「彷徨える阿蘭陀人」
司馬葵(15)はオランダ人ではありませんがさまよっておりました。
昼寝のできる場所を探してさまよっておりました。
そもそも最初は何故か風呂桶の中で寝てました。
しっかり布団も引いて。
なかなか不思議な感じがして良いなと思っておりました。
「葵。悪いけど今から湯船の掃除するから、どきなさい」
しかし父の無慈悲な一言で追い出されました。
次に廊下で寝ました。
ちょっと砂っぽい所を除けば、まあまあの寝床でした。
「ちょっと邪魔。退け」
しかし急いでいるらしい中姉に踏まれました。
仕方なく自室に帰るとベットの上には冷たい女王が居りました。
「にゃぁぁぁ〜〜〜ん・・・・」
彼女(スノウ・クィーン/雑種/雌)は退く気は無いようでした。
下姉の部屋は小綺麗で寝やすそうでした。
「葵ちゃん。ごめんねー今から友達が来るのー」
でも永住は無理でした。
中姉の部屋は、
「駄目」
入る事すら許されませんでした。
(ちらっと見た中はもの凄い散らかり様で入っても寝る事は不可能そう)
リビングに行くと風呂掃除の終わったらしき父が掃除機を掛けてました。
「あ、お風呂はもう水張ったから。あと台所も掃除するから行ったら駄目だよ」
さらに先手も打たれました。
庭では目太郎がはしゃいでおりました。
その姿を見ながら、
ここで寝るくらいならピラニアの居る池で寝ようと思いました。
(ちなみに池には本当にピラニアが住んでいる。どうも父の趣味らしい)
納屋はホコリが凄くて断念しました。
(少しはトライしたが咳が出たので止めた)
ガレージは車の物です。
(ガソリンの匂いが好きではない)
屋根は前に一度転がり落ちたので今日は見送りました。
(しかも下には父の花壇があった)
冷蔵庫は永遠の寝床になりかねないので止めましょう。
(昔中で寝ていて父に死ぬ程怒られた)
父母の部屋は鬼門です。
(コドモワハイッテワイケマセン)
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・・・パタ(力つき)
「何さまよえるオランダ人になってんの?」
中姉さん。
何かしてる途中らしく、肘が埃まみれです。
さまよえるオランダ人?
Flying Dutchman?
幽霊船?
「眠りたければ愛する人でも探したら?」
パタパタパタ、とスリッパ鳴らして走って行きます。
(廊下は走ってはいけません)
(あと、愛する人じゃなくて愛してくれる人です。中お姉ちゃん)
それでは今度は愛してくれる人を探しに行きますか?
(眠いから嫌です)
では、安眠できる場所を探しましょう。
(はい)
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「司馬。おい司馬って」
「ZZZZZ」
「鳩たかってるぞ。おい」
「ZZZZZ」
「・・・・まぁ、いいか。オラどけ鳩共」
「ZZZZZ」
鳩は五月蠅いけれどとりあえず寝れる所。
「司馬。おーい。・・・マジで寝てんのか?あー俺も寝るかなー」
鳩は静かになったけど、背中の辺りが熱いです。
彷徨える阿蘭陀人。
とりあえず愛してくれる人よりは睡眠をとりました。
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