとしたらそこにもジェントルメンが居て、
「自転車に鍵はかけなくても大丈夫ですよ。スイスには泥棒がおりませんから」
と優雅に答えた。
ここはジェントルメンの多い国だと思う。
病院の花壇には沢山の白い花が植わっていて、これは何の花だろうと思った。
そんな事は後回しにしてお姉ちゃんの病室に向かう。
ナースステーションで部屋を聞いたらナースのお姉さんが親切に教えてくれた。
「司馬&%#さんは6階の666号室です。右手のエレベーターから行かれると良いですよ。どうぞお気を付けて。」
そして「うふふ」と笑った。
「君君、ああ言う人を淑女と言うのですよ」
待合室の老人がそう言って笑った。
「そして私のようなのを年老いた紳士と言うのです」
ス椅子は紳士が多いらしい。
「スイスは紳士と淑女が作った病人と病院の国なのですよ。ご存じなかったようですね」
知らなかったので頷くと、それは可哀想にと言う顔をされた。
同情されるのは嫌いなのでさっさとエレベーターに向かった。
病院は朝早くても人が多い。
人の間をてくてく歩く。
やっとお姉ちゃんの病室に着いた。
ドアを開けるとベットがあって、上でお姉ちゃんが腕に刃物を当てていた。
・・・・・キットカット?
「・・・・それを言うならリストカットでしょう」
聞こえてたらしい。
それより腕を切るのは危ないので止めて欲しい。
「違うわよ。腕の中に蟻が入ってるみたいだから出そうと思ってね」
蟻。
アリ。
・・あり?
「・・・・・・・・この話しはここまでにしましょう」
それが良いと思います。
とりあえず、お見舞いを渡す。
「あはははは」
ひとしきり笑われる。
「ありがとうね」
褒められる。
特に何を話すでもなく、お姉ちゃんと
外見てた。
「もう帰る?」
頷く。
「またおいでね」
頷く。
クラブの皆にお土産を持って帰らないといけない。
「だったらここのお花を摘んで帰ったら?」
言った時には何本か抜かれていた。
これは病院の備品と言うのではないのだろうか。
「だって病院は病人の為にあるのよ?この花も病人の為」
言ってブチブチ引き抜く。
そこら辺に居た淑女も紳士も手伝ってくれたので、花壇はあっという間に丸坊主になった。
「ホホホ、久しぶりですわこんな事は」
「本当に気持ちの良い事です」
「さあ、紙に包んであげましょう」
「持ちやすいように紙袋に入れてあげましょう」
「枯れないように水も入れてあげましょう」
そうやって自転車のカゴは白い花でいっぱいになった。
「それじゃあね。お父さんと妹たちによろしく言っておいて」
頷く。
自転車に乗ってサドルを踏みしめる。
キィキィ・・・・
少しこいで振り向くとお姉ちゃんが入り口で手を振っていた。
小さい人形みたいだと思った。
帰りはびっくりするほど早く帰って来た。
(お父さんに言ったらピタゴラスの定理とか言われた)←理解不能
おかげで花は皆元気だった。
「これはエーデルワイスだね」
キャプテンがそう言って部室に飾ってくれた。
でも3日もする頃には皆病院に帰ってしまった。
多分アレは花じゃない。
次お姉ちゃんからハガキを貰ったら、お土産に花を持って帰るのは止めようと思った。
たまにこんなよく解らない話しが書きたくなります 上お姉ちゃんは病人です(メンタル系) スイスにはチャリでは行けません ま、そんな感じで |