「虹」
その日は空に虹がかかっておりました。
とある日曜、司馬家では辰羅川主催のT野球部一年によるお勉強会Uがひらかれておりました。
が、まあ普通に考えてあのメンバーが集まってまともな勉強会になる筈もなく、
「キャー♪司馬キュンのアルバム発見〜♪明美超ド・キ・ド・キ」
「ちょっとお兄ちゃん。勝手にシバくんの部屋荒らさないでよー」
「気色ザル、司馬の部屋で暴れんじゃねー」
「あ〜ら犬飼くんたらー。本当はこのアルバムが見たいくせに。もぉ〜ムッツリスケベさん♪」
「・・・・・ブッコロ」
(ギャーギャーと犬飼、猿野が交戦中)
「犬飼くんも猿野くんも司馬くんのお家に迷惑ですよ」
「そうっすよ。下にはおじさんもいらっしゃるんすから」
「・・・・・・」←まぁ、アルバムくらい見られてもいいと思っている
「シバくん駄目だよー。こんな時はバシっと言わないと」
「音符くんにそれを言うのは酷だろ。なー天国」
「うるせー!沢松お前も手伝え。コゲ犬を亡き者にするんじゃ」
「・・・無き者にされるのはお前だ。この小説から無くなってしまえ」
「犬飼くん字が違うっすよ!」
(子津も巻き込んでギャーギャー)
とまぁ最初からこんな感じでした。
「あーあ、もう全然宿題出来ないよー」
兎丸が騒がしい部屋にウンザリした様子でそう言いました。
「・・・・(こくこく)」
司馬もそれには同感でした。
「そう言えばさっきからトラックが出たり入ったりしてるけど隣り何かあんのか?」
さっきから猿野のヘルプを無視している沢松が窓の下を見ながらそう言いました。
「えー何?何?」
「・・・・・・・・」
言われて兎丸と司馬が窓から覗くと確かに数台のトラックが隣りに入ったり出たりしてました。
「・・・・・・」←そう言えば何か聞いてたようなと思っている
「・・・・・・・・」←思い出そうとしている
「・・・・・・・・・・」←ま、いいかと思っている
「・・・・シバくん。も少し頭使って生きようね」
「・・・・・・」←それもそうかなと思っている
「・・・・何気にお前等って怖い会話してるよな」
司馬と兎丸と沢松の間に嫌な空気が流れた丁度その時、部屋の戸が開いて司馬父が入って来ました。
「葵。ちょっといいかな・・・・・」
司馬父は目の前で暴れている猿野と犬飼と子津(巻き込まれ)を見ると黙って壁を殴りました。
ゴスッ
『・・・・・・・・』
「・・・・何と言うか。暴れんだったら外行けやって感じかな♪ 若いから仕様がないけどね。次暴れたらその目千枚通しでくり抜くからそのつもりで。おじさんヤルと言ったらやるタイプだから」
『・・・・・はい』
部屋は水を打ったように静かになりました。
もっとも司馬だけは慣れっこなので普通でしたが。
「そうそう、そんな事を言いに来たんじゃなくて。葵、お父さんちょっと買い物に行って来るからお隣りさんが挨拶に来たらお前出ておきなさい」
「・・・・・・?」
「・・・・忘れてるようだからもう一度言うけど、右手の空き家今日新しい家族が引っ越しして来るから。多分挨拶に来るでしょう、隣りだし。来たら葵出て挨拶しておいて。と言うか今のうちにお前のキャラ性を理解しておいてもらわないと。「司馬さんの家の息子さんて挨拶もしないのよ。まったく最近の若い子は嫌ざますねーオホホホ」とか噂立てられたら問題だからな。てな訳でお父さんは故意に家を空けます。頑張るように。シーユーアゲイン」
言うだけ言って司馬父はどこかへ行ってしまいました。
「・・・・相変わらず飛ばしてるよな、司馬の親父さんて」
「・・・・・?」
猿野の一言が理解出来てない司馬は首を傾げました。
さて、その後勉強会は滞りなく進み各自がそこそこ宿題を終わらせました。
「あーもう6時だー。早いねー」
言って兎丸は大きく伸びをしました。
「最初はどうなる事かと思いましたが結構進みましたね」
辰羅川が勉強道具を片づけながら横の子津に言いました。
「そうっすね。辰羅川くんのおかげで苦手な科学も出来たっす」
「あー肩こったー」
「よく言うぜ。お前は遊んでただけだろうが」
わざとらしく肩をならす猿野に沢松が突っ込みました。
「そう言えば隣の奴挨拶に来なかったな」
「・・・・・・・(こくこく)」
犬飼の言葉にそう言えばそうだなと司馬は思いました。
「まだ荷物の整理が出来てないんじゃないっすか?あれだけトラック入ってたっすから」
子津がそう言った直後、
ピーーーンポーーン
玄関のチャイムが鳴りました。
「噂をすれば何とやらですね。丁度いいですから私達も片付けて帰りましょうか」
「そうだな」
辰羅川の言葉に皆ちゃかちゃかと帰り支度をして、司馬と一緒に玄関に向かいました。
ピンポンピンポンピピピピ・・・・
