「大きさは15cmくらいの虹」


 シバちゃんと喧嘩した。
 内容覚えてないから多分もの凄いつまんない事だと思う。
 とにかく喧嘩して、カーッとなってカバンと制服掴んであの家飛び出した。

 そして帰る口実が見つからない。

 「オイ御柳。飯はどうする食べるか?」
 「あー、結構っす」
 「そうか」
 司馬家飛び出して、何となく屑桐さんの家に転がり込んだ。
 誰でも良かったんだけど、禄先輩の家はマンションで部屋数少ないし、白春先輩の家は親居なくて気楽だけど二人っきりってのがちょっと嫌だし、で、屑桐さん家。
 兄弟多くて大変そうだけど行ったらすんなり中に入れてくれた。
 感謝。

 で、今俺は屑桐さんの部屋(と言うか兄弟雑魚寝部屋)に居る。
 隣の部屋では夕飯が始まったみたいで何かざわざわしてる。
 (あーコンビニかどっかで何か食ってくれば良かった)
 夕飯前にケンカしたんで実は今かなり空腹。
 でもいきなり来て夕飯ごちそうになるのもねー?
 とりあえず横になろう。
 エネルギーの消費を押さえるのだ。
 なんつって。

 「ねーねー、ショーユどこー?」
 「おい、ちゃんと数えて食べろよ。一人三つずつだぞ」
 「お兄ちゃんおかわりー」
 「ああ、他におかわりの奴居るか?」
 「おかわりー」
 「おかわりー」

 「・・・・・・・・・・」
 (屑桐さん家も結構騒がしいなー)
 シバちゃん家もお姉さんSがかしましいのでかなり賑やか。
 (もう夕飯始まってるかなー)
 (出てく時お姉さん方居たっけ?)
 (おじさんは台所で何かしてたような・・・)
 あの家の至る所が思い出せるのに、今はもう他人の家でひょっとしたら二度とあの家に上がる事もないかもしれない。
 (元々他人だしな)
 他人が勝手に家に入って来て住み着いてただけ。
 自分から出て行った以上、戻る術は無し。

 
 (・・・・嫌だけど元の家帰ろうかな)

 そう思いつつウトウトした。


 ・・・・・・わー凄いもっと出してーもっとー」
 隣の声で目が覚めた。
 時計見たら丁度寝付いて1時間くらい。
 (隣騒がしいな)
 雑魚寝部屋はまだ俺一人、誰も入って来てないらしい。
 (屑桐さん気使ってくれてんのかな)
 優しくされるのは結構つーかかなり好き。
 (今思えばシバちゃん一家も優しくしてくれたよな)
 後悔先に立たず。

 「ねーねーなんでそんな事できるのー?」
 「もっと出してよー、さっきのも一回してよー」
 隣は何か凄い盛り上がってる。
 屑桐さんの笑い声も聞こえる。 
 (テレビでも見てるのか?)
 何かちょっと疎外感。
 いや、ここも他人家だし。
 やっぱ元の家帰るか・・・・。
 思ってたらフスマが開いた。
 「あ、起きたか御柳。お迎えが来てるぞ」
 そう言って立ってる屑桐さんの横には見知った青い後ろ頭が見えた。
 (え?)つーか(げ!)つーか、なんかそんな感じの気持ちが頭の中を走って行った。

 
 「さっきの御柳には見せた事あるか?」
 屑桐さんに聞かれてシバちゃんはやっとコッチ見て頭ブンブン振った。
 「御柳、こっちに来て見せてもらえ。なかなか凄いぞ」
 屑桐さんがコイコイするから仕方なくシバちゃんの側に移動した。
 シバちゃんの周りには好奇心で目が真ん丸な屑桐弟妹が居て、思わず「シバちゃん何したの?」と聞いてしまった。
 シバちゃんはいつもの通り無表情で俺の質問は軽く無視された。

 パンッ

 ビックリした。
 いきなり目の前で手を叩かれた。
 (何だ一体?)
 と思って見てたら、叩いた手の平の中に、

 虹が出来てた。

 「うわぁぁぁぁぁーー何?ナニ?何したん?」
 「スゴーイ!スゴーイ!」
 「見せてー」
 俺の狼狽も弟妹達の歓声も無視してシバちゃんはただ普通に笑ってた。
 虹はすぐに消えた。
 「ハハハ、お前は面白い事をするなー」
 屑桐さんは上機嫌でシバちゃんの頭とか撫でてた。
 (いや、面白いつーか普通出来ないっしょ?)
 やや呆れ顔で見てたらシバちゃんがこっち来た。
 で、床に転がってるクレヨン取って、同じく床に転がってる色紙の裏に何かガシガシ書いた。
 T今夜はカルビ丼U
 「・・・・・・で?」
 聞いたらまたガシガシ書いた。
 Tお前好物だった←ハズU
 「・・・・好きっす」
 またガシガシ。
 Tじゃ、帰ろうU
 「・・・・・・・そうっすね」

 帰り二人乗り自転車。
 「じゃ、屑桐さんお邪魔しました」
 「ああ、今度は普通に来い」
 「・・・・へーい」
 「君もまた来てくれ。弟達が喜ぶ」
 「(こくこく)」
 シバちゃん何気に屑桐家での株UP。


 
 
 キイコキイコ・・・・・
 お迎えのお礼も込めて漕ぎ手は俺。

 キイコキイコ・・・・・
 「あのさー・・・何で虹とか出せんの?」
 「・・・・・・・」
 パンッ
 「・・・・・いや、出してくれなくて良いから」
 「・・・・・・」←秘密

 キイコキイコ・・・・・
 「手品?」
 「(フルフル)」←ハズレ
 「幻覚」
 「(ふるふる)」←大ハズレ
 パンッ
 「あー間近で見てもわかんねー!!」


 帰り道にシバちゃんは7回虹を出して見せて、何で出せるのか全然教えてくれなくて、俺は帰るまでずっとその事を考えてて、

 「迎えに来てくれてありがとう」

 とか言う暇が無かった。





 後悔先に立たず。結構御柳はカーッときて後で後悔するタイプだと思いまして
 家族じゃないから家に帰りづらい御柳が書きたかった
 そーゆー事は考えてなさそうに見えて意外と考えてそうな彼
 御柳は司馬家の一員なんだよーと言う事(あえて言葉では誰もいわんが)
 馬は柳が出て行った後、夕飯を見て「あ、これアイツの好物だ」と思ったから探す人(柳は肉好きそう)
 優しいと言うか何と言うか(ナシゴレンだったら放っておいたかも)
 とりあえず辰に連絡して柳の行動パターンを聞いて、牛に連絡して華武メンバーの住所を聞いたと言う(勿論メールだ)
 ここで犬に連絡しないのが意外と賢い馬
 何で虹が出せるのかと言うと司馬だから(ミもフタもなく)
 手の平の間の虹って昔の午後の漫画にあった
 綺麗だと思ったので司馬技に追加(司馬技→UFO・鳩・猫・を呼ぶ、虹が出せる)

 

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