「なー猪里」
 「あーあー誰がこんな酷い事したんやろね」

 「バトる?6」


 
 司馬が兎丸に撃たれて絶命する少し前。
 司馬の居た木から大分離れたとある民家の庭先に猪里と虎鉄が居りました。
 民家は無人で、その庭先に作られた小さな畑で猪里がしゃがみ込んで何やらしておりました。
 そして、そんな猪里の後ろで虎鉄が困った顔して立ってました。

 「なー猪里ー。なーって」
 「まったく。皆自分の命が可愛いんはわかるけど、野菜に罪はなかよ」

 猪里はそんな事をブツブツ言いながら、武器の鎌を使って上手に踏まれた畑を直しておりました。
 鎌にしてみれば正しい使い方です。

 「猪里ー。いーのーりー」
 「ここは小さいけど手入れの行き届いた良い畑やね。放って行かなあかんかった人達はどんな人達やったん?」

 猪里はただ野菜だけを見て語りかけています。
 その後ろで虎鉄が猪里の名前を呼んでいます。

 「猪里ー。こっち向いてくれYO」
 「こんなアホな事起こらんかったら。ちゃんと収穫して美味しく食べてもらえたやろうに。すまんかったっちゃね」

 本当にすまなそうに猪里が言います。
 虎鉄からはその背中しか見えません。

 
 「猪里!」

 我慢できず強く叫んだ虎鉄の声に、猪里が振り向かず答えました。

 「そんな大きい声出さんでも聞こえとるわ」
 「・・・・・・・・」

 そして一度だけ虎鉄の方を振り向いて言いました。

 「撃つか撃たんか、決めてから声かけ」

 言うだけ言うとまた畑に向き直り作業を再開しました。

 虎鉄は手に持ったショットガンを上げるでもなく、下げるでもなく。
 ただ泣きそうな顔で。

 
 「猪里ー、猪里ー」

 猪里の名前を呼び続けました。
 猪里はもう振り向きませんでした。


 そんな二人の頭上にお昼の放送が流れました。

 司馬の名前が呼ばれました。 





 
 
 

 

猪里と虎鉄。逞しいのは猪里
虎鉄はどうしたらいいのかわからない
多分、猪里に何か言って欲しい
でも猪里は言わない。虎鉄が決めたらいいと思っている

この後、第三者が現れても猪里は畑を直してる
自分の命より野菜に気をかける。そんな子

かなり前からネタはあったのに放置してた分
久々に書いたら猪里の方言すっかり忘れてました
思い出だけで書いたのであってるやら、あってないやら

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