「・・・・なんかせっかちな人っすね」
連打で鳴らされるチャイムの音に子津が苦笑して言いました。
「えーい。やかましい!」
そして猿野が勝手に玄関を開けた先に立ってたのは・・・・・
「こんちゃーっす。隣に引っ越して来た御柳でっす。ヨロシク・・・・ってなんでお前等がここにいんの?」
くっちゃくっちゃとガムを噛んで立っている御柳芭唐でした。
「お前こそ何で居るんだ!!!!」
御柳の姿を見てさっそくいきり立った犬飼が叫びました。
「なんでって引っ越して来たからに決まってんしょ。何ここってお前の家だっけ?」
犬飼の叫びを無視して御柳は素知らぬ顔で聞きました。
「違う違う、ここはシバくんの家だよ」
そして特に御柳に思い入れもない兎丸が答えました。
「シバァ?誰?」
「(てくてく)」
言われて司馬が御柳の前にやって来ました。
「あ、どーも。とりあえずコレウチの親から。なんかタオルの詰め合わせらしいわ。ま、せっかく隣同士になったんだし仲良くしよーぜ」
「(こくこく)」
御柳の言葉に特に何も考えてない司馬は素直に同意しました。
「御柳!テメー何司馬に慣れ慣れしく話しかけてんだ」
なんだか普通にフレンドリーになってる二人に犬飼はキレました。
「はぁ?別に普通の挨拶だろ。大体お前何の関係も無いのになんで入ってくる訳?コイツと特別に仲良しとかそんな?」
「・・・・・・・そんなんじゃねーよ」
実は犬飼は司馬と仲良くしたいのですが、生来の性格と司馬のやっかいな性格が災いしてまだ全然うち解けていないのです。
それが犬飼にはかなり不満なのでした。
さらに、
「むしろ犬飼くんてシバくんとまだそんなに喋った事とか無いよね」
と兎丸が追い打ちを掛け。
おまけに、
「そうっすね。犬飼くんと司馬くんはそんなに仲良くは無いっすね」
と子津まで言い。
止めに、
「・・・・・・・(こくこく)」
と司馬が同意したので犬飼の心はマリファナ海峡より深く沈んで行きました。
哀れ、犬飼。
「ふーん。へー。そーなんだー」
御柳はそんな犬飼をおもしろそうに眺めていましたが、フイに何か思いついたようで司馬の方を向くと言いました。
「実はさー俺の家って結構複雑なんだよねー。悪いけど今日アンタの家に泊めてくんない?」
この言葉に周りの(まだ帰っていない、と言うか帰るタイミングが解らない)ギャラリー達から怒濤のツッコミが入りました。
「バカ言うなぁぁぁぁぁ!」←犬
「いきなりそんな親密な関係は駄目っすよー!」←子
「御柳くんそれは少しカインドすぎますよ!」←辰
「僕もまだお泊まりした事ないのにー!」←兎
「手が早すぎるぞ!このフーセン野郎」←猿
ギャーギャーともの凄い声を無視して沢松が御柳に聞きました。
「って言うかお前の家の複雑な事情ってどんなだよ?」
「ああ、最近ウチの親父が新しい愛人作ってさー。なんとソイツがまだ20歳、最悪っしょ?ウチの親父。んで、最近その愛人宅から帰って来なくてさー。しかもー何か勘違いした前の愛人(32)がキレてー俺の家に無言電話掛けてくんの。おかげでお袋ノイローゼになって実家帰って。だから今家に家政婦さんしか居ねーのよ。またこの家政婦の顔がイモリ(爬虫類)に似ててさーマジキモくて。そんなのと始終一緒の家って嫌っしょ?だから泊めて。OK?」
『・・・・・・・・・・』
御柳家のヘビーな内情を聞いて皆シーンとなりました。
「・・・・じゃあ、しょうがないよね。それじゃーねーシバくん」
「・・・そ、それは仕様がないっすよね。今日はお邪魔様でした。司馬くん。
お父さんにうるさくしてスイマセンて言っておいて下さいっす」
「まーしゃーねーか。そんな事情じゃーな。んじゃまた明日な司馬」
「そんじゃ音符くん。またな、部屋なんか散らかしてゴメンな」
そして関わり合いになりたく無いメンバーはさっさか帰って行きました。
「・・・・・・・(ふりふり)」←バイバイ
「・・・・・裏切り者共」
各自の後ろ姿を見ながらそう呟きましたが聞いてる者はおりませんでした。
「・・・・犬飼くん私達の負けですよ。ここは帰りましょう」
辰羅川が悲しい顔で犬飼の腕を取って帰ろうとしましたが、
「そうそう負け犬はさっさと帰って下さ〜い」
御柳が心底バカにした口調でそう言ったのでまた犬飼はカッとなりました。
「テメーやっぱり殺す!」
「んじゃ俺はお前を犯す。ギャハハハ」
「・・・・・・・(笑)」←注・意味は解っていない
「・・・・・司馬くん物事はもう少し掘り下げて考えて下さい」
辰羅川がウンザリした所で、司馬家に自転車が突っ込んで来ました。
「ああ邪魔!家の前でたまるな性少年ども!」
ギィィィィィィィィ・・・・・・・ギャッ!
耳を覆うブレーキ音を立てて司馬中姉が帰って来たようです。
「もー今日は死ぬほど疲れた。・・・・って誰?この縁取りくまさんは」
初めて見る御柳を指してそう言いました。
「どーも隣に越してきた御柳っす。今日からお世話になりまっす」
「あーそー。葵、自分で世話すんのよ。あーもう疲れたー。マジ疲れたー。もう駄目。絶対駄目。死ぬー死ぬー。メラ疲れたー。今日は早めに風呂入って寝よ。あーそん前にポン酒飲んでー塩辛食べてー。読みたい本たまってるしー。メガテンしたいー。シヴァ作らないとー。疲れたー。ちょっとそこの・・・ミヤザキ?ミヤガキ?」
「御柳芭唐っす」
「何でも良いわよ。んじゃ、ミヤっ子、荷物持って。葵、チャリしまっといて」
「へーい」
「(ダッシュ)」
そのまま家に入って行ってしまった3人を犬飼と辰羅川は呆然と眺めておりました。
「冥ちゃん。バイバ〜イ」
扉を閉める前に言った御柳の言葉を犬飼はもう聞いてませんでした。
とぼとぼと家路につく、犬飼と辰羅川の頭の上に薄ぼんやりとした虹が出ておりました。
「・・・・・虹だな辰」
「・・・・・そうですね」
また、とぼとぼと歩きました。
「・・・・昔は虹が出ると災いが起こると信じられたそうですよ」
「・・・・俺はあの根元には宝が埋まってるって信じてた」
「虹は丸いから根元無いって聞いた時はショックだった。言ったのは御柳だ」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
黙ってとぼとぼ歩きました。
「いつか良い事ありますよ、犬飼くん」
「・・・・・いつかっていつだ?」
「・・・・・・・・・」
辰羅川の慰めの言葉が虚しく空に消えていきました。
とある日曜。
虹がトラブルを振らせてきました。
※おまけ※
「あ、お父さんお帰り」
「お父さんおかえりなさい〜」
「・・・・・」←おかえり
「あ、お邪魔してまっす」
司馬父が家に帰ると、居間でボンバーマンの4人対戦をしている息子+娘+αに迎えられました。
「・・・・・・・・・誰?」
「御柳とか言う子。ちょっと誰よ人のタマゴ盗ったの!」
「今日ウチに泊まるんだってー。やったー火力MAX〜♪」
「・・・・・・!!」←やられそう
「司馬ちゃん。タマゴ取ればー?俺のんやるしー」
司馬父は何が何やらよく解らないものの、まぁ楽しそうにしてるのでいいかと思い夕飯の支度に取り掛かりました。
多少の事が起こっても司馬家は結構平和です。
「やっり〜♪優勝〜♪」
「ああ!腹立つ!」
「もう少しだったのにー」
「・・・・・・・」←悔しい
ボンバーマン4・御柳芭唐優勝。
掛け金一人100円。
柳馬を書きたいんです(キッパリと)
で、出来れば御柳+司馬一家で書きたいんです
だから隣に越させてみました(強引)
御柳の家って基本的に上手く行って無い気がするので親父浮気中
御柳自身は気にしてなさそう
んで母親は元知事の娘とかそんなん
ボンバーマンは昔従兄弟が遊びに来てた時よくやってました
金は掛けてなかったですけど
CPとかでなく従兄弟っぽい感じで柳馬
マイナーの極地な気がする
良ければこのまま見てやって下さい
ちなみに反対のお隣は「麒麟田さん」出口